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9 かまってほしい ※
しおりを挟む2人はギルドや飲み屋がある繁華街に戻るとすぐに馬を借りていつも通り帰宅した。
ノクスは何事となかったかのように飄々としていたが、体が火照ってしまったステラにとってはノクスに抱き抱えられたまま馬で移動するのはそこそこ拷問だった。
悶々とする。
自宅に戻ったらどうノクスを誘惑しよう。頭の中はそのことでいっぱいで、自然とノクスの腕に自身の腕を絡めて、節くれだった指を細い指でにぎにぎする。
無意識に触れてくるステラに対してノクスは始終怖い顔をしていたが、振り解いたり拒む素振りは一切見せなかった。
ステラの家に2人で帰宅するともうすぐ日付を跨ぎそうな時間になっていた。お風呂に入って寝ればちょうどいいくらいの時間だ。
でもそれだけではステラの欲望は満たされない。さっきノクスは家に帰ったら相手をしてくれると言っていた。自室でラフなワンピースに着替えるとノクスがいる客間へと向かった。
軽くノックをして返事を待つ。
中から声が聞こえて、ステラは部屋に入るとソファに座るノクスに飛びついた。
「無闇矢鱈と抱きつくな。危ない」
「ごめんね。怪我しちゃった?魔女のステラが治してあげる」
「そう言ってこの前は媚薬を飲ませようとしたろ」
「大丈夫。今度はちゃんとしたお薬だすから」
「媚薬の次は惚れ薬か」
「ばれた?」
額を軽く小突かれてステラはくすくすと笑った。
ノクスはまだ服を着替えておらず刀の手入れをしていた。剣と汚れを拭き取る薄紙、闘剣用の油が机の上に置かれていた。
「偉いね。剣のお手入れして」
「明日、朝から任務で使うからな」
「どんな任務」
「ドラゴン討伐」
「物騒だね」
ちょっぴり心配になっているとノクスはステラの体をグイッと押し退けてすぐに剣をしまった。
「もうおしまい?」
「お前が側にいたら何が起きるかわからないからな」
「ララ、魔法は得意だけど剣は使えないよ」
ステラが重たそうな金属の塊をじっと見て答えるとノクスは鼻で笑った。
「だからだ。引っ掛けて怪我しかねないだろ」
「ひどい。ララそんなにドジっ子じゃない」
「雄兎の発情香を浴びかけたのは誰だ」
「う…」
ステラは俯いた。
ノクスは申し訳なさそうにするステラの頬を何も言わずに撫でる。
顔を上げると目があって唇が重なるかと期待したが、ノクスは思わせぶりな態度をとってその場に立ち上がった。
拍子抜けしたステラが座り込んでいるとノクスは上着を脱いでチェストの上に置く。寝衣やガウンを出してタオルを持って風呂場の方へと歩いていく。
「ノクス、どこに行くの」
「風呂」
そんなことはわかってる。確認するために聞いたわけじゃない。
剣の手入れが終わるのを大人しく終わるのを待っていたのに、また待たされるなんて聞いてない。
ステラは頬を膨らましてじっとノクスの方を見た。
「行っちゃダメ」
「どうして」
「どうしても」
次はララの番でしょ!と叫びそうになりながらステラはノクスの元へとパタパタと足音を慣らして近づくと服の裾を引っ張った。
「何だよ」
「わからないの」
「は?」
面倒臭そうな顔をしているノクスにステラはますます頬をぷううと膨らませて大きな声で告げた。
「ノクスに触られたせいで下着がびちゃびちゃで気持ち悪いの」
「おまえ」
「帰ったらって約束したよ。責任とって」
ノクスに抱きついて上目遣いで告げるとノクスは一瞬考えた後、ステラのことを見つめながら答えた。
「触れって強要したのはお前だろ」
「それは…そうだけど。でも触ったのはノクスだよ。それにその前から濡れてた。ノクスの扱いたらたくさん濡れちゃってた」
「お前には羞恥心がないのか」
「だってララは魔女だもん。魔女は多情だってノクスも知ってるでしょう。えっちなことしないと生きていけないの。ノクスはそんなララも全部ぜんぶ可愛いって言ってくれたよね。なんでダメなの。えっちなララはいや?」
ねえねえと喧しく尋ねられてノクスはしがみついてくるララを引き剥がす。
「そんなこと一言も言ってないだろう。風呂入って寝る準備したら相手してやるから、お前も自分の部屋でとっとと入ってこい」
軽くあしらうとステラはさらに怒った様子でノクスにしがみつく。
ぴーぴーと騒ぐステラが可愛らしくて、ノクスはわざと冷たく突き放し続けた。
可愛いのに虐めたい。
虐めたら可愛い顔をするからもっと虐めたくなる。
そんな循環に陥って、ステラをあしらっていると、とうとう我慢ならなくなったステラは着ていた服に手をかけた。
「もういいもん」
大きな瞳にうるうると雫をためると、おそらくノクスのために脱がせやすそうな物をと選んだのであろう、被るタイプのふんわりとしたワンピースをポンと脱いでその場に投げ捨てた。
肌色の面積が一気に増して、白いレースの下着に包まれたステラが現れる。
大きな胸とお尻がぎゅぎゅうに押し込められた刺激的な下着姿にノクスは目が釘付けになった。
大胆な格好で迫るつもりか、とノクスは若干期待しつつ身構えたが、ステラは服を脱ぎ捨てるとその場にぺたんと座り込んだ。
「動かない!もうここから動かないから。襲ってくれるまで絶対に動かない。据え膳食わぬは男の恥、ノクスは恥!」
プンプンと怒り始めるステラにノクスは苦笑した。
見た目は大人なのに考えることはまるで子供で、でもそれがまた可愛くて顔が緩む。
「えっちしたいの。ノクスとえっちしないと動けない」
騒ぐたびに胸がふるふる揺れて、女の子座りをしたせいで大きなお尻と肉感的な太ももが強調される。
顔は幼なくて、一つ一つの言葉も幼くて、なのに体だけは大人で。きっとこんな無防備な姿を見せるのはノクスの前だけだろうなと思うと妙に欲情した。
普通に迫られるよりもクるなと思いながらノクスはステラの目の前にしゃがんで顔を覗き込んだ。
「動かないよ」
拗ねる顔すらも好ましく見えて、ぐりぐりと頭を撫でる。
「んっ、なに」
ほんといつも振り回されてばかりだと、そう思いながらノクスはララの小さな体を抱き上げた。
「わっ…」
「こんなところで座り込んだら風邪引くだろう」
「どこ連れてくの」
ステラは突然体が浮き上がり手足をばたつかせる。
「風呂だ。こっちの風呂でもいいからとっとと入れ。体を冷やすな」
そう言われてステラは黙り込んだ。
拗ねたなと思いながらノクスが脱衣所で下ろすと相変わらずステラはちょこんとその場に座り込む。
「ほら拗ねないで立て」
「もう立てない」
「びしょびしょになったんだろ。責任取るから早く見せろ」
「…え」
手を引っ張られてその場に立たされるとノクスの方が屈んでステラの顔を見上げた。
「ほら、どこがどうなってるって」
そう尋ねながら垂れ目のノクスの瞳がステラのことを見つめる。
その目はノクスがステラに構ってくれる時の優しい目でステラはノクスの大きな手をぎゅっと握った。
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