それゆけ背負い投げ!!

それゆけ背負い投げ!!

 とあるオシャレな喫茶店で男女が口喧嘩をしている。
 初めは男性が女性を言いくるめようとあれこれ調子の良いことを言っていたが、恋に盲目になっていない女性は冷静に反論。
 男は上手い言い訳が言えず、喋れば喋るだけ劣勢に陥って次第にしどろもどろになっていった。



「──────────とにかく。婚約なんて破棄よ破棄。女をATMとしか思ってなくて使い捨ててきた屑と分かった以上、結婚なんてする訳ないでしょう。馬鹿じゃないの」
「………………なっ!………………なんだと………………テメェ………………!?」
「あらっ、怒るってことは一応は屑と馬鹿の自覚あったの。じゃあ、貴方ド屑とド馬鹿に格下げね。質悪いから。」
「さっきからオレをナメてんじゃねえぞ! 弱っちい女風情がよっ!!」

 顔を真っ赤に染めるなり、男は当たり前のように拳を振り上げる。
 口で駄目なら暴力で。
 そうして今まで女性に言う事を無理矢理きかせ続けていたのだろう。

「……………ハンッ!」

 力任せの突進を難なく避けるなり、女性は男に背負い投げをかました。
 乱れ一つない美しいフォームから放たれた技。
 それは逆上して襲いかかった男を容易くのしてしまった。



「………………………………いっ! 一本!!」
一連の流れに、見ていた誰かが叫んだ。
 言うべきであるがごとく、口から言葉が飛び出したのだろう。




「じゃっ、さよなら。もう二度と目の前に現れないでよね」


 そう言って、あっかんべーをするなりスタスタ足早に女性は去って行った。



 その後、男は今回の騒ぎだけでなく今まで詐欺やらなんやらと色々やらかしまくった罪で警察に捕まったという。