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Irregular 36
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翌日も二人はほぼ裸のままで一日を過ごし、互いの肌の匂いが何よりもの癒し効果があると実感していた。
二人共ベッドにスマホを放置した状態で、TV代わりのプロジェクターからアメリカ大リーグの試合を白い壁に映し出し、視線は互いの顔にあるから歓声だけを聞き流していた。
「おい、スマホ、ブルブルしてるぞ?」
シーツの上に伝わる振動にNが先に気付いて、Sのスマホを手に取った。
「後で掛け直すから・・・出ないよ。」
Sに手渡そうとした時、画面に写った電話の主の名前がNの目に触れた。
「・・・先生だから、出た方がいいぞ?例の展示会の話だったらどうするんだ?」
「うん・・・ちょっとごめんね。」
Sは見られている訳でも無いのに、上半身を起こして下半身を布団で隠し正座までしていた。
「はい、A(Sの苗字)です。先生、どうされました?」
『仕事中だった?』
「いいえ、休暇です。家です。」
『急なお願いになっちゃうんだけど・・・話、少し、いい?』
「はい、どうぞ?」
何となくNの視線が気になったSが、寝室から出ようとしてベッドから降りる姿勢を取った時、Nに空いた手を掴まれ引っ張られた。
「うわっ!」
『どうしたっ?』
「あ、すいません。部屋歩っていて、ゴミ箱ひっくり返しました。」
Sは咄嗟に尤もらしい嘘を吐いてNを睨み、人差し指を唇の前に立てた。しかしNはそれを無視してSの身体を軽々と持ち上げ、自分の胡坐の中に治めてしまった。背後からSの身体を抱き、Sの耳に当てたスマホを挟むように外側に耳を着ける素振りをした。
「・・・先生、ごめんなさい。5分後に掛け直してもいいですか?」
『ああ、いいよ。突然電話掛けてごめんね。じゃあ、待ってるね。』
コールオフをタップして、SはNに手を上げる仕草をしてみせた。
「もうっ!電話に出ろって言いながら悪戯らするの、禁止!」
「・・・大人振って”出ろ”なんて言わなきゃ良かったなぁ~折角二人きりを満喫してたのにさ・・・」
「うん・・・すぐに済ますから。ごめんね。ここで掛ける?別な部屋に行った方がいい?」
「どっちでもいいよ。俺、風呂入るわ。終わったら、Sもおいで。」
「うん。」
Nが先に寝室を出て、残されたSは溜息をひとつ吐いてから電話を掛け直した。
『休みのところ、本当にごめん。もしかして、Tさん(Nの苗字)と一緒だった・・・かな?』
「ええ、席を外しましたからお話をどうぞ?」
『俺の本職、覚えてる?』
「はい。スカルプター、だけど注文によってはドール作家さんでしたよね?」
『そう、覚えててくれてありがとう。』
「モデルの件ですか?」
『うん。顧客情報だから詳しく言えないんだけど、まあ、太客さんなんだけど・・・今回の発注が中々難しいリクエストでね。身体は球体関節の原型に肉付けしていくんだけど、顔はリアルドールなんだ。顧客のイメージを聞いてデザインを具体化させていくんだけど、話を煮詰めて行ったら・・・イメージがまさに君なんだよ。』
「・・・え?」
『見本を見せながら説明しないとピンと来ないと思う。だけど、俺の作品は何処にも流出させないのが顧客との契約条項でもあるから、今君に写真を送る事は出来ない。モデル撮影も・・・考えていたよりも時間が掛かるかもしれない。君が今、就職仕立てで中々大変だってのも分かっているんだけど・・・近いうちに丸一日、俺に時間をくれないか?』
「あ・・・はい・・・じゃあ、今日中に調べて大丈夫そうな日をメッセしますね。」
『丸一日だよ?もし・・・昼頃から会うなら翌日の同時間帯までって事。その・・・Tさんの許可とかさ・・・』
「ご心配頂いてすみません。そこは大丈夫です。ちゃんと事前に説明すれば・・・理解してくれていますので。」
『じゃあ、会った時に詳細を話すね。君に合わせるから、近々、丸一日空けて欲しい。本当に急でごめんね。』
「はい、大丈夫です。今日中にでも日程候補をメッセしますから。あ・・・先生、禁煙、続いてます?」
『ん?突拍子もないな。続けてるよ、君のモデルの仕事終わってないから。臭くしないから、安心して?』
「ええ、それは平気です。身体の為にも、禁煙続けて下さいね。じゃ、後でメッセ見て下さい。」
『休暇中にごめんね。ありがとう。』
電話を切って溜息を吐き、Sは急いで浴室へ向かった。
「話、済んだか?」
バスタブでスマホを見ていたNが少し強張った笑顔でSを迎えた。
「うん。ごめんね、水差すみたいになっちゃった。」
「いいよ。電話もあっちから掛かってきたんだし。夕飯、どうする?ウーバーの料理を選んでたんだけど、中々これといったのにヒットしないなあ~」
「夕飯、簡単なもの・・・パスタでも作るから、出前は要らない。ねえ、Nさん。提案があるんだけど・・・」
SはNからスマホを受け取って水飛沫が掛からない場所へ避難させてから、バスタブに入った。
「どうした?」
いつものように背後からSを抱く形で、二人は湯舟に浸かった。
「Nさんのスマホにね、GPSアプリ入れて・・・僕が何処に居るか分かるようにして貰えないかな?」
「え?どういう事?」
「先生の電話、モデルの話だったんだ。何だか急を要するんだって。だから、丸一日で撮影を済ませたいって。って事は泊るって事でしょ?Nさんに余計な心配掛けたくないから・・・僕が何時に何処に居るか知ってて貰いたいかなって。何かあれば・・・何にも無いだろうけど・・・」
「居場所が分かっていれば、こないだの飲み会の時みたいにすぐ迎えに行けるしな。」
「・・・発注者の意向に沿わなきゃ何度も作り直しするんだって。だからモデルもその度に必要になるかもしれないって。」
Nは複雑な表情で肩越しにSを見詰めていた。
「GPSアプリってさ、浮気を疑った方がもう片方にコッソリ仕込んだりするって話はよく聞くよ。それを自分から入れてくれっての、初めて聞いた。」
「呆れてるの?」
「いいや、その逆。びっくりだけど、感心というか。Sは言葉よりも事実で潔白証明するって俺に言ってるんだろ?」
「そう・・・なんだけど・・・僕自身が不安なんだ。」
「なにが?」
「僕はまだ子供っぽいところあるし、恋愛も、男の人も、Nさんしか知らない。でも、先生は違うでしょ?大人で、なんだか・・・慣れてる感じがして・・・だから・・・・」
「流されそうになるかも?って事か・・・」
Sは困った顔付をしてゆっくりと頷いた。
「その・・・なんだ・・・恋人にさ、自分の浮気疑惑相談する人、初めて見たわ。」
Sは湯舟に波しぶきを立てて勢いよく振り向いた。
「違っ・・・そういうんじゃないっ!」
「顔、赤いぞ?図星なんじゃ・・・」
Sは両手をクロスさせてNの口を塞いだ。耳まで赤く染めて、怒ったような顔だった。Nは口を塞ぐSの手をそっと掴んで離した。
「いや、その、ごめん。Sは真面目に提案してくれてるんだもんな。分かったよ。」
「僕こそ・・・ハッキリと”流されません!”て断言しなくてごめんなさい。」
「いいよ、いいよ。こうして俺に話せるうちは、何も無い証拠だから。俺に言うのを躊躇ったらもう、秘密を持つ・・・先生と何かあるって事だからな?だから、何でも話して欲しいよ。」
「はい・・・・」
折角の二人だけの甘やかな一日は水を差されたようにして、それ以降は交わす言葉も少なく簡素な食事を終えて早めにベッドへ入った。
「あ、先生にスケジュール送るんだった・・・」
Sが呟いた独り言は隣で目を閉じていたNにも聞こえていて、眠った振りをしてNは小さく呻いてSに背中を向けた。Sは気遣いの意味でそろりとベッドを抜け出し、リビングに向かった。
ノートパソコンを開け自分とNのスケジュールを確認し、休みが重ならない日を選んでKにメッセージを送った。
「先生、丸一日って、始発から終電までではいけませんか?」
そう書き添えた。どうしても泊まりたくなかったからだ。
「俺は構わないよ。君が辛く無ければね。」
即レスが来た事で、Sは安堵の溜息を漏らした。レスしようとした所で追加文が届いた。
「日付以外の時間変更ならいつでもOKだから遠慮なく言ってね。」
「ありがとうございます。では、変更があれば前日までにメッセ入れますね。おやすみなさい。」
パソコンを閉じて部屋の灯りを消し、ベッドルームに戻った。背を向けたままのNにそっと抱き着いて、Sはその広い背に頬を押し付けた。
「誕生日プレゼント、ありがとう・・・楽しかった。」
Sの囁きは狸寝入りのNにもしっかり届き、嫉妬して拗ねていた自分が恥ずかしくなりとうとう振り向けずに眠ってしまった。
二人共ベッドにスマホを放置した状態で、TV代わりのプロジェクターからアメリカ大リーグの試合を白い壁に映し出し、視線は互いの顔にあるから歓声だけを聞き流していた。
「おい、スマホ、ブルブルしてるぞ?」
シーツの上に伝わる振動にNが先に気付いて、Sのスマホを手に取った。
「後で掛け直すから・・・出ないよ。」
Sに手渡そうとした時、画面に写った電話の主の名前がNの目に触れた。
「・・・先生だから、出た方がいいぞ?例の展示会の話だったらどうするんだ?」
「うん・・・ちょっとごめんね。」
Sは見られている訳でも無いのに、上半身を起こして下半身を布団で隠し正座までしていた。
「はい、A(Sの苗字)です。先生、どうされました?」
『仕事中だった?』
「いいえ、休暇です。家です。」
『急なお願いになっちゃうんだけど・・・話、少し、いい?』
「はい、どうぞ?」
何となくNの視線が気になったSが、寝室から出ようとしてベッドから降りる姿勢を取った時、Nに空いた手を掴まれ引っ張られた。
「うわっ!」
『どうしたっ?』
「あ、すいません。部屋歩っていて、ゴミ箱ひっくり返しました。」
Sは咄嗟に尤もらしい嘘を吐いてNを睨み、人差し指を唇の前に立てた。しかしNはそれを無視してSの身体を軽々と持ち上げ、自分の胡坐の中に治めてしまった。背後からSの身体を抱き、Sの耳に当てたスマホを挟むように外側に耳を着ける素振りをした。
「・・・先生、ごめんなさい。5分後に掛け直してもいいですか?」
『ああ、いいよ。突然電話掛けてごめんね。じゃあ、待ってるね。』
コールオフをタップして、SはNに手を上げる仕草をしてみせた。
「もうっ!電話に出ろって言いながら悪戯らするの、禁止!」
「・・・大人振って”出ろ”なんて言わなきゃ良かったなぁ~折角二人きりを満喫してたのにさ・・・」
「うん・・・すぐに済ますから。ごめんね。ここで掛ける?別な部屋に行った方がいい?」
「どっちでもいいよ。俺、風呂入るわ。終わったら、Sもおいで。」
「うん。」
Nが先に寝室を出て、残されたSは溜息をひとつ吐いてから電話を掛け直した。
『休みのところ、本当にごめん。もしかして、Tさん(Nの苗字)と一緒だった・・・かな?』
「ええ、席を外しましたからお話をどうぞ?」
『俺の本職、覚えてる?』
「はい。スカルプター、だけど注文によってはドール作家さんでしたよね?」
『そう、覚えててくれてありがとう。』
「モデルの件ですか?」
『うん。顧客情報だから詳しく言えないんだけど、まあ、太客さんなんだけど・・・今回の発注が中々難しいリクエストでね。身体は球体関節の原型に肉付けしていくんだけど、顔はリアルドールなんだ。顧客のイメージを聞いてデザインを具体化させていくんだけど、話を煮詰めて行ったら・・・イメージがまさに君なんだよ。』
「・・・え?」
『見本を見せながら説明しないとピンと来ないと思う。だけど、俺の作品は何処にも流出させないのが顧客との契約条項でもあるから、今君に写真を送る事は出来ない。モデル撮影も・・・考えていたよりも時間が掛かるかもしれない。君が今、就職仕立てで中々大変だってのも分かっているんだけど・・・近いうちに丸一日、俺に時間をくれないか?』
「あ・・・はい・・・じゃあ、今日中に調べて大丈夫そうな日をメッセしますね。」
『丸一日だよ?もし・・・昼頃から会うなら翌日の同時間帯までって事。その・・・Tさんの許可とかさ・・・』
「ご心配頂いてすみません。そこは大丈夫です。ちゃんと事前に説明すれば・・・理解してくれていますので。」
『じゃあ、会った時に詳細を話すね。君に合わせるから、近々、丸一日空けて欲しい。本当に急でごめんね。』
「はい、大丈夫です。今日中にでも日程候補をメッセしますから。あ・・・先生、禁煙、続いてます?」
『ん?突拍子もないな。続けてるよ、君のモデルの仕事終わってないから。臭くしないから、安心して?』
「ええ、それは平気です。身体の為にも、禁煙続けて下さいね。じゃ、後でメッセ見て下さい。」
『休暇中にごめんね。ありがとう。』
電話を切って溜息を吐き、Sは急いで浴室へ向かった。
「話、済んだか?」
バスタブでスマホを見ていたNが少し強張った笑顔でSを迎えた。
「うん。ごめんね、水差すみたいになっちゃった。」
「いいよ。電話もあっちから掛かってきたんだし。夕飯、どうする?ウーバーの料理を選んでたんだけど、中々これといったのにヒットしないなあ~」
「夕飯、簡単なもの・・・パスタでも作るから、出前は要らない。ねえ、Nさん。提案があるんだけど・・・」
SはNからスマホを受け取って水飛沫が掛からない場所へ避難させてから、バスタブに入った。
「どうした?」
いつものように背後からSを抱く形で、二人は湯舟に浸かった。
「Nさんのスマホにね、GPSアプリ入れて・・・僕が何処に居るか分かるようにして貰えないかな?」
「え?どういう事?」
「先生の電話、モデルの話だったんだ。何だか急を要するんだって。だから、丸一日で撮影を済ませたいって。って事は泊るって事でしょ?Nさんに余計な心配掛けたくないから・・・僕が何時に何処に居るか知ってて貰いたいかなって。何かあれば・・・何にも無いだろうけど・・・」
「居場所が分かっていれば、こないだの飲み会の時みたいにすぐ迎えに行けるしな。」
「・・・発注者の意向に沿わなきゃ何度も作り直しするんだって。だからモデルもその度に必要になるかもしれないって。」
Nは複雑な表情で肩越しにSを見詰めていた。
「GPSアプリってさ、浮気を疑った方がもう片方にコッソリ仕込んだりするって話はよく聞くよ。それを自分から入れてくれっての、初めて聞いた。」
「呆れてるの?」
「いいや、その逆。びっくりだけど、感心というか。Sは言葉よりも事実で潔白証明するって俺に言ってるんだろ?」
「そう・・・なんだけど・・・僕自身が不安なんだ。」
「なにが?」
「僕はまだ子供っぽいところあるし、恋愛も、男の人も、Nさんしか知らない。でも、先生は違うでしょ?大人で、なんだか・・・慣れてる感じがして・・・だから・・・・」
「流されそうになるかも?って事か・・・」
Sは困った顔付をしてゆっくりと頷いた。
「その・・・なんだ・・・恋人にさ、自分の浮気疑惑相談する人、初めて見たわ。」
Sは湯舟に波しぶきを立てて勢いよく振り向いた。
「違っ・・・そういうんじゃないっ!」
「顔、赤いぞ?図星なんじゃ・・・」
Sは両手をクロスさせてNの口を塞いだ。耳まで赤く染めて、怒ったような顔だった。Nは口を塞ぐSの手をそっと掴んで離した。
「いや、その、ごめん。Sは真面目に提案してくれてるんだもんな。分かったよ。」
「僕こそ・・・ハッキリと”流されません!”て断言しなくてごめんなさい。」
「いいよ、いいよ。こうして俺に話せるうちは、何も無い証拠だから。俺に言うのを躊躇ったらもう、秘密を持つ・・・先生と何かあるって事だからな?だから、何でも話して欲しいよ。」
「はい・・・・」
折角の二人だけの甘やかな一日は水を差されたようにして、それ以降は交わす言葉も少なく簡素な食事を終えて早めにベッドへ入った。
「あ、先生にスケジュール送るんだった・・・」
Sが呟いた独り言は隣で目を閉じていたNにも聞こえていて、眠った振りをしてNは小さく呻いてSに背中を向けた。Sは気遣いの意味でそろりとベッドを抜け出し、リビングに向かった。
ノートパソコンを開け自分とNのスケジュールを確認し、休みが重ならない日を選んでKにメッセージを送った。
「先生、丸一日って、始発から終電までではいけませんか?」
そう書き添えた。どうしても泊まりたくなかったからだ。
「俺は構わないよ。君が辛く無ければね。」
即レスが来た事で、Sは安堵の溜息を漏らした。レスしようとした所で追加文が届いた。
「日付以外の時間変更ならいつでもOKだから遠慮なく言ってね。」
「ありがとうございます。では、変更があれば前日までにメッセ入れますね。おやすみなさい。」
パソコンを閉じて部屋の灯りを消し、ベッドルームに戻った。背を向けたままのNにそっと抱き着いて、Sはその広い背に頬を押し付けた。
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