白狼は森で恋を知る

かてきん

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第2章 白狼と秘密の練習

9*

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(なぜこんなことに。)

今、自分は恋人の自室のソファの上に座り、ズボンから自らを取り出し握っている。
向かいには、顔を赤くしながらもそれを凝視するミア。

こんなおかしい状況でありながら、昂りが治らない自分に呆れる。

ミアはガイアスがそれを上下に動かすのを、じっと見ては、時々質問をする。

「擦って痛くない?」
「ああ。大丈夫だ。」

「気持ちいい?」
「…ああ。」

「そうなんだ。」…ミアは小さく呟きながら、感心した様子でガイアスをじっと見ている。

ちゅこ…ちゅこ…

ガイアスの先走りが混ざった水音が部屋に響き、それに合わせて息も少し乱れている。

「…っ」

ミアは興味深そうに見ているが、少し心配そうな表情だ。

「…っん」

ガイアスの眉間にシワが寄る。
目は瞑って、その緑は見えない。

(ガイアス、苦しいのかな?気持ちいいのかな?)

ガイアスが薄く目をあけると、ミアに向かって掠れた声を出した。

「ミア…キスしてくれ。」

ミアが顔を少し傾けながら顔を近づけると、ガイアスが噛みつくように唇を奪う。

「……っあ」

びっくりするミアが身体を揺らすが、それを気遣う余裕が無いのだろう。空いている片方の手でミアの首の後ろを掴むと、口づけをより深くしていく。

「っはぁ……んっ…」
「んっ……ミア」

ガイアスは目をつぶり眉間に皺を寄せている。興奮しているようでキスの合間に零れる吐息が、はぁはぁ、と激しい。

(食べられそう…。)

ミアの口内を探りながら、ガイアスは徐々に自身を扱く手の動きを早くしていく。

「…ッ」

(そろそろか…。)

興奮が最高潮に達しそうな感覚とともに、ガイアスはその欲望を出すよう手を動かす。

「…っ!」

もう果てそうだ…と思った瞬間、ミアの手の平がガイアスの先端に触れた。

(ミア…?)

今触れた柔らかいものがミアの手であることを認識した途端、ガイアスは自分の頭に血が上るのを感じた。

目の前にある小さく赤い舌を吸いながら絡め、ミアの小さな手を掴むと、自身の先端に擦りつけるように導く。自分の手を重ねて何度か往復させるように動かすと、ガイアスはそのまま達した。

ビュクビュクと、普段の自慰の比でない量の精液が間隔を空けて鈴口から流れる。

ミアに触れられ果てたという事実がガイアスを興奮させ、ガイアスはまた貪るようにミアに口づけた。

「ん……ふっ…」

(ガイアス、すっごく興奮してるみたいだ…精液がこんなに…)

「……ッ…んぅ」

ちゅ…ちゅ…

散々ミアの口内を舌で犯していたガイアスは、落ち着いたのかそれをゆっくりとした動きに変え、最後にミアの唇を吸って離れた。

「ミア…好きだ。」

掠れた低い声で呟くように言うガイアスは、額が少し汗ばんでいる。

(か、かっこいい…。)

普段の落ち着いたガイアスとは違った姿に、ミアは胸がドキドキと高鳴り、自分のそれも少し反応しているのに気付いた。

(俺も出した方がいいのかな?でもやったことないから上手く出来ないかも。)

赤くなったミアは自分の手を見る。
そこにはガイアスの白いものがべっとりと付いていた。

「ミ、ミア!」

射精したばかりで惚けていたガイアスだったが、ミアの手に自分の残滓がたっぷりついていることを思い出し、慌てて名前を呼んだ。

「汚してしまってすまない。何か拭くものはあるか…?」

ミアはベッドサイドに歩いていくと、濡れたタオルの乗ったトレーを持って帰ってきた。

「これ使って。」

優秀な従者が用意しておいたのだろう、それを受け取ると、ガイアスは複雑な気持ちでミアの手をタオルで拭った。

(こうなることも予想していたのか…?)

鋭い従者のことだ、あり得る…と少し恥ずかしい思いで、別のタオルでガイアス自身についたソレを拭き取る。

「ガイアス、気持ちよかった?」

目の前にいるミアが問いかけてくる。ペタンと座った足の上にクッションを載せているため、ミアが今の行為に反応したかどうかは確認できない。

「ああ。…今までで一番。」
「え!一番?」

どこか嬉しそうに声を弾ませるミア。尻尾が後ろでふわふわと揺れている。
ガイアスが「一番だ。」と頷くと、さらに尻尾が左右に大きく揺れる。

「実はさ…」

目を逸らしながら、言いにくそうに話すミアに耳を傾ける。

「俺も…ちょっと興奮してるのかも。」

視線は外したまま、クッションをずらすミアの手元を見つめると、少し膨らんだミアのそれがズボンを控えめに押し上げていた。

「…。」
「あの、これってガイアスと同じ?」

黙っているガイアスに不安になったミアが、確認するように尋ねる。
ガイアスはゴクっと喉をならした。

「ああ、勃ってるな。俺と同じだ。」

ミアは、もじもじしながら目の前の男を上目遣いに見る。

「あの、これ出したほうがいいよね?…1人だと恥ずかしいからガイアスも付き合って。」
「…あぁ。……一緒にだな。」

ガイアスの声は上擦り、期待でドクドクと鳴っている。
こういう行為はまだ先になると思っていたため、ミアの身体の反応と言葉に感動すら覚える。

「もし嫌だと思ったら言うんだぞ。」
「…うん。」

ガイアスがミアの上着に手を掛けようと手を伸ばした時、


コンコン


部屋にノックの音が響く。

2人は、バッと扉を向くと、前向きに座り直す。そしてミアが素早く返事をする。

「はーい!」

「ミア?いる?」
「うん!入っていいよ。」

控え目な声が聞こえる。ミアは誰だか分かったようですぐに返事をして相手を迎え入れる。

入って来たのは、ミアのお披露目式で見た第二王子のリースだ。
リースはガイアスがいることに気づくと、2人に謝った。

「あ、ごめん!ガイアスさん来てたんだね!」

「父上と兄様に廊下で会ったから、てっきりもう送って行ったと思ってたんだ…」と続け、申し訳なさそうな表情だ。

「いや、部屋で休んでただけだから大丈夫だよ。」

「本当にごめんね。…あの、ガイアスさんこんにちは。ミアの弟のリースです。兄がいつもお世話になってます。」

リースは、最後にとミアに謝り、ガイアスの方を向くと挨拶をしてペコリと頭を下げた。

「ガイアス・ジャックウィルです。こちらこそお世話になってます。」

「かしこまった話し方でなくて大丈夫ですよ。これから仲良くしてください。」

右手を前に出して、にっこりと笑う姿はミアにそっくりだが、落ち着きのある上品な印象だ。

「分かった。俺にも不要だ。こちらこそよろしく頼む。」

2人の挨拶が終わったところで、リースがまたしても申し訳なさそうな顔をする。

「リース、何か用があったんじゃないの?」

「あ…ミアにちょっと話があったんだ。今日夜いいかな?」

「今話すといい。俺はもう帰るから。」
「え…。」

さっぱりと言うガイアスに、ミアが少し残念そうな声を出す。

「また明日も朝から会える。リース様を優先してくれ。」

クシャクシャとミアの頭を乱し、整えるように優しく撫でる。

「うん、明日泊まってもいい?」
「もちろん。」

リースに向き直り、「ちょっと送ってくるよ。」と言ってガイアスと消えるミア。

兄とその恋人の逢瀬を邪魔してしまった…と、まだ罪悪感の残るリースだった。
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