魔法使いへの告白

谷川ベルノー

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魔法使いへの告白

2 魔法使いは狼狽える

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「一目会った時から、アナタのことを好きになったんです!」
「……あ、あの……その……」

 あまりにも強すぎる熱意と気迫に押され、情けないことに何と言えばいいのか分からないでいる。
 思わずジロジロと相手の顔を見てしまう。
 目鼻顔立ちもとても整っていて、こんな状況でなければ思わず見惚れてしまいそうになるだろうなと口に出さない感想を脳内で呟く。

 黙っていなくとも格好良いその顔は、精一杯の思いを伝えた恥ずかしさと興奮によって熟した林檎よりも真っ赤に染まり、燃える情熱を表したような赤い瞳は、彼の目の前にいるわたしを真っ直ぐに捉え一時も逸らさない。

「どうか、お願いします。ボクの思いを受けとめてください!!」
「……え、え~と……え~と……」

 狼狽えている間もグイグイ愛を伝えてきている。

(……本当に、どうしよう……)

 開店したばかりの店に来て、いきなりというムードも
へったくれもない場所と状況は正直どうなのかとしか
言えない。こちらの都合を聞こうとしないのも、ハッキリ言ってしまうと非常に迷惑である。

 けれど、抑えきれない思いを抱えたままに出来ずに
直接伝えにきた愚直さは嫌いではない。
 それに恥ずかしいから他人だよりで告白してもらおうとしないのも、好ましい部類である。
 まぁ、だからといって

『はい分かりました!貴方の思いは十分に伝わりましたので、今すぐにでも付き合いましょう!!』

 …………なんてことにはならない。

 突然の事態に押しの強い相手。唐突な出来事で混乱した頭では

「……い、一週間後……また来て下さい……」

 そう言うのが精一杯だった。

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