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上弦の章 帝国内乱
2b 少女の動揺(ストーリー分岐)
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「『鮮血を喰らいし……断罪なる鎌よ……』」
落下していく俺の体。
それが落ちるのを今か今かと待ち構えているパンドラ。
死への感覚。
生きているものが最後まで足掻こうと、すべての動作を遅くさせる。
決して現実が遅くなっているのではない。
だが、俺の感覚が研ぎ澄まされ、考える暇を与えてくれるだけで勝機は窺えるのだ。
「『盟約に従い……我に力をっっ!!』」
虚空を掴み、巨大な鎌を抜き取る。
「オオオオオオオオオッッッッッッッッッ!!!」
「無駄な足掻き♪」
鎌と棺がぶつかり合う。
しかし、パンドラの異常な身体能力に加えて削命ノ呪式による肉体増強の加護により、重力に従った重い一撃すら正面から受け止めた。
「亡影ノ妖猫!!」
化け猫が襲いかかる。
技法も使えない俺は躱すしかなす術はないが、その動作がすでに命取りだった。
「♪」
一瞬の内にパンドラに首を掴まれる。
「! !!」
呼吸を許されず、鎌を持つ手も手首をもう片方の手によって抑え込まれ、動かすこともままならない。
「窒息って1番苦しい死に方なんだよね♪ 一瞬で死ぬこともないし、徐々に死へと近づけさせる♪」
意識が薄れていく。
結局、俺はここまでなのだろうか。
「あぁ♪ カイン♪ もうすぐ君に会えるよぉぉぉぉ♪」
目の前が白くなっていく。
白夜の箱庭とは違う、見えなくなっていく感覚。
そんな時だった。
血ガ…………………………タリナイ………………。
誰かの声が聞こえた気がする。
タリナイ。
タリナイ。
タリナイ。
「アタシがみんなの悲願を叶えて救世主になるの♪♪♪♪♪」
顔がトロンとしてだらしない表情を浮かべる。
チガ……………………………。
「♪ 窒息で殺すのも良いけど、ポキっと首の骨を折って終わりに………………………っ!?」
「『グルァァァァッッッッッッ!!』」
真横から飛んできた物体が横腹に直撃し、首元から手が離れる。
「守護忠犬!? アタシが気配を感じ取れなかったって………………」
すかさずオレは斬りかかる。
「ィッ!!!」
犬に気を取られていた一瞬の隙に左足の腱をオレに斬られた。
「あぐっっ!? 殺って! 亡影ノ妖猫!!」
「ヴニャォォォォォッッッッッッッ!」
暗闇から這い出てきた化け猫がオレに襲いかかる。
鋭利な一裂き。
「『ウオオオオォォォォンンンンンンン!』」
その鋭い爪を、目の前の犬がオレを守るように障壁を展開させて食い止める。
化け猫は渾身の攻撃を防がれた事で僅かな隙を作った。
それを逃すオレではない。
こちらに振り返り、舌を出している守護忠犬を利用させてもらおう。
手をかざすと地面の下に紋様が浮かび上がる。
「『散った者の血を代償に………ひとときの間………………我に眷属を与えたまえ……………』」
「! 君はもう技法が使える状態じゃないのに、バカなの!?」
左足の腱を抑え、叫ぶ少女。
走る機能を制限された事ですぐに牽制をできないようだ。
「『顕現せよ…………………………憑血の魔犬』!!」
手の甲と鎌から血が噴き出す。
その血は意識ある犬の上から降り注ぎ、巨大な存在を生み出した。
月明かりに照らされた赤黒い肉体、輝く爪牙、血のよだれを溢れんばかりに垂らす三つの頭。
憑血の魔犬。
断罪ノ鎌の使用者に従う眷属。
「うそ…………………………なんで……………こんなのありえない………………………」
狼狽える。
「アベル君……………………君はさっき技法を使えなくなったからその左腕が裂けたんだよ……………」
棺を持ち、いつでも攻撃を受けられるよう構えた少女。
「どんな力にも代償は必要………………それは覆せないはずなのに………………………………………えっ?」
何を疑問に思ったのか、彼女はオレの鎌を指差す。
「さっきと違う………………………この禍々しさ、刃の赤み…………………………………」
瞳孔が小さくなった。
「カ…………………イン……………?」
その言葉を聞いた瞬間、脳裏に彼女の笑顔が断続的に映ると共に激痛が頭部を襲った。
🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓
※カレンの話はとりあえずこの二人の話に一区切りついてから出します。
落下していく俺の体。
それが落ちるのを今か今かと待ち構えているパンドラ。
死への感覚。
生きているものが最後まで足掻こうと、すべての動作を遅くさせる。
決して現実が遅くなっているのではない。
だが、俺の感覚が研ぎ澄まされ、考える暇を与えてくれるだけで勝機は窺えるのだ。
「『盟約に従い……我に力をっっ!!』」
虚空を掴み、巨大な鎌を抜き取る。
「オオオオオオオオオッッッッッッッッッ!!!」
「無駄な足掻き♪」
鎌と棺がぶつかり合う。
しかし、パンドラの異常な身体能力に加えて削命ノ呪式による肉体増強の加護により、重力に従った重い一撃すら正面から受け止めた。
「亡影ノ妖猫!!」
化け猫が襲いかかる。
技法も使えない俺は躱すしかなす術はないが、その動作がすでに命取りだった。
「♪」
一瞬の内にパンドラに首を掴まれる。
「! !!」
呼吸を許されず、鎌を持つ手も手首をもう片方の手によって抑え込まれ、動かすこともままならない。
「窒息って1番苦しい死に方なんだよね♪ 一瞬で死ぬこともないし、徐々に死へと近づけさせる♪」
意識が薄れていく。
結局、俺はここまでなのだろうか。
「あぁ♪ カイン♪ もうすぐ君に会えるよぉぉぉぉ♪」
目の前が白くなっていく。
白夜の箱庭とは違う、見えなくなっていく感覚。
そんな時だった。
血ガ…………………………タリナイ………………。
誰かの声が聞こえた気がする。
タリナイ。
タリナイ。
タリナイ。
「アタシがみんなの悲願を叶えて救世主になるの♪♪♪♪♪」
顔がトロンとしてだらしない表情を浮かべる。
チガ……………………………。
「♪ 窒息で殺すのも良いけど、ポキっと首の骨を折って終わりに………………………っ!?」
「『グルァァァァッッッッッッ!!』」
真横から飛んできた物体が横腹に直撃し、首元から手が離れる。
「守護忠犬!? アタシが気配を感じ取れなかったって………………」
すかさずオレは斬りかかる。
「ィッ!!!」
犬に気を取られていた一瞬の隙に左足の腱をオレに斬られた。
「あぐっっ!? 殺って! 亡影ノ妖猫!!」
「ヴニャォォォォォッッッッッッッ!」
暗闇から這い出てきた化け猫がオレに襲いかかる。
鋭利な一裂き。
「『ウオオオオォォォォンンンンンンン!』」
その鋭い爪を、目の前の犬がオレを守るように障壁を展開させて食い止める。
化け猫は渾身の攻撃を防がれた事で僅かな隙を作った。
それを逃すオレではない。
こちらに振り返り、舌を出している守護忠犬を利用させてもらおう。
手をかざすと地面の下に紋様が浮かび上がる。
「『散った者の血を代償に………ひとときの間………………我に眷属を与えたまえ……………』」
「! 君はもう技法が使える状態じゃないのに、バカなの!?」
左足の腱を抑え、叫ぶ少女。
走る機能を制限された事ですぐに牽制をできないようだ。
「『顕現せよ…………………………憑血の魔犬』!!」
手の甲と鎌から血が噴き出す。
その血は意識ある犬の上から降り注ぎ、巨大な存在を生み出した。
月明かりに照らされた赤黒い肉体、輝く爪牙、血のよだれを溢れんばかりに垂らす三つの頭。
憑血の魔犬。
断罪ノ鎌の使用者に従う眷属。
「うそ…………………………なんで……………こんなのありえない………………………」
狼狽える。
「アベル君……………………君はさっき技法を使えなくなったからその左腕が裂けたんだよ……………」
棺を持ち、いつでも攻撃を受けられるよう構えた少女。
「どんな力にも代償は必要………………それは覆せないはずなのに………………………………………えっ?」
何を疑問に思ったのか、彼女はオレの鎌を指差す。
「さっきと違う………………………この禍々しさ、刃の赤み…………………………………」
瞳孔が小さくなった。
「カ…………………イン……………?」
その言葉を聞いた瞬間、脳裏に彼女の笑顔が断続的に映ると共に激痛が頭部を襲った。
🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓
※カレンの話はとりあえずこの二人の話に一区切りついてから出します。
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