Irregular

neko-aroma(ねこ)

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Irregular 24

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翌日、Sは予定通りに引っ越しを終えて、Nの部屋に運び入れた少しの私物の整理をしながらNの帰宅を待った。
いつもより少し帰宅時間が遅いのは、Sから頼まれた花を買いに寄っているからだろう。Sは始終笑顔でNの夕食作りをしながら待った。
「ただいまー。」
玄関からNの声がして、Sは急いで出迎えた。
「お帰りなさい。」
「はぁ~いいもんだなあ~灯りが点いてて、出迎えてくれる人が居て、ドア開けたらすぐに美味しそうな匂いがして・・・最高!」
Nは靴も脱がずにSを思い切り抱き締めた。
「それもすぐに終わっちゃいますよ?僕、夜からNさんの会社に出勤だから。」
「はぁ~そうだった・・・はい、頼まれもの。」
Nは小さな花束をSに差し出した。
「今日から、毎日、よろしくな。」
「はい。ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願いします。」
Sは笑顔で受け取り、少し背伸びをしてNの頬にちゅっと音を発ててキスをした。
「んふふふふ~新婚だな、こりゃあ。」
「えへへ。手を洗ったら、テーブルを見てね?」
Sは先にキッチンへ戻って行った。
言われた通りにしたNがキッチンダイニングのテーブルを見ると、青み掛かったスリムな陶器の花瓶に花が飾られていた。
「僕ね、展示会に出展用に花瓶を作っているんだけど・・・出来上がってもすぐに送らなきゃいけないから、これは試作品のうちの一つなんだ。」
「店で売ってるものと変わらないじゃないか。凄いな!」
「ううん、まだまだだよ。ねえ、どうして僕が花瓶を作ってるか聞いて?」
「うん。俺は陶芸って言ったら皿とか器なのかと思ってた。どうして?」
「僕が退院した日に、花を買って迎えてくれたでしょう?あの時、花瓶を持っていないからってプロテインの空きボトルに挿してくれて・・・今日の花と同じトルコキキョウをね・・・写真を撮っておけば良かったって後悔しているんだけど・・・その時が初めてだったんだ。」
「人から花を貰うのが?」
「うん。それもあるけど・・・僕がNさんにドキドキした始まり。プロテイン花瓶がね。」
Nは困惑と嬉しさの間を行ったり来たりするような顔付をした後、Sを抱き締めた。
「なんだよ、今更ずるいぞ・・・俺より先にドキドキしてたって事じゃないか。」
「ははっ、そうだね。気付いたのは最近だけど。」
「ああ・・・今すぐ抱きたい。めちゃくちゃに悦ばせたい。」
「焦らなくても大丈夫。毎日、隣に居るんだから。夕飯先にする?お風呂も沸いてるよ?」
「まんま、新婚じゃないか!その後・・・」
「それとも僕にする?でしょ?言わないよ。折角ご飯作ったんだもん。」
「ああ、全身がムズムズする~甘いっ!これが新婚かぁ~~~」
「もうっ、バカ言ってないでお風呂に行きなよ。ここでだらだらしてたら夜が短くなっちゃうよ?いいの?」
「それは困る。風呂入って来るわ・・・とその前にこれだけ。」
NはSの顔を片手で掴むように固定して、長いキスをした。


その夜は早めにベッドに入り、Nは先程言った通り腕の中でこれ以上無い程にSを乱れさせた。
可愛らしい顔に不似合いな目立つ喉仏に低い声、普段からそのギャップに萌えているのは間違いないが、Nに触れられて喘ぐ声や堪えるかのような呻きや漏れる吐息混じりの声の裏返りなど、Nの耳を刺激するのに事欠かないのだ。例えば、Sのこの声だけでもNは昂ぶり一人で達する事も出来るだろうと思う程だ。
まさに”鳴く”と”泣く”が混在した、Sの素直な反応だ。それを全部自分だけが引き出しているのかと思えば、尚更に愛しさが増す。果ては、独占欲を煽る。誰にも聞かせたくない思いが募る。
「ねえ、前から不思議だったんだけど・・・どうして僕の首を絞めるの?」
「ええっ?締めてないよ?そういう趣味、無いよ?」
「じゃあ、気付いてないんだね?Nさんが盛り上がると必ず、片手で僕の首を掴んでるよ?」
一度目の果ての後、全身に帯びた汗が引く間、二人は繋がったままだ。Sの身体を背後から抱き締め、Nの大きな掌がSの胸や腹に何度も滑らせた。
「ああ、それは・・・・俺、Sのこれが大好きなの。」
そう言いながら喉仏を指先でツンツンと突いた。
「俺よりSの喉仏の方が目立つだろ?唾を飲み込むだけでも動くのがよく分かってさ。それが・・・気持ち良くなると色んな声が出るのを・・・耳だけじゃなくて掌からも聞きたくなるんだよ。だから触るの。振動がよく伝わって、何というか・・・萌えなんだよね。」
「Nさんが”萌え”とか言ってる!」
Sが堪え笑いのようにするから、腹筋が動くのがまだ繋がったままのNのペニスにダイレクトに伝わって、すぐに固さを取り戻した。
「なんで、これで復活させてるの。」
益々Sが笑うから、NはSの身体の中で完全に勃ち上がった。
「やだっ・・・にゅっとした・・・」
今度はNが腹筋を揺らして笑う番だった。
「なんだよ、俺が亀の首みたいな事言って・・・」
「だって、にゅうっと奥まで・・・んんっ」
NがSの唇を塞いだが、それでもいつまでも互いに思い出し笑いを移し合っては、顔を傾ける角度を変える度に漏れていた。
「んふふっ、続けるの、無理じゃないかな・・・」
「いつまでも笑い止まないSのせいだぞ?」
「Nさんだって、今も、笑ってるじゃん?」
「ああっ、もうっ、どうしてくれるんだよ?中断はキツイ・・・・」
「ねえ、Nさん?」
Sは片手を上げてNの首に絡ませた。目が合って、Sはにっこりと微笑んでみせた。
「すっごく、幸せ。」
一瞬息を飲んだNだったが、嬉しそうに目を細めてSの瞼に口付けて、有無を言わせない程に激しく腰を振った。笑っている余裕はもうSには無くて、そのまま波紋のように途切れない快楽に身を委ねた。



それから二週間後、Nの開幕戦の日が訪れた。
野外観戦にはまだまだ肌寒いから、とSはNに厚着をさせられて二人揃ってNの愛車で部屋を出た。
「僕、一般の入場ゲートから入るからその辺で下ろして貰わないと・・・」
「何言ってるの。家族関係者とかは先に控室に行って皆で挨拶し合うんだよ?」
「え?そこに僕が行ってもいいの?」
「・・・俺は嬉しいけど・・・・Sが気が引けるなら無理にとは言わない。降りる?」
Sはすぐに首を振った。
大切な試合の前だ。Nのメンタルに響くような行動は控えたい。正直、気は引けている。
Nが喜びを隠し切れないと言ったように鼻を膨らませながら、緩む口元をわざと噛みしめているのがSにも分かったから、車のギアに掛かった左手に手を重ねてみせた。驚いたようにSを見下ろしたから、口を目一杯広げた笑みを浮かべてみせた。
「じゃあ、関係者用の駐車場に行こう。」
下車する際、Sのリュックを持ったNが少し驚いた顔で問い掛けた。
「何入ってるの、こんなに重くて。」
「うん。防寒対策?」
「ああ、今日は陽射しあるけどまだ寒いもんな。」
Nからリュックを受け取ってSは背負った。Nは野球道具を担いで二人は長い通路を並んで歩き、選手の控室に入った。
「おう、来たか。」
先に来てグローブの点検をしていた選手が軽く手を上げて二人を出迎えた。
「お?初お披露目か?毎日聞かされる”ツレ”の子?」
「あはは。そうそう。S君、こちらチームメイトで悪友のI君。I、こっちは俺のツレのS君。」
Nの紹介に二人は会釈し合ってIが差し出した手で握手を交わした。
「今度飲みに行こう?って、S君はあんまり飲めないんだっけ?」
「え~そんなことまで?話してるの?」
Sが口をへの字にしてNを見上げ、Nは慌てた様子で違う、と手を振りポーズしていた。
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