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新月の章 鮮血ヲ喰ライシ断罪ノ鎌
契約労働者アベル その5!
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「アニキが!」
「死んだだとォォッッッ!?」
「ど、どうする!?」
「か………………勝てるわけねぇだろ!」
「嫌だ………………死にたくねぇェェェェェェよォォォォ!!!」
かつてアニキと呼ばれていた人間の頭が目の前に転がり、それに恐怖し、動けなくなってしまう者。
リーダーを殺され、次の行動に移れなくなってしまった者。
命惜しさに我先にと、仲間を見捨て、逃げ出す者。
これが集団の欠点。
指導者の死はいかに大軍といえど、必ず連携が瓦解する。
盗賊程度の低い結束ではこの有り様。
そこが狙いだ目だがな。
剣を構えなおす。
「次はどいつだ?」
皆一同に逃げ出す。草むらに潜んでいる敵はいないようだった。
だがいくら地の利があると言ってもここは森の中。周りは木々に覆われていて、歩く場所も木の根や草で溢れている。それが何を意味するか。
「ハア……ハア……ハァ…………!」
あまりの恐怖で呼吸困難になってしまったせいで下への注意がおろそかになってしまい、転んでしまったのだ。
逃す訳ないだろう。
うつぶせに倒れた賊を上から心臓に焦点を合わせ、貫く。返り血を浴びたがそんなの気にしていられない。
ビクリと体をのけ反らせたが、剣を抜くと同時に即死した。
近くで草むらが揺れる。
隙を狙って殺そうとするか、やり過ごすのどっちかだろうが、俺に会う前に隠れていなかったのが運の尽きだ。
重い牛刀を両手で思い切り回転させながら投げると、鈍い音と共に赤い液体が舞う。
「ガ………………ァァ…ァァァ……ァァッ……ッ!!」
牛刀の重みと遠心力の力で、腹を深くまで切り刻まれた賊が口と腹から大量に血を流し、普通じゃない呼吸音を鳴らす。
今、楽にしてやる。
そう思い、そいつに近づこうとすると………………
ズドッ。
そんな音が左肩に響いた気がした。
「当たった! 当たったぞォォォ!!!」
遠くから誰かが叫んでいる。
当たった? 何が?
自身の左肩に目を向けると、太い矢が刺さっていた。
うそ…………だろ?
ローブを見る見るうちに赤く染め上げていく。
「!…………ァ……ァァァァァァァァァッッ!!!」
痛い。痛い。痛い。
視界がかすむ。
「今だァァァァァァ!!! 斬り殺せェェェ!」
「ヒャハァ! 形勢逆転! いくぞォォォ!!」
あちこちから大きく、そして不規則で小刻みに足音が聞こえる。
見渡そうにもあまりの痛みに視界が明滅し、どんどん見えなくなって来た。
だがこれだけは分かる。
俺はもうじき殺される。
これが死。いつ起こるか分からない。
寿命。病気。殺害。事故。天災。
ありとあらゆる事象で生物はたやすく死ぬ。
先ほどまで、俺は殺す側に回っていたが、状況とは常に流転する。
時と場合によって捕食者と被捕食者は入れ替わるのだ。
追い詰められた生き物ほど恐ろしいものはない。
潜伏していないと判断した自分が恨めしい。
「ハハ……ハ………………」
痛みで頭が麻痺したのか、乾いた笑みが勝手に口からでてくる。
この戦況では確実に死ぬ。
もう勝てないのは目に見えてる。
だけど。
俺はまだ死にたくない……。
会いたい家族のためにも…………。
死ぬわけにはいかないんだよ!!!!!
そこまで考え、剣を握りなおそうとした所で、力んだせいか激痛が走る。
「だめ……………なの…か………ソ……フ………………ィー…………………………」
そこで意識が途絶えた。
「死んだだとォォッッッ!?」
「ど、どうする!?」
「か………………勝てるわけねぇだろ!」
「嫌だ………………死にたくねぇェェェェェェよォォォォ!!!」
かつてアニキと呼ばれていた人間の頭が目の前に転がり、それに恐怖し、動けなくなってしまう者。
リーダーを殺され、次の行動に移れなくなってしまった者。
命惜しさに我先にと、仲間を見捨て、逃げ出す者。
これが集団の欠点。
指導者の死はいかに大軍といえど、必ず連携が瓦解する。
盗賊程度の低い結束ではこの有り様。
そこが狙いだ目だがな。
剣を構えなおす。
「次はどいつだ?」
皆一同に逃げ出す。草むらに潜んでいる敵はいないようだった。
だがいくら地の利があると言ってもここは森の中。周りは木々に覆われていて、歩く場所も木の根や草で溢れている。それが何を意味するか。
「ハア……ハア……ハァ…………!」
あまりの恐怖で呼吸困難になってしまったせいで下への注意がおろそかになってしまい、転んでしまったのだ。
逃す訳ないだろう。
うつぶせに倒れた賊を上から心臓に焦点を合わせ、貫く。返り血を浴びたがそんなの気にしていられない。
ビクリと体をのけ反らせたが、剣を抜くと同時に即死した。
近くで草むらが揺れる。
隙を狙って殺そうとするか、やり過ごすのどっちかだろうが、俺に会う前に隠れていなかったのが運の尽きだ。
重い牛刀を両手で思い切り回転させながら投げると、鈍い音と共に赤い液体が舞う。
「ガ………………ァァ…ァァァ……ァァッ……ッ!!」
牛刀の重みと遠心力の力で、腹を深くまで切り刻まれた賊が口と腹から大量に血を流し、普通じゃない呼吸音を鳴らす。
今、楽にしてやる。
そう思い、そいつに近づこうとすると………………
ズドッ。
そんな音が左肩に響いた気がした。
「当たった! 当たったぞォォォ!!!」
遠くから誰かが叫んでいる。
当たった? 何が?
自身の左肩に目を向けると、太い矢が刺さっていた。
うそ…………だろ?
ローブを見る見るうちに赤く染め上げていく。
「!…………ァ……ァァァァァァァァァッッ!!!」
痛い。痛い。痛い。
視界がかすむ。
「今だァァァァァァ!!! 斬り殺せェェェ!」
「ヒャハァ! 形勢逆転! いくぞォォォ!!」
あちこちから大きく、そして不規則で小刻みに足音が聞こえる。
見渡そうにもあまりの痛みに視界が明滅し、どんどん見えなくなって来た。
だがこれだけは分かる。
俺はもうじき殺される。
これが死。いつ起こるか分からない。
寿命。病気。殺害。事故。天災。
ありとあらゆる事象で生物はたやすく死ぬ。
先ほどまで、俺は殺す側に回っていたが、状況とは常に流転する。
時と場合によって捕食者と被捕食者は入れ替わるのだ。
追い詰められた生き物ほど恐ろしいものはない。
潜伏していないと判断した自分が恨めしい。
「ハハ……ハ………………」
痛みで頭が麻痺したのか、乾いた笑みが勝手に口からでてくる。
この戦況では確実に死ぬ。
もう勝てないのは目に見えてる。
だけど。
俺はまだ死にたくない……。
会いたい家族のためにも…………。
死ぬわけにはいかないんだよ!!!!!
そこまで考え、剣を握りなおそうとした所で、力んだせいか激痛が走る。
「だめ……………なの…か………ソ……フ………………ィー…………………………」
そこで意識が途絶えた。
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