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冒険者
水色の女性
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「……水色?」
とりあえず、俺は確認のために訊いた。
しかし、女性は何も言わない。
「とりあえず、あなたの種族を[鑑定]してもいいですか?」
一応、相手のステータスを見る場合は、許可を得てからにしようと思っている。でなければ相手の気分を害してしまうかもしれないし、最悪暴力沙汰になるかもしれないからだ。
俺の言葉に女性は、ビクッと何かに怯えるような反応を示した。
それを見た俺は、[鑑定]ーー正しくは[看破]だがーーをするのをやめた。
相手が何かに怯えているのに、それを無視してステータスを見るのはいけないことだと思ったからだ。
「…………すか?」
「ん?」
女性は背を向けたままだったため、何を呟いたのか全く聞こえなかった。しかし、ゆっくりと振り返り、俺の方をしっかりと向くと、まっすぐな目で再度問いかけた。
「聖騎士に訴えますか?」
いきなり何をと思ったが、先ほど俺が「あなたの種族を[鑑定]してもいいですか?」と質問したため、俺が女性の種族を知ったと思ったのだろう。
だからこそ俺は言う。
「別に、あなたがどんな種族だって、俺は聖騎士にゃ訴えないでしょうね」
先ほど聖騎士に訴えられそうになったにも関わらず、俺は愛想笑いを続けたまま言う。
別に嘘じゃないからな。
しかし、俺の答えに納得しなかったのか、女性は急に立ち上がって前のめりになりながらも、俺に言ってきた。
「いいんですか!?私は魔族なんですよ!聖騎士に訴えれば、報奨金も貰えるんですよ!!」
混乱しているのか、自分で自分を売るようなことを叫んでいる。その声に驚いたのか、彼女の座っていたソファがガタッと揺れたような気がした。
しかし、それが気にならないほどに彼女は混乱しているらしく、自分の種族まで口走っていた。
それでも、俺は正直に言う。
「え、面倒臭い」
ええ、本音ですとも。
何か期待したか?
残念だったな。俺は誰かの期待に応えることなんてできない人間なんでね。
「面倒……私のステータスを鑑定しておいて、さらに種族を知った上で訴えるのが面倒臭いとは……」
なぜか女性は意気消沈したような表情をして、力なくソファに倒れこむように座り込んだ。座った拍子に、ソファがボフッと音を立て小さなホコリが少し舞った。
「えっくしょん」
ソファの裏からくしゃみらしき可愛らしい声が聞こえたが、俺は聞かなかったことにした。スルー能力は高いからな、俺って。
そうやって俺のスルー能力を自画自賛していると、女性と俺がいる応接間の扉から、ノックされた音が聞こえた。
「……」
しかし、そのノックの音が聞こえないのか、女性は何も言わない。
俺は一応、このノックには俺が応えるべきではないと勝手に判断し、何も言わなかった。
それがいけなかったのか、扉が重い切り開いて、そこから赤髪の女性が現れた。
「話はすべて聞かせてもらった!!」
「ぎゃあ!?」
「うわあお」
意気消沈していた女性は驚いてソファから落ち、俺はとりあえず驚いた。
赤髪の女性はポーズを決めており、ドヤ顔をしていた。なぜか、頭にコブを作って涙目の子供を3人引き連れて。
とりあえず、俺は確認のために訊いた。
しかし、女性は何も言わない。
「とりあえず、あなたの種族を[鑑定]してもいいですか?」
一応、相手のステータスを見る場合は、許可を得てからにしようと思っている。でなければ相手の気分を害してしまうかもしれないし、最悪暴力沙汰になるかもしれないからだ。
俺の言葉に女性は、ビクッと何かに怯えるような反応を示した。
それを見た俺は、[鑑定]ーー正しくは[看破]だがーーをするのをやめた。
相手が何かに怯えているのに、それを無視してステータスを見るのはいけないことだと思ったからだ。
「…………すか?」
「ん?」
女性は背を向けたままだったため、何を呟いたのか全く聞こえなかった。しかし、ゆっくりと振り返り、俺の方をしっかりと向くと、まっすぐな目で再度問いかけた。
「聖騎士に訴えますか?」
いきなり何をと思ったが、先ほど俺が「あなたの種族を[鑑定]してもいいですか?」と質問したため、俺が女性の種族を知ったと思ったのだろう。
だからこそ俺は言う。
「別に、あなたがどんな種族だって、俺は聖騎士にゃ訴えないでしょうね」
先ほど聖騎士に訴えられそうになったにも関わらず、俺は愛想笑いを続けたまま言う。
別に嘘じゃないからな。
しかし、俺の答えに納得しなかったのか、女性は急に立ち上がって前のめりになりながらも、俺に言ってきた。
「いいんですか!?私は魔族なんですよ!聖騎士に訴えれば、報奨金も貰えるんですよ!!」
混乱しているのか、自分で自分を売るようなことを叫んでいる。その声に驚いたのか、彼女の座っていたソファがガタッと揺れたような気がした。
しかし、それが気にならないほどに彼女は混乱しているらしく、自分の種族まで口走っていた。
それでも、俺は正直に言う。
「え、面倒臭い」
ええ、本音ですとも。
何か期待したか?
残念だったな。俺は誰かの期待に応えることなんてできない人間なんでね。
「面倒……私のステータスを鑑定しておいて、さらに種族を知った上で訴えるのが面倒臭いとは……」
なぜか女性は意気消沈したような表情をして、力なくソファに倒れこむように座り込んだ。座った拍子に、ソファがボフッと音を立て小さなホコリが少し舞った。
「えっくしょん」
ソファの裏からくしゃみらしき可愛らしい声が聞こえたが、俺は聞かなかったことにした。スルー能力は高いからな、俺って。
そうやって俺のスルー能力を自画自賛していると、女性と俺がいる応接間の扉から、ノックされた音が聞こえた。
「……」
しかし、そのノックの音が聞こえないのか、女性は何も言わない。
俺は一応、このノックには俺が応えるべきではないと勝手に判断し、何も言わなかった。
それがいけなかったのか、扉が重い切り開いて、そこから赤髪の女性が現れた。
「話はすべて聞かせてもらった!!」
「ぎゃあ!?」
「うわあお」
意気消沈していた女性は驚いてソファから落ち、俺はとりあえず驚いた。
赤髪の女性はポーズを決めており、ドヤ顔をしていた。なぜか、頭にコブを作って涙目の子供を3人引き連れて。
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