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四 魂 小人の兵士

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「どうしました、ライクさん?」

 眼前の人間が俺に話しかけてくる。……いや、人間という表現は誤りだ。俺と同じサイズ、似たような顔、しゃべる言葉さえ、いっしょのグループに属していやがるが、確かに人間ではない。俺も、こいつも。
 小人だ。
 店内を軽く見まわしながら、俺は高笑いをこらえるのに、それはもう必死だった。
 思い出したぞ……。俺がいったい何者なのかということをな。

「……いや、なんでもない。それより、早く会計を済ませてくれ」
「ええ、それならいいんですがね。少し、ぼうっとしているように見えましたので」
「な~に、ここ最近、兵士への訓練がやたらと厳しかったんでな。俺も疲れがたまっているんだろう。今日は早めに床につくようにするよ」
「それがいいでしょうな。……三シルバーと二ブロンズです」

 値段が表示と異なっている。近頃はどこも値上がりしているはずだが……。訝しむような俺の視線に気がついたようで、店の主人は、愛想のいい笑みを浮かべて応える。

「ライクさんは、お得意ですからね。ほかのアースマン(小人)には内緒でお願いしますよ。みんなあなたには、王を守る近衛になってくれるんじゃないかと、期待しているんですから」

 俺は茶化すように、口角を大きくあげた。

「俺だって近衛兵になりたい・・・・・・・・んだ、秘密は守るさ。でないと、王様の苦手な食い物を万が一知っても、言いふらしちまうことになりかねんからな」

 俺のつまらない冗談にも、主人は笑ってみせる。人に取り入るのがうまいのだろう。
 受け取った荷物を手に提げながら、俺は店屋をあとにした。

「……」

 ここは小人の国だ。どういうわけだか、まるでわからんが、確かに俺はクライの記憶を持っている。この忌々しい小人たち虫けらどもに殺された、あのクライのだ。根暗というよりも、それは泣き虫のクライだったが、もはやそれも遠い過去のもの。自分で言うのもなんだが、おかげさま・・・・・で見る影もなくなった。そうして、今は好都合にも兵士をやっている。どうしてそれがラッキーなのかっていうのは、俺の記憶を整理する意味も込めて、少しだけ小人の国について話さにゃならん。
 この世界を支えているものは、大きく分けると王と長老になる。みんなで作ったもの、それらをどういうふうに配分するのかという、政治のトップが王様だ。一方の長老は、精神的な支えという意味合いが強いが、他方では、生活の基盤となる儀式も執り行っている。
 太陽の儀式だ。
 小人は太陽に弱い。あたればすぐに死ぬし、天敵とも言える存在だが、それでもエネルギーを太陽に依存している。それゆえに、定期的には、太陽のお恵みをいただかにゃならねえわけだ。それを司っているのが長老で、儀式に用いるのは俺たちの体だ。ここでいう俺たちってのは、アースマンのことじゃないぜ。

「くそったれが……」

 俺はだれにも聞かれないように、小さな声でつぶやく。視線の先には、二体の巨人。一体は両目と左腕とがなく、もう一体は首から下しか存在しねえ。
 そうさ、これはアカリと俺だ。
 遺体を操って、日の光を地下の世界に届けてやがるんだ。
 ……許せねえ。
 今すぐにでも長老をぶっ殺してやりてえが、あいにくとこいつはすぐに代替わりしやがる。殺してもあまり意味がない。
 なら、狙うのは王に決まっているだろう? こいつは長老と違って、替えの利くものじゃねえからな。ほ~ら、都合がいいじゃねえか。
 なってやるよ、必ず。近衛兵に。
 そうしたら、いの一番に王の首をぶった切ってやるぜ。
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