異世界ストレンジ冒険譚

第一章 ドラゴンを退治しようぜ！

1 勇者=俺！？

　ふと気付けば、周りは見覚えのない景色。

　草木が鬱蒼と生い茂る森の中、俺は一人ポツンと立っていた。

「いや、何処だよココ」

　夢かと思って頬をつねれば痛いので、現実であることは確かなようだ。

「……というか。何だコレ?」

　身体には着た覚えのない軽装の鎧。
片手の重さの違いに目を向ければ、一本の剣を持っていた。どうしてだろう。今まで一度も使ったことはないくせに、何故か凄く見覚えがあった。

「どうして俺はこんな物を持っているんだ?」

　独り言に返ってくる返事はない。
　首を傾げながら見れば、新品なのか磨きぬかれているのかは知らないが刀身がピカピカに輝いている。
　自ら光を放っているようなそれに映る姿が目に入った瞬間。

　俺は目を疑った。何故かって?
　それは、俺が別人になっているからだ。でも、理由はそれだけじゃあない。

「……嘘だろ。だって、この姿は……伊瀬 翔？いや、武器と軽装の鎧があるってことはカケル！？」

　ハッとしてようやく気付く。見覚えがある筈だ。
　だって大好きな小説の一番好きなキャラクターなんだから。

　略称イセテンの【異世界転移した俺は最強無敵の勇者様だった！？】という小説は、女神ゼンイの力で異世界転移した伊瀬 翔（いせ かける）が勇者カケルとなって魔王チョウワルイに支配された異世界を救う物語。

　俺はその本の大ファンなんだ。

「ま、ま、まさか。俺は勇者カケルとして異世界に転移してしまったってことなのか────!?」

　驚愕のあまり、空に向かって心の叫びを開放してしまった。