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上弦の章 帝国内乱
TIPS グロース・ローウェルの乱
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農作物がふんだんに取れる豊穣の土地として栄えていたとある農業国家。
その国は長らく土地の代表である豪族達を長老とし、王も長老の中で多数決によって決める合議制を敷いていた。
長老同士の利権争いも少なく、大陸の他国家には無いその方式によって長らく栄えていたその国は、西からくる侵略者との泥沼の激戦によって一部を除き、ほぼ全てを滅ぼされた。
忌々しい、ベルギウス帝国である。
それから数百年後。
「かつて、我らローウェル家もその一つであった長老による統治。長年その方式で安寧を築いてきたこの地はベルギウス帝国によって無残に蹂躙された! 敗北し、狭い領地に押しやられた我らを縛り、遠方の地より赴任したレスト家による民族弾圧! レスト家による文化統合! 無残に虐殺された我らを潔く滅ぼすのではなく、民族そのものを取り込み、隷属化する道を帝国は選んだのだ!」
ある城で、甲冑を着込んだ数多の戦士達の前で熱弁する男がいた。
「しかも、我々にとっての最大の屈辱は、最も栄えていた都市に忌まわしい殺戮魔導師、ヴァルトの名を刻み、その都市ヴァリエロンをレスト家が支配していることだ!」
怒りからか、その男は拳を強く握りしめ、その感情を大きく表現する。
「30万の先祖の死を引き起こしたガウェイン・ヴァルトの恐怖に居座るレスト家を、このグロース・ローウェルが滅ぼす! 安心せよ、帝国は現在、南方のアレクスター王国の滅亡により、ドラグニア竜王国に対する戦力を割かなければならない。つまりそれは、ヴァルトの派遣! こちらは手薄だっ!」
そこで、グロース・ローウェルは手前の側近らしき人物に目配せをした。
それに呼応してその人物は答える。
「それに、真偽は不明ですが半年前、帝国最西端で遊牧民の活動が活発したと知らせを受けています。もしそれが事実なら、今頃進行している可能性も考えられるでしょう」
既に集まった戦士は知っているのか、特に反応はない。
再確認の言葉だろう。
「逃す手はない! 皆の者、これは先祖の土地を取り返す正当な戦いである! 狼煙を上げよ!!」
「「「オオオオオオオオッッッ!!」」」
城に反響する無数の木霊。
その中には、かつて殺された彼らの先祖が混じっているかのように、グロース・ローウェルには聞こえた気がした。
🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓🌓
登場人物の紹介
グロース・ローウェル
かつてヴァリエロン一帯に住んでいた民族の、生き残った数少ない長老の子孫。同じ民族で、帝国に弱体化のため事細かに分裂させられた小さな豪族所帯をまとめる旗印として、反乱の主導者となる。彼らが持っている封土はヴァリエロンにほど近い。
なお、ベルギウス帝国は懐柔策なのか、レスト家を通じてローウェルと言う貴族の称号を与えたが、彼にとっては屈辱らしい。
それに、反対側ではダイダル・ダン率いる遊牧民が侵略を開始しているが、そもそもこの遊牧民の情報をどこで入手したのだろうか。
その国は長らく土地の代表である豪族達を長老とし、王も長老の中で多数決によって決める合議制を敷いていた。
長老同士の利権争いも少なく、大陸の他国家には無いその方式によって長らく栄えていたその国は、西からくる侵略者との泥沼の激戦によって一部を除き、ほぼ全てを滅ぼされた。
忌々しい、ベルギウス帝国である。
それから数百年後。
「かつて、我らローウェル家もその一つであった長老による統治。長年その方式で安寧を築いてきたこの地はベルギウス帝国によって無残に蹂躙された! 敗北し、狭い領地に押しやられた我らを縛り、遠方の地より赴任したレスト家による民族弾圧! レスト家による文化統合! 無残に虐殺された我らを潔く滅ぼすのではなく、民族そのものを取り込み、隷属化する道を帝国は選んだのだ!」
ある城で、甲冑を着込んだ数多の戦士達の前で熱弁する男がいた。
「しかも、我々にとっての最大の屈辱は、最も栄えていた都市に忌まわしい殺戮魔導師、ヴァルトの名を刻み、その都市ヴァリエロンをレスト家が支配していることだ!」
怒りからか、その男は拳を強く握りしめ、その感情を大きく表現する。
「30万の先祖の死を引き起こしたガウェイン・ヴァルトの恐怖に居座るレスト家を、このグロース・ローウェルが滅ぼす! 安心せよ、帝国は現在、南方のアレクスター王国の滅亡により、ドラグニア竜王国に対する戦力を割かなければならない。つまりそれは、ヴァルトの派遣! こちらは手薄だっ!」
そこで、グロース・ローウェルは手前の側近らしき人物に目配せをした。
それに呼応してその人物は答える。
「それに、真偽は不明ですが半年前、帝国最西端で遊牧民の活動が活発したと知らせを受けています。もしそれが事実なら、今頃進行している可能性も考えられるでしょう」
既に集まった戦士は知っているのか、特に反応はない。
再確認の言葉だろう。
「逃す手はない! 皆の者、これは先祖の土地を取り返す正当な戦いである! 狼煙を上げよ!!」
「「「オオオオオオオオッッッ!!」」」
城に反響する無数の木霊。
その中には、かつて殺された彼らの先祖が混じっているかのように、グロース・ローウェルには聞こえた気がした。
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登場人物の紹介
グロース・ローウェル
かつてヴァリエロン一帯に住んでいた民族の、生き残った数少ない長老の子孫。同じ民族で、帝国に弱体化のため事細かに分裂させられた小さな豪族所帯をまとめる旗印として、反乱の主導者となる。彼らが持っている封土はヴァリエロンにほど近い。
なお、ベルギウス帝国は懐柔策なのか、レスト家を通じてローウェルと言う貴族の称号を与えたが、彼にとっては屈辱らしい。
それに、反対側ではダイダル・ダン率いる遊牧民が侵略を開始しているが、そもそもこの遊牧民の情報をどこで入手したのだろうか。
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