【完結】えっちしたことある回数が見えるようになったんですがわんこ系年下童顔騎士の経験回数が凄すぎて気絶しそう

雪井しい

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 なんとか仕事を終え、私は客のいなくなった店内で大きくため息をこぼす。

「……絶対変に思っただろうな……」

 私のおかしくなった原因とも言えるジェフの顔を思い浮かべながら独り言をこぼす。衝撃的な数字を見てしまったあとから、ジェフと目を見て会話をすることが出来なくなってしまった。
 何度も私のことを呼びかける彼に対し、「今忙しいから」と捨て台詞を残し続け、そのまま逃げてしまっていた。
 流石にお客さんに対する態度じゃないと店長に軽く注意を受けたが、どうしてもうまく顔を合わせることができなかったのだ。

「……もう遅いし帰ろう」

 今日はパトリシアは早上がりで、戸締りの担当をするのは私だった。すでに深夜ではありながら繁華街の一角はいまだ賑わいを見せている。
 女一人が道を歩いていても襲われることはそう多いことではない。だからこそいつも通りに私はそのまま自宅へと向かおうと足を踏み出したのだがそのとき──。

「ルーナさん」

「…………っ! な、なに」

 突如背後から名前が呼ばれ、肩を跳ねさせた。突如呼びかけられたこともそうだが、その声に聞き覚えがあったために動揺が隠せない。
 強ばる身体を無理矢理に動かし、恐る恐る背後を確認した。

「…………ジェフ。あなたなんで……」

 そこには私よりも頭ひとつ分は大きい男──ジェフがいた。
 あどけなさを残しながらも端正な顔が月明かりに照らされて、どこか憂いのあるように感じさせる。

 私の問いに苦笑いをこぼしながらジェフは口を開く。

「今日のルーナさん、どこかおかしかったので僕、何かしちゃったかなって思って。だからここで待ってたんです」

「だからってこんな遅い時間まで待ってるなんて……直接私に言ってくれれば──」

「ごめんなさい。迷惑でしたよね……」

 ジェフは肩を落とし、庇護欲を感じさせる様子で顔を俯かせた。
 そんな表情をさせているのが自分だとわかっているせいか、私の心の中には罪悪感が込み上げてくる。
 思わずかぶりを振ってジェフの肩を掴んだ。

「め、迷惑じゃないわ。でも、明日も仕事があるんでしょ? それなのにこんな夜遅くまでこんなところに一人でいて、心配だっただけなの」

「そうですか! よかった……。ルーナさんに嫌がられてないならそれでいいです」

 私の言葉にほっとしたのか、ジェフは顔を上げて屈託なく微笑みを浮かべる。
 子犬が母犬に甘えるような、そんな姿に思わず顔が綻びそうになった。
 ジェフはいつも私に対し好意的な視線をぶつけ、ときには甘えるような口ぶりをしてくるのだ。悪い気はしないため、
思わず絆されてしまっていた。

 けれど、今はそう言ってはいられない。思わず緩みそうになった気を引き締め、私はなるべく平静を心がけながら話す。

「……ほら、気のせいだったってことが分かったんだから、早く寄宿舎に帰ったほうがいいんじゃないかしら」

「…………そうですね。帰ろうとは思いますが、先にルーナさんを送り届けることにします」

「え、」

 キッパリと言い切ったジェフは私の手を取り、「早くいきましょう!」と引っ張る。私はその手に引かれるようにして足を進めた。

 帰り道はジェフが色々な世間話をしてくれた。今日の騎士団長の機嫌が悪かったことや、同期の騎士のおかしな失敗など、普段であれば楽しく聞けていた話題ばかりだ。
 けれど、今日の私はそんな話題など一切耳には届かない。どうしたって考えてしまうのだ。私のおかしな力によって見えてしまっているジェフの頭上にある数字のことを。

 顔がうまく取り繕えていなかったのだろうか。自宅前までたどり着き、別れの挨拶を告げようとした途端、ジェフが不満を滲ませた面持ちで言い放つ。

「……やっぱり今日のルーナさんは絶対におかしいです。僕、何かしてしまいましたか? 教えてください」

「そ、んなこと……」

 私は頑なに首を横に振り続けた。
 このおかしな力のことを話せば狂人扱いされてしまうかもしれないし、なによりジェフ本人に「エッチ11,809回したことあるの」とは常識的にも尋ねることは不可能だ。それこそ頭のおかしい人扱いされてしまうのがオチだろう。

 だが、ジェフも譲ろうとはしなかった。普段は見せないムッとした面持ちを見せたかと思えば、どこか探るような目を向けてくる。その瞳の奥には何故か仄暗い感情が宿っているように感じ、思わず身を震わせた。

「……僕はルーナさんの言うことならなんでも信じますし、相談にだって乗ります。僕に不満があるのなら改善するように努力しますから、お願いです。教えて下さい」

 ジェフは一切引かなかった。
 まるで主人に対し忠誠心の高い犬のようだとさえ感じるほどで。根掘り葉掘り尋ねられた私は疲れを感じ始めていた。
 最終的に、もし私が話さなければ自宅前で待ち続けるとさえ言い放ち、結局折れたのは私の方だった。
 
 私の力や目にしたことを告げればきっとこの場は収まるだろう。明日からはおかしな人間だと思われて一線を引かれる可能性もある。
 だが今の突如発生した私はおかしな力に対していっぱいいっぱいだった。
 疲弊した頭では判断力も損なわれてしまうのは想像に容易い。

 全てがどうでもいいようにさえ思えてしまい、気がつけば秘密をこぼしてしまったのだ。

「…………私、その人がこれまでエッチした回数が見えるようになったの。人の頭上に浮かんでて。……ねえ、ジェフ。あなたの数字、118,09って出てるけど────それって本当?」

 笑い飛ばしてくれればいいと思い、まるで戯言を語るかのように言い放った。
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