【完結】スパダリ医師の甘々な溺愛事情 〜新妻は蜜月に溶かされる〜

雪井しい

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13.酔った勢いで※

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 ベッドが跳ねるがいい素材やマットレスを使っているのか痛みなどは皆無だ。
 
 啓一郎さんの身体は私に覆い被さるような体勢で、凄く顔が近い。
 私はうっとりといつもの理性的なものとは異なる情欲の混じる瞳を見た。
 目元の黒子が可愛くて、思わずそこに唇を寄せた。
 
 啓一郎さんが驚いたように体を揺らす。

「紗雪っ、あんま可愛いことしないで……。これでも我慢してるんだから」

「我慢、しないで……」

    抑制の効かない獣に乗り移られたような感覚だった。
 いつもの自分じゃない。
 そんなことわかっているはずなのに、どうしても目の前の男が欲しくてたまらない。

 男の相手なんてしたことないはずなのに。

    私の言葉に啓一郎さんはくっと喉を鳴らして。
 また同じように噛み付くようなキスを落とした。

 本当に食べられてしまうのではないか。
 そんなことを思ってしまうような激しいキスだった。

 酸欠と酔いで意識がぼんやりとするなか、啓一郎さんの手が私の足をドレスの上からなぞる。
 以前触られたとき以上に敏感な体に自分でも驚きを感じるが、それよりももっと触って欲しいという願望が溢れて止まらない。

 啓一郎さんの手はベッドに倒れ込んだ際に捲れたドレスの裾までたどり着く。
 それをゆっくりと託しあげ、直接太ももに触れる。

「んっ!」

 私は思わず声を漏らした。
 その反応に対し、艶のある笑みをこぼす啓一郎さん。

 そしてその声に蓋をするかのようにまたキスをした。

 体をなぞる手は太ももから腰へ、そして腹へと上がっていく。
 たくし上げられたドレスは私の下着を隠しきれていないだろう。

 躊躇もなく体をなぞる手に私は初めての快楽を覚えていた。
    そしてとうとう──。

「あっ、そこは……」

    胸元へと辿り着き、ぱっくりと空いているドレスの胸元に触れる。

 そして啓一郎さんはその唇を胸元へと運び、ちゅっ、と音を立てて吸った。

 突然の鋭い痛みに私は驚き、ぎゅっと体を固くする。

「……な、なに」

「印、つけちゃった」

「し、るし?」

   私は訳もわからず胸元へと視線を落とす。

 そこには赤い花が咲いていた。
 
 私はすぐにそれがキスマークと呼ばれるものだと悟る。
 それと同時に急激に居た堪れなさを感じた。

「俺が送ったドレス……すごく似合ってたんだけど、ひとつだけ後悔したことがあって」

「……?」

「ちょっと胸元開けすぎちゃったかなって、ドレスを着た紗雪を見て思った。こんなんじゃみんなに俺の紗雪を見られちゃうって」

「わ、私のことなんて誰もみないよ……ほら、ステファニアさんみたいな綺麗な奥さんだって会場にはいっぱいいたし」

    啓一郎さんが考えていたことを照れ臭く思い、思っていたことを口にする。
 
 紗雪はよく言えばスレンダー──悪く言えば痩せぽっちの体型でそれをずっとコンプレックスに思っていたのだ。
 
 学生の頃は自分の胸の小ささに思い悩んだこともあった。
 だが啓一郎さんは私の頬をなで、そして花の咲いた胸元にもう一度唇を落としたあと言う。

「そんなことない。あの会場の中で紗雪が一番綺麗だった。男たちはみんな紗雪を見ていた。俺、ほんとはどうにかなりそうだったよ」

    独占欲を露わにする啓一郎さんを見て、私は目を瞬いた。
 嘘を言っている様子はない。

 これがいつも冷静で完璧な啓一郎さんなのか。

 私は彼の意外な一面を知ってしまい、動揺したが同時に嬉しくなった。

 知らない啓一郎さんをみて嬉しくなった。
 もっと彼のいろんな姿を見たいと思った。

 啓一郎さんの手はドレスの肩紐に伸び、とうとう胸元が露わになる。

 急激に恥ずかしくなった私は慌てて手で隠した。

「小さいから……あんまり見ないで」

「何言ってるの? すごく可愛い。食べちゃいたいくらい」

    慣れた手つきで私の胸をいじる。
 それに翻弄され、私は口から喘ぎ声を漏らした。

 手は胸から腹へと戻り、そしてまた太ももにたどり着く。
 そして両太ももが合わさるその間に手が伸びたとき──。

「……きゃっ」

     先程までの甘い感覚とは異なる鋭い官能。

 私は目をぎゅっと閉じる。

「大丈夫、俺に任せて。可愛いよ、紗雪」

「け、啓一郎っ、さんっ! そ、そこはだめなのっ」

    その手が、指先がショーツをなぞり、身体が跳ねる。
 快楽で身が溶けてしまいそうだった。

「痛くはない? 大丈夫?」

「あっ、ああっ」

    気持ち良すぎる。
 その一言だった。

 こんなときにも気を遣ってくれる啓一郎さんの優しさを嬉しく思いながらも、私はその快楽を追う。

 気持ちよくて死んでしまいそうだった。

 そしてとうとうプツリと何かが弾け──。

 私は今日一番の嬌声をあげる。

 ぐずぐずに溶けた身体がまるで陸にあげられた魚のようにびくびくと跳ね、自分ではどうしようもなかった。

 この人生で一度も感じたことのない快楽に頭が真っ白になる。

 しばらくこの快楽が続いた後、私はベッドに身体を沈めた。
 呼吸が荒く、肩で息をする。

 そんなはしたない私を見て啓一郎さんは。

「俺の紗雪……気持ちよかったね。すごく可愛いかったよ」

「けいっ、いちろうっ、さんっ……はぁはぁ」

    まだ息の荒い私の頭にキスを落とし、ゆっくりと頭を撫でる。

 乱れた髪を整えるかのようにすかれていると、段々と睡魔が襲ってくる。

 眠りたくないという私の反抗心はおしながされ、とうとう瞼が閉じてしまう。

 そして意識が完全になくなる前に聞いたのは──。


「…………ごめんね」

    なぜか謝る啓一郎さんの声だった。


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