【完結】えっちしたことある回数が見えるようになったんですがわんこ系年下童顔騎士の経験回数が凄すぎて気絶しそう

雪井しい

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 気がつけばこの歳になっており、周囲の同い年の友人らは皆経験済みの人間はばかりになっていた。
 私自身も昔から男性にあまり興味が湧かず、付き合いたいと思える男はほとんどいなかったのだ。気になる男性がいたこともあったが、結局はその男性が他の女性と付き合い始めたことによって諦めることとなった。

 ただそのときでさえ失恋による悲しみや息苦しさは感じず、少し驚いただけで終わってしまった。世間の感覚と照らし合わせれば、おそらくあれは恋だとは言えないのだろう。

 そんな私にとってパトリシアの男性遍歴は目の毒と言ってもいい。毎晩のように男を取っ替え引っ替えし続ける様は清々しささえ感じる。

 ぼんやりと視線を向けていたことに気がついたのか、パトリシアは私に視線を送りながら目を瞬いた。頭上には店長やサリタと同様に数字が──。

「……ん? 2083……」

「なんですか、ルーナさん? にせん? 何をいってるんでしょうか」

「いえ、その…………まさか、ね」

 私は顔を引き攣らせ、パトリシアに向き直る。頭の中に思い浮かんだあられもないことに強く否定を示すために首を横に振った。そして無理に笑顔を貼り付けて口を開く。

「いえ、この店で客が暴れ回ることって意外と少ないじゃない? だから私たちも安心して働けているというか。……でも、他の治安悪い地区だと何百何千とこういう騒ぎになってるんだろうなって思って……」

「そういうことですか。たしかにここは店長も優しいですし、お客さんもいい人多いし職場としてはかなり高待遇ですよね。私もこの店に雇われて本当に良かったです」

 どうやらうまく誤魔化せたようで、私は小さく笑いながらパトリシアの言葉に頷いた。

 昼は全て店の清掃に費やし、夕方になってようやく店の開店が可能となった。私はいつも通りに給仕をこなし、常連客と話をする。

 開店して2時間ほど経過したところでパトリシアの姿が見えなくなり、店長が私に問いかけてくる。

「……あれ? パティはどこへいったんだ?」

「……? さっきまであの席のお客さんとお話ししてたと思うんですが……あれ、お客さんもいなくなってる……」

「悪いんだけどルーナ、ちょっとパティのこと探してきてくれるかい? そろそろかきいれどきになってお客さんも増えてきたからさ」

 店長の言葉に頷き、私はパトリシアの姿を探し始めた。お手洗いにでも行っている可能性もあると考えた私はまず手洗い場へと向かう。

 そして私は衝撃的な光景を目にした。

「……あぁん、イイっ、はぁっ、いいのぉっ、もっと……もっと奥にぃ、!」

「………………っ!?」

 手洗い場の扉は鍵が閉まっておらず、中で行われていたことに呆然と立ち尽くす。甘い声の主はどう考えてもパトリシアのもので、彼女は着ていた服を乱し、肌をさらけ出しながら男に絡みついてた。相手の服装や背格好から先程パトリシアが接客していた客だとわかる。

 大きく息を呑み、その官能的な空間に圧倒される。一瞬にして全身の血液が逆流したような錯覚に陥り、顔に熱が集まってくる。
 私の視線を感じたのだろうか、腰をくねらせてよがり狂うパトリシアと視線がかち合った。パトリシアは驚き目を見開いたかと思えば、次の瞬間には扇情的な面持ちで私へ目配せをしてきた。

 はっとした私は勇み足でその場を立ち去った。肩で息をしながら冷静になれと言い聞かせても、瞼の裏に浮かぶのは先ほどの艶やかな空間で。

「…………ん? どうしたんだい、ルーナ。パティを探しに行ったんじゃないのかい?」

「……っ、あ……パ、パティは探したんですがどこにもおらず……もしかしてお客さんのお見送りでもして捕まってるのかもしれません……」

「ああ、確かにその可能性もあるね。もう少し待ってみるか」

 動揺を悟られないように平静さを心掛けたおかげが、店長に不審だとは思われなかったようだった。私は店内の隅でため息をつき、小声で言葉をこぼす。

「……一体何やってんのよ、パティったら……」

 呆れながらも給仕をこなしていると、パトリシアは何事もなかったかのように店内へ戻ってきていた。私はそばに駆け寄り、目を吊り上げながら憤りをぶつけようとするが。

「……え、2084に変わってる? 1増えてるわよね? ど、どうして……」

 この短時間で頭上の数字が増えるようなことがあったのか。嫌な予感に私は思わず手洗い場に駆け込む。情事のすぐ後のせいか、どこか生臭いような香りがしたが、今はそれを考えるより優先すべきことがあった。隅には姿見が設置されており、私はその中を覗き込む。そして思わずその場にへたり込んだ。

「…………0……私の数字は0」

 私の頭上に浮かぶのは0という数で。今朝からなるべく気にしないようにしていたせいで自分の数も把握していなかった。

 もうここまで来たら、そうとしか思えない。身体の力が抜け、私は涙声で口走る。

「この回数ってエッチしたことある回数ってこと!?」

 2048のパトリシアと0の私。
 一方は男性経験豊富で、もう片方は未だ処女。

 ここまで来れば、おのずと数字の意味が絞り込まれてくる。決めつけるのは時期尚早なのかもしれないが、なぜか私の中では確信に近い予感があった。
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