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12 貴方の一番星は ※
しおりを挟むこうして気持ちよくなると全てが吹っ飛んでしまう。こんなに深く愛し合って好きじゃないなんて、そんなこと絶対あり得ない。
そう思うのに心の奥底で、本当にそうかなと問いかけるステラがいて不安な気持ちはゼロにはなってくれなかった。
もう一回したい。
もう一回したら不安が無くなるかもと思って、何度もしてきたけど完全に消え去ることはなくて。
でも、どう思ってるの、なんて聞いてこの関係が終わってしまったらと思うと聞くこともできなくて、ずっと宙ぶらりんのままでいる。
「満足したか」
「うん。続きはベッドでしよう」
「相変わらずだな」
「まだ一回しかしてないもん。もっとする」
純粋に気持ちいい事をしたい気持ちもある。
でも、それよりも安心したい気持ちの方が強い。次会える週末までノクスのことを信じていられるように。
ステラがきっとノクスの一番だと暗示をかけるために。
全てノクスのせいなのだ。相手がノクスだからそうなってしまうだけ。
「ノクスだからだよ。ノクスとなら何回でもしたくなるの」
「どうして」
「え?」
「ほとんど初対面だっただろ」
そう告げるとノクスは珍しく不安げな顔をしていた。出会った時のことを言っているのだろうか。
「あれ、言ってなかったけ」
「あ?」
ステラは自分の中で当たり前になっていたせいで、ノクスに魔女の特性を伝えていなかったことに気づいた。
「魔女は見えるの。相性が」
「相性?」
「性格とか、価値観とか、もちろん体の相性も。自分に合う人が魔力の色でわかるの」
「どういうこだよ」
「本当だよ。ノクスはね、真夜中の空みたいな深い青なの。ララの大好きな色」
ノクスは目を見開いて唖然としていた。
「お前、エロいことに興味持って男引っ掛けたんじゃ」
「なにそれ。ララ、えっちなことは好きだけど、そこまで奔放じゃない」
「俺はセフレなんだと…」
「…どうして。ララさっきもノクスに大好きって言ったよ」
何も伝わっていなかったの?と小さな声で告げると大きな瞳にみるみる大粒の雫が浮かび上がる。
ノクスはそれを見て慌ててステラの頭を撫でた。
「まて、泣くな」
「ノクスはララのことずっとセフレだと思ってたの?」
しかし既に手遅れで、ステラの瞳に溜まった涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。
「絶対いや。ノクスの一番じゃなきゃ絶対いや」
わああと泣き出したステラを見てノクスは珍しく慌てる。
強く抱きしめられて背中をポンポンと叩かれるととても心地よくて、でもそれが全て幻想に過ぎないと思うと辛くて、わんわんと泣いていたら急に頭がくらくらしてステラは倒れ込んだ。
◇◆◇◆◇◆
「落ち着いたか」
ステラはお風呂から上がると寝室のベッドの上で果実水を飲んでいた。
大泣きして騒いでいたらそのまま風呂場でのぼせてノクスに運び出されて今に至る。
「セフレに優しくしちゃいけないって叔母さんが言ってた。本気になっちゃうからって」
ステラはノクスにそう言いながらブーメランが突き刺さって非常に心が痛かった。
まさにその通りだ。本気になってしまった。
でも悪いのはノクスだけではない。
はっきり聞かなかったステラにも非はある。特に付き合おうとも、好きだと言い合って関係が始まったわけではない。
初めての行為を終えた後ノクスが関係を続けたがっていたから、経験の全くないステラは付き合うと言うことなのだと勝手に勘違いしただけなのだ。
ずっとステラの恋人だと思っていた人がただのセフレだったのかと思うと、心がぽっかり空いてしまったような虚無感に襲われてどうしようもなかった。
ステラのものだと思っていた優しさも温もりも全て幻想だったのだと思うと胸が痛くて、また目頭がじんわりと熱くなって瞳に雫が溜まり始める。
泣いたところで解決するわけではないのに悲しい気持ちは消えてくれなくて、ステラはまたポロポロと涙を流した。
手でゴシゴシと拭うとすぐにノクスに止められる。
「擦るな馬鹿。赤くなるだろ」
「いいもん。赤くなったって。ノクスもえっちができればそれでいいんでしょう」
ステラが告げるとノクスは途端に大きなため息をつく。
目が涙っていっぱいになって、こぼれ落ちそうになったところで強く引き寄せられた。
果実水の入ったグラスは取り上げられて、サイドテーブルによけられる。ノクスの大きな体に包み込まれてステラの胸がますます痛んだ。
この温もりはステラのものじゃない。そう思うだけで胸がとても痛くて、嫉妬で頭がおかしくなりそうだった。
「離して」
「いやだ」
「これ以上苦しめないで」
「こっちのセリフだ。どれだけ振り回せば気が済むんだ」
ステラは顔を上げた。
「お前の奇行のせいでセフレだとずっと勘違いしてた」
「奇行?ララ、ノクスに好きって言ってたよ」
「処女のくせに初対面の男を宿に引き摺り込むなんて奇行以外のなにものでもないだろ。その上関係をずるずる続けて、初めて会った日から好き好き連呼されたら上部が気に入ったんだと思うだろ」
「上部じゃない。全部好き。魔女は一目で全部わかるんだもん。それに好きって、ノクスにしか言った事ないよ」
「そりゃよかった」
ノクスは太々しく答えながらもどこか嬉しそうな顔していた。
「ノクスはセフレじゃない方がいいって思ってくれてたの?」
「じゃないとせっかくの休日に馬鹿みたいな強行スケジュールの魔獣討伐に付き合ったりしてねえよ」
「ノクスができるって言ったから」
「お前に言われたら断れないだろ」
ステラは言葉の意味を考えてノクスに尋ねた。
「ねえ、それってノクスもステラのこと好きってこと?」
「……まあ………すきだ」
「どのくらい好き?ララはノクスのこと大好…んっ」
それ以上はノクスが言わせてくれなかった。唇を奪われてステラが受け入れると口付けすぐに深くなって舌が絡み合う。
気持ちがやっと通じ合ったのだと思うと嬉しくて、ステラも積極的に舌を絡めて吐息を漏らした。
部屋の中に水音が響く。
やっぱり、ノクスとのキスは気持ちがいい。それはノクスも同じようで、ガウンの合わせにノクスの手が滑り込んで、ステラの豊満な胸がやわやわと揉まれる。
ツンと立った先っぽをいじられると気持ちよくて、声を漏らしながら足を擦り合わせると腹の奥からとろりとしたものがこぼれ出した。
もっと触ってとせがむようにノクスに引っ付くと硬くなったそれがお腹にあたる。
もう大きくなってる。
なんだかいつもより早い気がして、唇が離れると興味深そうにガウン越しのノクスの肉竿に触れた。
「いつもより興奮してる。セフレのララよりも興奮する?」
ノクスはステラの体に軽く腕を回して首筋に顔を埋めた。
「いつもは他の男とも同じ事をするのかと思ったら、興奮するほど萎えてたからな」
「他の人としたことないよ」
「一生するなよ」
強い口調ですかさず言われてステラはくすりと笑った。
「できないよ」
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