143 / 190
上弦の章 帝国内乱
遺骸ヲ冒涜セシ大罪ノ棺 3
しおりを挟む
「クソっ!」
こんな時に憑血ノ魔犬がいれば戦況を覆せるのだが………。
「そろそろ逝って♪」
間に合いそうにない。
離脱しようにもパンドラの移動速度を考えると簡単に回り込まれる。
一時凌ぎでも霧血ノ暴蛇でどうにか…………。
そう思ったが、
「アベル? どこ? 返事をして!」
今一番近づけたくない人物が遠くから叫ぶ。
流石に夜中の静けさに反して響くあの棺の悲鳴が原因だな。
まだこちらの姿が暗闇で見えてないのが幸いか。
もう一つの問題を除けばだが…………。
「アベ………………」
「あれぇ♪ 君のこと呼んでるのってもしかして、ノスタルジア家のお嬢ちゃん?」
パンドラはその声に反応して、興味を持ったように一歩踏み出す。
「もしそうなら、急いでご挨拶しないと♪」
「待てパンドラ!」
「「「ァ、ァァァ………………」」」
「邪魔をするなッ!」
俺の事は死体で牽制して、既にカレンの方に走っていくパンドラ。
しかも、ヴィルヘルムも追従させて。
「オオオオオオオッッッッ!」
俺は纏わりつこうとする死体を横に薙ぎ払いながら、パンドラを追いかける。
この姿を見られる訳に行かないが、彼女をパンドラに殺される可能性を考えると悠長に言っていられない。
それにヴィルヘルム・ノスタルジア。
彼女に合わせるわけにはいかない気がする。
けれど、死体達が常に邪魔をし距離が開かれていった。
どうすれば……………。
「カレン! 速く逃げろ!」
棺の悲鳴に負けないくらいの大音量で俺は叫んだ。
今はとにかく、カレンを生かす事だけを考えなければ。
「え……………アベル?」
遠くから聞こえる困惑にも似た声。
単刀直入にこんなこと言われても、すぐに理解できるとは思えないが、非常時だと伝えることができればよい。
あとは俺がパンドラを食い止める。
確かに移動速度は俺の方が下だが、パンドラに追いつく為には足以外の方法もある。
ようやく死体を全て跳ね飛ばし、追いかけられているものの、俺の目の前からは死体が消えた。
「止まれ、パンドラァァァァァァァ!!」
俺は大きく振りかぶって、短刀をパンドラの膝めがけて投げる。
追いつけないなら、相手の足を動けなくすればいい。
だが、投げたそれに対して当たる手前で透明で緑色に輝く障壁に遮られた。
「プロテクティオか…………………」
防御魔術プロテクティオ。初歩中の初歩にして比較的使用頻度が高く、応用にも発展できる多様性を備えた魔術。
ヴィルヘルムが発動したようだ。
その証拠に、パンドラの後ろを守るように目のない空洞でこちらを凝視している。
その口元はモゴモゴと動いていて声の小ささから聞き取ることが出来なかったが、何を言っているかは推測できた。
それは何か?
ひたすら彼は繰り返していた。
カレン、と。
こんな時に憑血ノ魔犬がいれば戦況を覆せるのだが………。
「そろそろ逝って♪」
間に合いそうにない。
離脱しようにもパンドラの移動速度を考えると簡単に回り込まれる。
一時凌ぎでも霧血ノ暴蛇でどうにか…………。
そう思ったが、
「アベル? どこ? 返事をして!」
今一番近づけたくない人物が遠くから叫ぶ。
流石に夜中の静けさに反して響くあの棺の悲鳴が原因だな。
まだこちらの姿が暗闇で見えてないのが幸いか。
もう一つの問題を除けばだが…………。
「アベ………………」
「あれぇ♪ 君のこと呼んでるのってもしかして、ノスタルジア家のお嬢ちゃん?」
パンドラはその声に反応して、興味を持ったように一歩踏み出す。
「もしそうなら、急いでご挨拶しないと♪」
「待てパンドラ!」
「「「ァ、ァァァ………………」」」
「邪魔をするなッ!」
俺の事は死体で牽制して、既にカレンの方に走っていくパンドラ。
しかも、ヴィルヘルムも追従させて。
「オオオオオオオッッッッ!」
俺は纏わりつこうとする死体を横に薙ぎ払いながら、パンドラを追いかける。
この姿を見られる訳に行かないが、彼女をパンドラに殺される可能性を考えると悠長に言っていられない。
それにヴィルヘルム・ノスタルジア。
彼女に合わせるわけにはいかない気がする。
けれど、死体達が常に邪魔をし距離が開かれていった。
どうすれば……………。
「カレン! 速く逃げろ!」
棺の悲鳴に負けないくらいの大音量で俺は叫んだ。
今はとにかく、カレンを生かす事だけを考えなければ。
「え……………アベル?」
遠くから聞こえる困惑にも似た声。
単刀直入にこんなこと言われても、すぐに理解できるとは思えないが、非常時だと伝えることができればよい。
あとは俺がパンドラを食い止める。
確かに移動速度は俺の方が下だが、パンドラに追いつく為には足以外の方法もある。
ようやく死体を全て跳ね飛ばし、追いかけられているものの、俺の目の前からは死体が消えた。
「止まれ、パンドラァァァァァァァ!!」
俺は大きく振りかぶって、短刀をパンドラの膝めがけて投げる。
追いつけないなら、相手の足を動けなくすればいい。
だが、投げたそれに対して当たる手前で透明で緑色に輝く障壁に遮られた。
「プロテクティオか…………………」
防御魔術プロテクティオ。初歩中の初歩にして比較的使用頻度が高く、応用にも発展できる多様性を備えた魔術。
ヴィルヘルムが発動したようだ。
その証拠に、パンドラの後ろを守るように目のない空洞でこちらを凝視している。
その口元はモゴモゴと動いていて声の小ささから聞き取ることが出来なかったが、何を言っているかは推測できた。
それは何か?
ひたすら彼は繰り返していた。
カレン、と。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。




【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる