【完結】好きな人に会いたくて幽霊になった令嬢ですが恋を叶えてもいいですか?

雪井しい

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27.私を呼ぶ声※

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 この性交渉が終わったら未練は全てなくなる。私はこの世から消えて無くなっているだろう。

 脳裏に一瞬考えがよぎるが、それも大きすぎる快楽に押し流されていく。

 もっとこの時間を味わっていたい。
 ロレンシオと繋がっていたい。

 心の中でそう願うものの、この甘い蜜月が終わってしまうまで刻々と時間は迫っている。

「あっ……んんっ、はっ、んん……んっ、あっっ、ああんっ……ンンンっ、んん!」

 ピストンが小刻みとなり、肉をぶつそれが先ほどより荒々しくなってきたと感じる。
 私もすでに限界に近かった。
 口からはひっきりなしに嬌声が溢れ、無意識に中のロレンシオの形がわかるほど締め付けてしまう。
 ロレンシオの雄も挿入時より格段に大きくなっていることが伝わってきて、それが苦しくて、なにより気持ちがいい。

「うっ……はっ、はっ、そ、そろそろ…………ッ、出そうだ、っ、はぁ、ッ」

「わっ、私も、っっ……い、イっち、うっ! ….…んんっ、ンンン!」

 重なり合う中、激しい息遣いで互いを求め合う。
 ロレンシオは言葉通り射精間近なのか、苦しげに眉を寄せていた。
 そんな彼の顔をみているだけで、何故だか愛おしさが心を満たしていく。

 小刻みに突かれていたそれが最奥を強くぶつけたその瞬間。

「…………っ、んん、くっ!」

「あっ、ああああああぁぁっ!」

 内部に熱いものが注ぎ込まれ、私はベッド上で激しい痙攣を繰り返す。
 同時に絶頂を迎えていた。

 ロレンシオの吐き出した白濁をすべて搾り取らんと勝手に中が収縮する。
 あまりの快楽に焦点が合わず、呼吸を荒げるばかりだ。
 彼は小さく息を漏らしながら、最後の一滴まで吐き出し続けた。

 ゆるゆると動かされていた雄が引き抜かれると、下腹部はどこか物足りなさを覚えてヒクヒクと収縮した。とろり、と中から熱いものが垂れる感覚に思わず身を震わせると、眼前のロレンシオと目線が合う。

「….…んっ」

「……っ、んんっ!」

 自然と顔同士が引き寄せられ、甘ったるいキスを繰り返す。
 エッチで体温が上がったせいか、今日したキスの中でも一番互いの熱を感じ取るものだった。

 舌と舌を絡ませ合い、ようやく唇をはなすと互いの間を銀糸が伝う。
 しっとりと汗ばんだ身体はやけに心地よく、私は自然と瞼を閉じた。

 眠い。
 睡魔に引き寄せられ、意識が落ちていく。
 もっとロレンシオの体温を味わっていたいのに。

 消えてしまえば二度と彼と会うことは叶わないというのに。
 それでも睡魔に勝つことなどできず──。

 私は意識をベッドに沈めた。

「…………おやすみ」

 最後にロレンシオの優しい声が聞こえたような気がした。





 誰かが私を呼んでいる。
 それは一体誰?

 聞き覚えのある声に意識が引っ張られる。
 そう、これは私が高熱で寝込んでいるとき、泣きながら縋り付いてきた弟の声だ。

『……姉ちゃん。死なないで!』

 5つも歳の離れた弟、フィンセントが私の手を握る。可愛がっていた弟の願いに応えたかったが、私の体は熱で自由がきかなかった。

『絶対ぼくが助けるから……』

 声変わり前のボーイソプラノが涙ながらに言うのを私は聞いていた。本当は泣かないでと涙を拭ってあげたかった。

 意識がまた深く沈んでいく。
 フィンセントの声も遠くなっていく。

 ああ、これは夢だ。過去の記憶だ。
 だからどうすることもできない。
 
 悲哀と憂いに心が侵食されていく。
 けれど、その中ではっきりと私の名を呼ぶ新たな声が耳に届く。

「…………ナ」

 その声は小さく、はっきりとは聞こえない。それでも感覚を尖らせるようにして耳を澄ます。

「…………ンナ」

 聞き覚えのある声だ。
 ときに冷たく突き放し、ときに温かく私をかき抱く。耳にするだけで脈が高鳴るその声。

「…………ノンナ」

 最後にはっきりと聞こえた声の主は──。

 私は僅かに身じろぎをし、眉を寄せた。
 瞼の裏が眩しく、どこか身体が重く感じるのは気のせいだろうか。

 ゆっくりと瞼を開くと彫刻とも見間違うほどの輝く美貌の男。瞼を閉じている姿から眠っていることが一目でわかった。

「……ロレンシオ、様….…」

 私はぽつりとこぼす。
 声は掠れてうまく発生出来ず、うまく働かない頭で状況把握に努めようと体を起こそうとする。

 私は生まれたままの姿だった。

 そうだ。
 昨日は────。

「…………っっっッッッ!!!」

 声には出ない叫びを上げ、身体にシーツを引き寄せる。
 
 私は昨晩、ロレンシオと激しく抱き合い──最後までエッチをしたのだ。

 その状況を理解し、思わず頭から湯気が出そうなほど赤面する。
 あまりの気持ちよさに昨日の自分は理性皆無だった。たしかな破天荒だとよく言われる自分であってもやはり乙女としてはその事実に恥ずかしさを覚えるのはやぶさかでもないだろう。

「……っ、んっ? 起きたのか……」

 隣で寝息を上げていたロレンシオは寝ぼけ眼で私に視線を向ける。
 彼も衣服は着用していないようで、朝日に照らされる肌色が眩しい。

 ロレンシオは自身の体をゆっくりと起こし、私と向かい合った。
 いつも綺麗に整えられている金髪は寝癖がついており、寝起きの顔はどこかあどけない。
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