そして男と一匹は去って行った

谷川ベルノー

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1 出会いは突然

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 魔物品評会。それは、魔物と人間の絆を確かめる大会。
 審査員は魔物と飼い主の息の合ったパフォーマンスやファッションのセンスを見てポイントを入れる。
 優勝者となれるのは、全参加者の中で一番点数の高い者。


 人と魔物が溢れる会場。そこには、本番に向けて誰よりも気合のこもった叫び声を上げる一人の男と、その男の腕に乗って鳴く一羽の魔物がいた。

「いよいよ特訓の成果を出す時だな! イデーレ!!」
「カァ──!」

 共に行くぜ! と声を掛けたのは、死にかけていた所を助けて以来、俺ことリーテに懐き相棒となった鴉の魔物のハーピィのイデーレ。
 ハーピィは賢く、メスのハーピィは歌が得意。

 魔物品評会に出てみたいと常々思っていた俺は、イデーレと共に特訓に特訓を重ね、遂に参加することにしたのだ。

 俺の服装はコンディションと同じくバッチリ!
イデーレはイデーレ自身が選んだ花のアクセサリーで同じくバッチリ!!

 後は俺とイデーレの心の通じ合った二重奏で審査員全員の心を鷲掴みにするんだ!!



「やれやれ、随分と煩い坊主だ。ずぶの素人が調子に乗ってると、泣いて帰る羽目になるぜ」
「メェッ」
「な、何だと!?」
「ガ──!!」

 唐突に聞こえてきたのは、上から目線の偉そうな忠告。それと何か場違いな可愛い鳴き声。

 何処の誰だか知らないが、俺達の努力を馬鹿にするなんて許さん!怒りのまま、イデーレと共に振り返った。

 先ず目に入った、というか側にいる人物を先に直視したくなくて目を逸したというか、ともあれ最初に見たのはモコモコでフワフワな綿状で金色の毛皮を持つ羊の夢魔。
 巻貝似の角の形状と女の子が抱き締めるのに丁度良い身体の大きさ。どうやらメスのサキュバスのようだ。
 着けているハートや星をあしらったアクセサリーは見た目の愛らしさを引き立て倍増している。

 そして横に居るのは酷く人相が悪く恐い顔の男。何というか、裏の世界にどっぷり使ってそうと言うべきか。
 それとも今まで仕留めた獲物は人も魔物も数知れずそうと言うべきか。頬の傷も相まって一般人じゃ無さそうということは確かだと確信する。

 服装はサキュバスの毛皮と同じ色のスーツに御揃いのアクセサリーを身に着けている。意外にも、身なりはしっかりしていた。

 ……いや、大会に出るからには当たり前なんだろうけど。


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