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満月の章 ダリアの黙示録
Stigma/権能羽化 4
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「私達も泊まる宿で少し聞き込みを行ってみたけど、まさかヴァリエロンがそんな事になってるとは思いもしなかったわ」
日暮れと共に落ち合った広場で掻き集めた情報を伝えると、納得したように相槌を打ったカレン。
「今回は戦争だ。君にこういう事を言うのは何だか、俺達の戦力じゃどうしようもないぞ」
「そんなの私だって分かってるわよ、それに警備ではあるけれど、厳密に言うと偵察隊のようなものよ。念の為私達の後から常備軍の一団がやってくるわ、それでも彼らが反乱を知れば驚くでしょうけど」
そう。実際関所が開かれるまでレスト家の命令であると言われ、それが帝都に届くまでの期間は長い。不審に思った帝国議会が先遣隊を送り出すのも納得だ。レスト家の反乱と見せかけて、実際はローウェルだった。
この空白期間を生み出すのはあくまで戦略の一つと言えよう。
勢い付いたローウェル軍を容易に想像できる。
「じゃあ、俺達がまずすべき事は常備軍に最新の戦況を伝えることか」
「そういうことになるわね」
クラリーチェが座っている俺の膝の上に飛び乗る。
昼間、俺が昼をとっている間、食べたいとハァハァ言ってたのを無視して屋台の会話を聞いていたため、エサがまだだった。
と言うより、よくあの状況で吠えもせず催促もしなかったな。
「クラリーチェ。お腹空いたろ? 昼間我慢してくれたご褒美だ」
「ハゥッ!? ハッッ! ハッ!! クゥン!」
肉をあげたらたいそう喜んだようだ。
ガツガツと食らいついている。
「カレン。最近、喉がいがらっぽいとか、咳とかあるか?」
「え? どうして?」
不思議そうに首を傾げる。
「いや、最近ちょっと俺がそうでな」
嘘だ。
本当は何ともない。
ただ、あの刻印の発現箇所から推測して異変があるかもしれない。
「そうなの。私は今の所平気だけど、長旅で疲れが出ちゃったのかしら。なら今日は…………」
そこで言うのをやめる。
「? どうしたんだ」
「いえ、最近変な夢をよく見るようになったのよ。真っ白い所に、私一人だけがいる、そんな夢」
「白い…………………………」
「えぇ。それで、その夢が終わる頃に、喉が焼けるように痛くなって起きる事は何回かあったわ。実際、起きてみると何も痛みがないのは変だと思ったけれど」
白夜の箱庭か、ただの夢か。
一回だけならともかく、何回もなるというのはやはりと疑わざる負えない。
「私も疲れているのかしらね。部屋でカエデを待たせちゃってるし、また明日ね」
夕飯代を気前良く置いたカレンは席を立つ。
「あぁ、そうそう」
何かを思い出したように振り向いた。
「あなたの部屋は私達の部屋から隣3つ離れた所よ、鍵はお金の左側に置いておいたから」
そう言うと、カレンはスタスタと歩いていってしまった。
「で、クラリーチェ。ご主人様が行っちゃったけど、まさか同じ部屋で寝るなんて言わないよな?」
「……………………………」
どうやら寝る気まんまんだったようだ。
沈黙から肯定の意思を汲み取る。
仕方ないな。
俺は静かにため息をついた。
🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕
※権能羽化は話的に結構長いサブタイです。
日暮れと共に落ち合った広場で掻き集めた情報を伝えると、納得したように相槌を打ったカレン。
「今回は戦争だ。君にこういう事を言うのは何だか、俺達の戦力じゃどうしようもないぞ」
「そんなの私だって分かってるわよ、それに警備ではあるけれど、厳密に言うと偵察隊のようなものよ。念の為私達の後から常備軍の一団がやってくるわ、それでも彼らが反乱を知れば驚くでしょうけど」
そう。実際関所が開かれるまでレスト家の命令であると言われ、それが帝都に届くまでの期間は長い。不審に思った帝国議会が先遣隊を送り出すのも納得だ。レスト家の反乱と見せかけて、実際はローウェルだった。
この空白期間を生み出すのはあくまで戦略の一つと言えよう。
勢い付いたローウェル軍を容易に想像できる。
「じゃあ、俺達がまずすべき事は常備軍に最新の戦況を伝えることか」
「そういうことになるわね」
クラリーチェが座っている俺の膝の上に飛び乗る。
昼間、俺が昼をとっている間、食べたいとハァハァ言ってたのを無視して屋台の会話を聞いていたため、エサがまだだった。
と言うより、よくあの状況で吠えもせず催促もしなかったな。
「クラリーチェ。お腹空いたろ? 昼間我慢してくれたご褒美だ」
「ハゥッ!? ハッッ! ハッ!! クゥン!」
肉をあげたらたいそう喜んだようだ。
ガツガツと食らいついている。
「カレン。最近、喉がいがらっぽいとか、咳とかあるか?」
「え? どうして?」
不思議そうに首を傾げる。
「いや、最近ちょっと俺がそうでな」
嘘だ。
本当は何ともない。
ただ、あの刻印の発現箇所から推測して異変があるかもしれない。
「そうなの。私は今の所平気だけど、長旅で疲れが出ちゃったのかしら。なら今日は…………」
そこで言うのをやめる。
「? どうしたんだ」
「いえ、最近変な夢をよく見るようになったのよ。真っ白い所に、私一人だけがいる、そんな夢」
「白い…………………………」
「えぇ。それで、その夢が終わる頃に、喉が焼けるように痛くなって起きる事は何回かあったわ。実際、起きてみると何も痛みがないのは変だと思ったけれど」
白夜の箱庭か、ただの夢か。
一回だけならともかく、何回もなるというのはやはりと疑わざる負えない。
「私も疲れているのかしらね。部屋でカエデを待たせちゃってるし、また明日ね」
夕飯代を気前良く置いたカレンは席を立つ。
「あぁ、そうそう」
何かを思い出したように振り向いた。
「あなたの部屋は私達の部屋から隣3つ離れた所よ、鍵はお金の左側に置いておいたから」
そう言うと、カレンはスタスタと歩いていってしまった。
「で、クラリーチェ。ご主人様が行っちゃったけど、まさか同じ部屋で寝るなんて言わないよな?」
「……………………………」
どうやら寝る気まんまんだったようだ。
沈黙から肯定の意思を汲み取る。
仕方ないな。
俺は静かにため息をついた。
🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕🌕
※権能羽化は話的に結構長いサブタイです。
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