【完結】スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜

雪井しい

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39.お医者さんプレイ?

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 食事を終え、私たちはそれぞれ入浴をした。啓一郎さんは怪我をしたのが腹部であり何針も縫うこととなったが、すでに抜糸は終わっていたため入浴は可能だった。 

 風呂から出た啓一郎さんは包帯を巻くために上半身裸だった。から髪からは雫が滴り落ちており、肩にかけたタオルでガシガシとその頭を拭く。
 お皿洗いをしていた私は思わずその姿に目を逸らした。
 何度も見慣れた姿であるはずなのに、未だに慣れることはなかった。

 バレエの演目によっては男性ダンサーは上半身裸で踊るというものもあり、男性の肌というものは見慣れているつもりだった。
 けれどそれは恋愛的に好きではない人の裸だったからで、意中の男性の裸というものがこれほどまでに心臓を高鳴らせるということを私は初めて知った。

 啓一郎さんは細身であるが意外と腹や二の腕にしっかり筋肉がついており、抱きしめられたときに少し硬いなと感じるところが────。

「……って私なに考えてるの……」

 私は小さくかぶりを振った。
 ちょうど皿も洗い終え、食器乾燥機に入れ終えた私はタオルで手を拭いながらリビングへ移動する。
 
 啓一郎さんは髪を既に拭き終え、腹に包帯を巻こうとしているところだった。
 病院では看護師さんが行っていたのだが、自宅では自らやらなければならない。啓一郎さんは医者であり、包帯などいくつも巻いているのだろうが────。

「啓一郎さん、包帯は私が巻きます」

「紗雪が?」

 病院では自宅から衣服等を持ってきたり、必要な書類にサインしたりするだけで看病は自分の仕事ではなかった。
 けれどもそもそも啓一郎さんが刺されてしまったのは私を庇ったからだった。それなのに何もできないというのはもどかしいもので。

 それならば包帯くらい巻いて役に立ちたいと考えたのだ。

「啓一郎さんみたいに上手くできるか分からないんですけど……よければ……」

「うん! 是非お願いできるかな?」

 どうやら啓一郎さんは私の行動に好意的なようで、嬉しそうに包帯を差し出す。どこかにやけているように見えるのは目の錯覚だろうかと考えながら、ソファに掛けている啓一郎さんの前に跪いた。

「それじゃあ失礼します……」

 私は啓一郎さんの広い背中に手を回し、包帯を巻いていく。思ったよりも肌との距離が近く、気づかれないようにコクリと生唾を飲んだ。

 出来うる限りの丁寧な手つきを心がけながら巻いていると、啓一郎さんは私の頭を撫で出す。驚いた私は手を止め、啓一郎さんを見上げた。

「な、なんですか突然……」

「いやぁ……なんていうか、こうやって紗雪にお世話されるのもいいなって思ってさ。いつもとは違う環境だから特別感あっていいなって」

「きょ、今日は私がお世話する日って決めてますから。退院したばかりなんですし、なにかあれば言ってくださいね」

 私は手の作業を再開する。自信満々に宣言してみると今日はなんでも出来そうな気持ちになる。

「そう言うのなら全部紗雪に任せようかな。ね、紗雪センセイ?」

「……っ」

 私は言葉の深い意味まで悟り、瞼をぎゅっと閉じた。そんな私の様子を見て、啓一郎さんは包帯を巻いている私の手を取る。

「紗雪センセイの指、細くて白くて綺麗ですね。今は少しだけひんやりしていて────気持ちがいいです」

 啓一郎さんはそう言いながら私の指先にキスをした。突然の事態に対応出来ない私を置いて、そのまま指先を自分の指に絡め始める。

 啓一郎さんは目元を細め、もう片方の手で私の唇に触れた。親指がツーっと下唇をなぞり上げ、背筋に快楽が駆け抜けた。

 私たちはそのまま見つめ合う。困惑する私に対し、啓一郎さんはどこか楽しそうだった。

 巻き終えていない包帯はカーペットの上に落ちてしまい、これではもう一度巻き直さなければならないなと頭のどこかで考える。けれどこの甘い空気から逃げ出す術を私は知らない。

「ねぇ紗雪センセイ。包帯巻くよりもいいこと────教えてくれませんか?」

「センセイって……」

 どうやら今夜はそんな方向性でいくのが決定事項なのか、私は特殊な状況に少しだけ高揚した。

 帰宅してからそうだったが、今日の啓一郎さんはどこか甘えっ子のようで、とても可愛い。

 でもその前に。

「……あ、あとでちゃんと教えますから。でも私、まだお風呂に入ってませんから少しだけお留守番しててくださいね」

 啓一郎さんの口調につられて少しだけ年上風に真意を伝える。
 だが啓一郎さんはその答えに納得していないのか肩をすくめた。

「お風呂なんてあとでいいよ。あとでどうせもう一回入ることになるんだし」

 啓一郎さんはそう言って私の手を離そうとしなかった。立ち上がりかけた私の腰を引き寄せ、そのまま自身はソファの上に仰向けになる。
 私は引き寄せられたと同時に啓一郎さんの上へと跨るような体勢となった。

「こ、こんなの恥ずかしいです……」

「紗雪センセイが教えてくれるんでしょ? ねぇ、恥ずかしがらないで」

「……~っもう! け、啓一郎さんのバカって!」

 羞恥で思わず啓一郎さんの胸元を軽く殴りつけると「ごめんごめん、悪ふざけが過ぎた」と言いながら笑う。
 楽しそうな啓一郎さんの様子に私も釣られて笑った。

「こういうのはまだ紗雪には早かったかな。また次回に期待するとして……今夜はいつも通りに優しくするから……抱かせて?」

 急激に糖度を帯びた啓一郎さんの言葉に私は首をコクリと振った。


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