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第一章 ドラゴンを退治しようぜ!

10 ドラゴンの魔王が滅びる時/新たなる始まり

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まるで地の底から聞こえるようだ。辺りに轟音が鳴り響き、地面があっという間に砕けていった。

「チョウワッ!?」

 このままでは不味いとようやく感じたのだろう。黒い翼を広げ、飛び立とうとした。だが気付いたときに慌てても、もう遅い。
 砕けた大地にドラゴンが為す術なく呑み込まれ、見下ろしていた者が逆に見下ろされることとなる。

 身体の傷も猛毒も、まだ治りきってはいない。それなのに、まるで身体に異常が無いような動きでカケルは沈む大地に向かって飛び込んで行った。

「うおおおおおぉぉぉぉ──────!!」

 とにかく無我夢中だった。その一瞬だけは、痛みも異常も何もかも、気合いと根性で無理矢理ねじ伏せている。

(エンがくれたこの瞬間!絶対に無駄にしない!!)

 剣を振り下ろし、額の宝石へ叩きつける。

「消えろっ! 魔王──────!!」

 気付けば、イセテン魔王戦のトドメ台詞を無意識に叫んでいた。

 勇者剣アクタオスは、邪悪なる魔王チョウワルイの額のルビーを粉々に打ち砕く。
 宙に舞う禍々しい煌めきは、まるで血飛沫のように赤い軌跡を描いて、ドラゴンの魔王チョウワルイの最後を告げた。

「……チョッ……チョッ……チョウ……ワル──────イ!?」

 嘘だ!? 信じない!? 悲鳴じみた断末魔。魔王チョウワルイは、その咆哮を最後に存在自体が幻だったように掻き消える。
 後に残るのは、今まで奪ってきた宝の山。チョウワルイがお腹のポケットに入れていたものが山積みとなっているだけだ。

「……た、倒したの……?」
「あぁ、そうだ! 俺達やったんだよっ!!」

 呆然と呟くエンに、力一杯頷いて肯定するカケル。
 この勝利は夢じゃないんだとと。二人は、魔王チョウワルイに完全に勝利したのだ。


 チョウワルイと戦った後、二人は近くの街の宿屋に泊まり、激戦の疲れから泥のように眠った。ここはまだ、チョウワルイが破壊と略奪をしていなかった。
 ……というよりも、カケル達と戦って出来なかった為に襲撃を逃れられていた。


 それから数日後、カケル達は【モーント】という街の大衆食堂【夜空に舞う阿呆鳥】で食事をしながら周りに耳を傾け情報収集をしていた。

 多種族溢れるその場所は、ワイワイガヤガヤ騒がしい。他愛ないお喋りもあれば有意義な情報、はたまた憶測や推測の噂など様々な話で溢れている。
 その中でも、特に【魔物が暴走!新種のドラゴン金品強奪!!】や【爆発?謎の地盤沈下?土に混ざって奪われた盗品が!?】が大いに話題になっている。

 当事者達はというと、その事について詳しく説明する気は特になかった。地球という星の小説のドラゴンが本物になって暴れていたと言ったところで信じてもらえる筈がない。
 それに、自分達についても説明しなければならないからだ。

「…………今のところ、あの事で話が持ち切りみたいだな」
「まあ、仕方ないわね」

 転移者やチョウワルイのような敵転移者の情報が欲しかったが、無いものはしょうがない。後で冒険者ギルドにでも寄ってみるべきか。

「そういえば、エンはこの街でもう一人の転移者に会うって言ってたよな。それっていつなんだ?」

 エンの知っている情報を教えてもらってはいたが、他にいるという転移者はこの街で会うと言っていたが、何時頃かは言ってなかった。
 仲間がいるというのは嬉しい。けれど、記憶があやふやな状態でこの世界にいると思うと心境が複雑だ。

「あら、言ってなかった?
一週間後に朧月とまた合う約束をしていたのよ」
「一週間後ってことは、あと数日だよな。でも、どうして他の転移者を探していたエンと一緒に行かなかったんだ? 何か用事があったのか?」
「彼は、気になる場所があるって行ってしまったの。
もしかしたら、わたし達みたいに戦っているのかもしれないわね」

イセテンの魔王チョウワルイと戦ったように、その人もラスボスに立ち向かっているのだろうか。

「…………仮にそうだとしたら、どうしてそんなことになっているんだろうな?」
「今はまだ、分からないわ。でも、これから調べていけば何か分かるかもしれない。
…………カケル、これからも一緒に手伝ってもらっていいかしら?」
「へへっ!勿論、喜んで協力するぜっ!!」
「フフッ、有り難う。本当に嬉しいわ」

 互いに笑い、持っていたグラス同士をぶつける。キィンという澄んだ音は、二人を祝福しているようだった。

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