とある護衛の業務日記

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勤務初日

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「親父さまがなんて言ったっておれは望んだことなんてない。お前なんていらない。どっかいけよ」

 甘ったれたクソガキがそうのたまったので、にっこり笑って即座に拳骨を落とした。
 凍った空気の中その音が無情に響いた。

「痛ってえ‼」
「うるさいクソガキ。おれの主人はお前だが雇い主はお前の親父なんだよ。お前の言うこと聞く筋合いはないの。おわかり?」
「しゅっ……主人に向かって何するんだ!」
「お前何言ってんの?主の暴言は身をもって止めるのが従者の仕事だろ?それ果たしただけだよ?だいたいいらないとか言っといて主人って自分で言うなよ都合のいい頭してやがるなぁ。何?その空っぽの頭の中に花畑でもできてんの?」
「なっ……こ、この……!」

 顔を真っ赤にしながら言い返そうとしているが、全部自分に跳ね返るとわかったのか、何も言わないのでちょっと残念だった。初対面のときに色々かましたほうが後が楽なんだがなぁ。やれやれ。

「さすがアルフ殿です。この調子でどうぞ愚息を調きょ……ご指導お願いします」

 クソガキがぎょっと目を見開いて何か呟いているが、その父親はそれはそれは感動した顔でこっちを見つめてくる。その期待に応えるのはやぶさかではない。

「任せてください。しっかり調教しとくんで。一年後には立派な主人になってますよ」
「はっはっは!せっかく濁したのに、言ってくれますなあ!頼もしいことです!」
「嘘だろ親父さま⁉」

 今日付でおれの主人となったクソガキ――レオナール・ディオの絶叫を最後に、おれ――アルフ・ヴィオスとの初顔合わせはつつがなく終了した。
 これから腕がなるぜ。



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