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第一章 精霊使いは金色の王と戯れる
9 戦いは始まるしかない
しおりを挟む敵は、急ぐことをしない。堂々とした歩みで、少女へと近付いて行く。明らかな無防備。来るならこいと攻撃を誘っている。
(油断はしない! コンボでいく!!)
「【マンドラロード】」
手始めの召喚。ヌイグルミのような人型植物が、カードから呼び出される。
「あい分かった! 任されよ!!」
王冠とマントをつけたマンドラゴラの王様は、植物の成長を促進させる能力を持つ。なので勿論、彼一体だけを召喚してお終いということにはならない。
「【悪食宿り木】【封栓種】頼むぞ、マンドラロード!!」
「マンドラロードの名において命ずる!」
声を張り上げ、小さな杖を掲げれば、二体はメキメキと音をたてて成長の過程をスキップされる。
悪食宿り木は木製の熊【キラーツリー】になり、封栓種は機関銃のような花【封栓華】へと成長を終える。
元の姿からは、とても考えられない変貌ぶりを遂げていた。
「グオオオォォッ!」
何でも食べる悪食より、もっと捕食性と攻撃性が増幅したキラーツリー。鉄より硬い木製の爪で引き裂き、牙を突き立て喰らいつこうと敵に向かって突進。
続くように、ガガガガガッと激しい射撃音。封栓華の花先から撃ち出されれたのは、弾丸状の種。
エルドラドが煩わしそうに腕を動かせば、肉体が傷つくことなく種は手の中へと収まってしまう。
その種は、放り捨てようとした手の平へ根を張り巡らせ、魔力を奪い成長していく。
呪いで黄金になりかけているが、その進度は緩慢。
種が成長するにつれ、だんだん遅くなっていく。
「攻撃が目的ではない。となれば、狙いは動きの抑制か?」
魔力が吸い取られているのに、平然としたまま観察している。本人にすれば、大した痛手ではないらしい。
「【黄昏時蜂】追撃だ!」
身体が金で出来た蜂は、群れで一つの存在。ブンブンブンと羽根を喧しく羽ばたかせ、敵が何者であろうと怯まず、仕留めようと向かって行く。
(エルドラドの呪いは触れればお終い。だけど、抜け穴はある)
呪いは魔法の一種。すなわち魔法の効きにくいものは、呪いにも強い耐性がある。持っていたカードの中で魔法耐性が強い精霊は、封栓種と悪食宿り木。
成長すれば、より強力な精霊となるので、マンドラロードにお願いして一気に急成長させてもらう。
黄昏時蜂は魔法耐性が低いものの、身体が100%黄金で構成されている。元々黄金であれば黄金にされることはない。そして肉体を蝕む麻痺毒を持つので、毒針が刺されば暫くは痺れるはず。
呪いは凶悪、本人は強力。リアルファイトに向けて、手持ちのカードをアンデッド有利にしただけでは、エルドラドに太刀打ち出来ないと気付いた八木。
どうするかと悩み、発想を変えた。それは、とっておきをお見舞いさせるための組み合わせにしたのだ。
下準備としては、状態異常などで行動に制限を掛けるという方向性への切り替え。
耐久性の高いキラーツリーで攻撃を惹きつけさせて、その他の面子でサポートと出来る限り弱体化させる。今持っているカードで出来る、最大の抵抗がこれしかないと思った。
(何か平気そうだから、魔力虚脱が起こるまで、もっと寄生させないと。黄昏時蜂の麻痺毒で痺れてくれればいいんだけど……)
そう考えながら、次の手の準備を始める。
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