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新月の章 鮮血ヲ喰ライシ断罪ノ鎌
平和的な生活 4
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それまで捲し立てるように協力を仰いだカレンは拒否された途端、固まった。
だから顔近いって。かわいいけどむしろそれが俺の心臓の脈拍を上げちゃうから勘弁してくれ。
でも断るのも当然だろう、いくらやってないとはいえこの前の出来事にある程度関連してるし、ギルドではなんか勝手に盗賊団を退治したとかなってるし。
そもそもカレンは俺が盗賊団退治の仕事を受けたことを知らないのだ。
それを伝えたいが話をややこくしたくない。
だから何か理由をでっち上げよう。望まぬ縁談はかわいそうではあるが上流階級では当たり前のことだ。まあ、カレンのことだから、嫌な男だと蹴り飛ばしそうな感じだがな。
「理由は3つだ。まず俺はこの前、過度な肉体労働をしたことで身体中が痛く、まともに動けない。そんなのが盗賊と戦っても魔術が使えない以上、死ぬ確率が高く、メリットがあまりない。というか全くない。死ねば終わりだ」
嘘は言ってない。曖昧にしただけだ。
次の話に移るためにカレンの目の前に出していた3本の指の内、薬指を曲げる。
「次に、君とこの前約束した件についてならまだしも、今回の依頼は関連性が皆無だ」
今度は中指を曲げる。
「最後に、満足とは言えないかもしれないが一応仕事と、金銭関係に今のところ俺は不満を抱いていない。最悪、毎日黒パンと水でもしばらくはどうにかなる。よって例え給金が高くても参戦できない」
最後の人差し指を曲げ、握りこぶしになったところでカレンは口を開いた。冷静に、ゆっくりと。
「確かに前者二つはどう説得してもあなたは動かないと思う。でも最後の理由はすぐに覆されるわ。嫌でも参加したくなるわよ」
先程とはうってかわり、髪をいじりながらうっすらと、勝ち誇ったような含み笑いを浮かべていた。
どういうことだ。感情論じゃ通用しないから、冷静に分析して攻める交渉に切り替えたのか。だが、でっち上げとはいえ、正当な理由を破るだけの大きな交渉材料はないはず。
「へぇ、それは一体なんなんだ?」
貴族の特権を利用して無理矢理手伝わせるつもりか? どう来る、さぁ来い!
「そんなに緊張しなくても酷いことで手伝わせたりしないわよ、すぐに分かるわ」
意地でも俺本人の口から言質をとりたいらしい。そういえば朝飯がまだだ、注文しても、料理の完成には時間がかかるし、メニューを見たあとに考えよう。
そしてメニューを開く。黒パン、黒パン……と。黒パンにすることで有言実行を強くアピール。他者に努力の姿を見せることで結果的に自身に有益な力を与えるのだ。
あった。早速注…文……を……………。
「カレンさん」
「ん? なぁに?」
いたずらっ子のような無邪気な表情のカレン。俺の決定的敗北の瞬間だった。
「その仕事、受けさせてください!」
どうやら俺の策は机上の空論と化したようだった。
だから顔近いって。かわいいけどむしろそれが俺の心臓の脈拍を上げちゃうから勘弁してくれ。
でも断るのも当然だろう、いくらやってないとはいえこの前の出来事にある程度関連してるし、ギルドではなんか勝手に盗賊団を退治したとかなってるし。
そもそもカレンは俺が盗賊団退治の仕事を受けたことを知らないのだ。
それを伝えたいが話をややこくしたくない。
だから何か理由をでっち上げよう。望まぬ縁談はかわいそうではあるが上流階級では当たり前のことだ。まあ、カレンのことだから、嫌な男だと蹴り飛ばしそうな感じだがな。
「理由は3つだ。まず俺はこの前、過度な肉体労働をしたことで身体中が痛く、まともに動けない。そんなのが盗賊と戦っても魔術が使えない以上、死ぬ確率が高く、メリットがあまりない。というか全くない。死ねば終わりだ」
嘘は言ってない。曖昧にしただけだ。
次の話に移るためにカレンの目の前に出していた3本の指の内、薬指を曲げる。
「次に、君とこの前約束した件についてならまだしも、今回の依頼は関連性が皆無だ」
今度は中指を曲げる。
「最後に、満足とは言えないかもしれないが一応仕事と、金銭関係に今のところ俺は不満を抱いていない。最悪、毎日黒パンと水でもしばらくはどうにかなる。よって例え給金が高くても参戦できない」
最後の人差し指を曲げ、握りこぶしになったところでカレンは口を開いた。冷静に、ゆっくりと。
「確かに前者二つはどう説得してもあなたは動かないと思う。でも最後の理由はすぐに覆されるわ。嫌でも参加したくなるわよ」
先程とはうってかわり、髪をいじりながらうっすらと、勝ち誇ったような含み笑いを浮かべていた。
どういうことだ。感情論じゃ通用しないから、冷静に分析して攻める交渉に切り替えたのか。だが、でっち上げとはいえ、正当な理由を破るだけの大きな交渉材料はないはず。
「へぇ、それは一体なんなんだ?」
貴族の特権を利用して無理矢理手伝わせるつもりか? どう来る、さぁ来い!
「そんなに緊張しなくても酷いことで手伝わせたりしないわよ、すぐに分かるわ」
意地でも俺本人の口から言質をとりたいらしい。そういえば朝飯がまだだ、注文しても、料理の完成には時間がかかるし、メニューを見たあとに考えよう。
そしてメニューを開く。黒パン、黒パン……と。黒パンにすることで有言実行を強くアピール。他者に努力の姿を見せることで結果的に自身に有益な力を与えるのだ。
あった。早速注…文……を……………。
「カレンさん」
「ん? なぁに?」
いたずらっ子のような無邪気な表情のカレン。俺の決定的敗北の瞬間だった。
「その仕事、受けさせてください!」
どうやら俺の策は机上の空論と化したようだった。
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