Irregular

neko-aroma(ねこ)

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Irregular 4

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Nはサイドボードに手を伸ばして自分のスマホを取った。すぐに画面を出して来た所を見ると、リンクページを貼り付けていたのだろう。
「ドライ?・・・って?」
そこには”ドライオーガズム”についての説明があった。
「ほら、やっぱりスローセックスって良い事あるんだよ。試して良かったな。」
「う~ん、でも、ここに書いてあるような感じでは無かったなあ~」
「それは正しい手順踏んで無いし、不意打ちのアクシデントみたいなものだったからじゃないか?」
「う~ん。Nさん、続きはコンビニ行ってからにしない?気が抜けたらお腹空いてきちゃった。だめ?」
小首を傾げられて大きな目で見上げられたら、ダメと言える筈も無い。
「本当にSは甘え上手だなあ~自分が可愛いって分かっててやってるんだろ?」
自分を”可愛い”と言う男が一日に二人も・・・目がおかしいんじゃないか、とSは苦笑した。
実際、他者から見たSの容姿や仕草は”可愛い”に該当する。それをずっと言われ続けているのに鼻から信じておらず、知らないのはS本人だけだ。
陶芸教室での出来事と今の出来事で初めて意識したのでは、自覚が無さ過ぎる。自分にそれ程興味が持てない証拠かもしれない。
「何言ってるの。早く着替えてさっさと行って帰って来ようよ。」
Sはベッドから降りると、Nの手を掴んで引っ張った。
「はいはい、続きは帰って来てからな。約束だぞ?」
「じゃあ、はい。」
Sは小指をNの目の前に差し出した。Nは笑ってそこに自分の小指を絡ませた。
「指切りげんまん。」
二人は微笑み合って、穏やかな幸福感を味わっていた。


その夜は結局、二人はコンビニで買い込んだ夕飯を食べた後疲れて眠ってしまった。
昼近くまで惰眠を貪り、外は雨だったせいで出掛けるのも億劫になってしまった二人は、明るいうちからベッドでごろごろ過ごしながら触れ合う指先から身体に火が点いてしまった。
昨夜照明を点ける点けないで揉めた事が馬鹿らしく思える程、雨模様でも明るい部屋の中で全てを曝け出す羽目になってしまった事に、Sは羞恥心で一杯で全く集中出来なかった。だが、その恥じらう姿がNには刺激剤となっていつもより粘着度が高い抱き方をする。
「ねえ・・・まだ、こうして・・・動かないでいるの?」
「辛くなったか?そこ、痛むか?」
「ううん・・・今日、結局、シテ終わっちゃうじゃん・・・外出に付き合えって言ったのは、Nさんなのに・・・」
「俺はさ・・・本当はSと一緒に居られたらそれでいいんだ。Sは何処かへ行きたかったのか?」
「そういうわけじゃないけど・・・昼間から・・・恥ずかしいから・・・」
「Sの何処見ても可愛くて綺麗なのに・・・なんで恥ずかしいの?」
「何言ってるの・・・可愛いとか、僕なんかに・・・」
「Sはさあ、自分が可愛いって認めて無いもんな。」
そう言いながらNの指は又、執拗にSの乳首を弄っては反応を楽しんでいる。
「付き合いだした頃、脱毛サロンに行って良かったなあ~って、今日、改めて思った。」
「突然、何の話?」
「スポーツ選手が蒸れ防止に脱毛するって聞いた時すげえ驚いたけど、こんなに快適なら皆やればいいのにって。髭剃りの心配も要らないしさ、湿布とか絆創膏とか貼るの、怖くなくなったもんなあ~」
「ああ、剥がす時にすね毛とか引き抜かれちゃうからね。」
「で、すぐにSを誘ってさ、同じように全身脱毛したじゃん。快適だろ?」
「それはね。髭剃りして肌が負けないだけでも快適。ん・・・?どうしてそれを今日、実感したって事になるの?施術したの、随分前でしょう?」
「それはさ・・・こうして明るい光の下でSの身体見てて、全部見えるじゃん?凄くいやらしくて、そそるんだよ・・・ここも・・・ここも・・・」
Nの手がSの半勃ちの股間にそっと触れてから、二人が繋がっている箇所を指先で撫で上げた。
「ばっ、ばかっ!!恥ずかしいって言ってるのに!」
咄嗟に身を引こうとしたSを強く抱き留めて、Nはゆっくりと腰を動かし始めた。
「Sは、俺の身体には感想無し?」
「はっ・・・んっ・・・最初から・・・凄い身体見せ付けられて・・・男として美しいってのは・・・・Nさんみたいな身体を・・・言うんでしょ・・・ああ、なんか・・・ヘン・・・・」
「ほら・・・濡れて来てる・・・」
NはSの手の甲から指を絡め、完全に勃ったS自身を共に包み込んだ。先端の溢れ出た滴を指先で拭うように撫でると、Sの鼻先から甘えるような喘ぎが漏れた。
「触ったら・・・イっちゃっう・・・やだよ・・・」
「凄い、中、波打ってる。」
首を反らせ、腰を突き出した体勢に変わったSの耳元で囁きながら、Nは耳元に粗くなった息を吹きかけては音を発てて口付けた。
「なんだか・・・おかしい・・・ぞくぞくが・・・止まらないよ・・・」
「いつもより、感じてるんだよ。今、おまえに食われてる感じがしてる。中、凄い。」
「はぁ・・・はぁ・・・ヘン・・・ヘンになる・・・」
「どうして欲しい?もっと強く?」
Sは答えなかった。閉じた目から、涙が流れ続けている。多分、内側に籠る熱を涙で逃がそうと身体がそうさせていたのだろう。Nはその涙を吸い、頬を滑って粗さと甘さが混じったSの息遣いまで吸った。
「どうしてほしいの?言って?」
「わかんない・・・わかんないよ・・・」
Sの声は上ずっていた。
「おまえの好きにしたいのに・・・言ってくれよ、S。」
Sの片手が伸びて肩越しにNの顔を抱こうとしていたが、指先が震えていた。
「わかんない・・・Nさんが好き・・・以外、わかんない・・・」
日頃滅多に想いを口にしないSの口から思いがけず出た告白に、Nは一気に射精感が込み上げて来るのを感じ、慌ててSを強く抱き締め、Sの片足の下に片手を潜らせ高く持ち上げ、腰の動きを早くした。
「あっあっあっ・・・」
Nの打つ衝撃に合わせてSの声が漏れていた。それがどんどん早さを増している。Nの鼻から抜ける呻きも重なって、二人の耳を刺激した。
「もっと、言ってくれ・・・好きだって・・・」
「Nさんが・・・好き・・・はぁ・・・・好きっ!!」
Sが絶叫のように言うと、NはSの首の下に通していた片手でSの顔を抱き、深く唇を重ねた。もう片方のNの手がSの跳ねるように揺れているS自身を掴んだ瞬間、その手が白く濡れた。そこからも暫くは強い律動が続いて、Sは身体をのけ反らせて細かい痙攣をしているようだった。
「S・・・S・・・」
うわ言のように何度もSの名を呼び、腰を強く2~3度打ち付けてから、Nは深い溜息を吐いて脱力しSに覆い被さった。
二人の粗い息遣いだけが雨音に重なって部屋を満たしていたけれど、それもいつしか雨音のみになった。
「S、大丈夫か?」
Sの背から身体を退け、自身をも抜いた。長い時間そこに居た者が退いた事で、ぽっかり空いたそこはやがてゆっくりと自然に閉じていったが、激しい摩擦で傷付けていやしないかとNは狭間に親指を掛けて広げて見た。出血はしていないが、赤く腫れていた。
これはケアしてやらないと次が遠退く・・・とNは今更焦っていた。
「S、おい、S。」
伏せったままで身動きをしないSを揺さぶり、身体を翻した。頬が上気したままの泣きはらした顔、白い肌には自分が付けた吸い痕、噛み痕、弄り過ぎて腫れ上がった乳首・・・薄暗くとも日中の明るさに晒されたその様を見て、Nは生唾を飲み込んでいた。
「S、平気か?」
軽く頬を叩けば、薄っすらと目が開いた。
「全然、スローじゃなかった。」
そう言って、Sは微笑んだ。Nは愛しさだけ込み上げてきて、Sの身体を抱き締めた。
「S、本当に・・・おまえが好きだ。」
「うん。」
Nの広い背に回されたSの手が、その背をぽんぽんと優しく叩いた。




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