4 / 12
第一章 精霊使いは金色の王と戯れる
4 失敗した召喚魔法
しおりを挟む見知らぬうえにワールウィンドを嗾けてしまった僕に少年は不安な眼差しと訝しげな態度であったが、王女様に召喚されたと言うと途端に僕を「勇者様ですか!?」と尊敬を込めて呼びだした。
「勇者様とは知らず、失礼しました。おいら、モブォっていいます。魔法使いのお師匠様と、このお城で働いてる魔法使い見習いです」
「いや、本当にごめんな。呼び掛けても誰も返事をしないから、てっきり無事な人はいないと思って・・・」
僕は間違って呼ばれたから、勇者じゃないと思う。でも、不安そうなモブォが元気な様子になっているので、あえて黙っていることにした。
「す、すみません勇者様。おいら【エルドラド】と戦う準備に集中してて気付かなくて……」
「エルドラドって誰なんだ?」
「この辺り一帯を黄金に変えてしまったアンデッドのことです」
どうしようもなく困ったことが起きた時、勇者と呼ぶ異世界の英雄を召喚して解決してもらうのがこの世界のやり方。
勇者を招く召喚魔法は、この世界では誰でも出来ることではなく、王族だけが扱える神聖な儀式。
今回の事件のきっかけは、ある国の王様が召喚魔法の準備に手間が掛かり過ぎると面倒臭がって雑に召喚してしまったことにより起きたことらしい。
「……なぁ、そういうことってよくあるのか?」
「そ、そんなには無いと思います。ただ自分の力を過信したり、権威があるから大丈夫と謎の自信からやってしまう者はいなくならないらしくて……」
呆れた僕の発言にモブォが慌てて言い繕う。ストレートにそうですと言えない辺り、苦労していることが感じ取れてしまった。
神聖な儀式に時間とお金が掛かるのは、求めている者を必ず呼び出せるようにする為のもの。
それなのに手を抜いたり、間違ったり、召喚魔法に使う媒体が高いからとケチったりすると本来呼び出す者とは意図しない者が現れる。
理由があって厳格になっている。それを我欲で捻じ曲げれば災いがあるということだ。
(……明らかに僕も召喚の失敗で来てるよ……)
追い詰められていた王女様が使った召喚魔法で速矢と間違って僕が呼ばれて来る訳だ。いや、この場合まだ僕で良かったと言うべきか。
悪い精霊使いが来ていたら、どうなっていたことか。というか、どうして失敗するのか割と判明してる辺り、今現在もだが過去にかなりのやらかしが起きまくっているのが明白だ。
(……今まで滅びなかったのが凄いな、この世界……)
そこだけは、ちょっと感心してしまった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
そんなにホイホイ転生させんじゃねえ!転生者達のチートスキルを奪う旅〜好き勝手する転生者に四苦八苦する私〜
Open
ファンタジー
就活浪人生に片足を突っ込みかけている大学生、本田望結のもとに怪しげなスカウトメールが届く。やけになっていた望結は指定された教会に行ってみると・・・
神様の世界でも異世界転生が流行っていて沢山問題が発生しているから解決するために異世界に行って転生者の体の一部を回収してこい?しかも給料も発生する?
月給30万円、昇給あり。衣食住、必要経費は全負担、残業代は別途支給。etc...etc...
新卒の私にとって魅力的な待遇に即決したけど・・・
とにかくやりたい放題の転生者。
何度も聞いた「俺なんかやっちゃいました?」
「俺は静かに暮らしたいのに・・・」
「まさか・・・手加減でもしているのか・・・?」
「これぐらい出来て普通じゃないのか・・・」
そんな転生者を担ぎ上げる異世界の住民達。
そして転生者に秒で惚れていく異世界の女性達によって形成されるハーレムの数々。
もういい加減にしてくれ!!!
小説家になろうでも掲載しております
異世界でお取り寄せ生活
マーチ・メイ
ファンタジー
異世界の魔力不足を補うため、年に数人が魔法を貰い渡り人として渡っていく、そんな世界である日、日本で普通に働いていた橋沼桜が選ばれた。
突然のことに驚く桜だったが、魔法を貰えると知りすぐさま快諾。
貰った魔法は、昔食べて美味しかったチョコレートをまた食べたいがためのお取り寄せ魔法。
意気揚々と異世界へ旅立ち、そして桜の異世界生活が始まる。
貰った魔法を満喫しつつ、異世界で知り合った人達と緩く、のんびりと異世界生活を楽しんでいたら、取り寄せ魔法でとんでもないことが起こり……!?
そんな感じの話です。
のんびり緩い話が好きな人向け、恋愛要素は皆無です。
※小説家になろう、カクヨムでも同時掲載しております。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる