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第1章 白狼は恋を知る
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(緊張してずいぶん早く来ちゃった。)
ミアは森の入り口に立って、30分後に現れるであろうガイアスを待つことにした。
履きなれない黒いズボンに白いブラウスの裾を入れ、黒の薄手のジャケットを羽織っている自分の姿に違和感を感じる。
いつもゆったりとしたデザインの服を着ているせいか、体にフィットするこの服に多少むずむずとする。
尻尾と耳は石の力で見えないようになっており、触らない限りは狼だと分からない。
寒さに強い狼のミアは、めったに履かない靴下と靴を見下ろしながら、自分の恰好が変ではないか、心配になった。
(リースもイリヤも似合ってるって言ってくれたけど…。)
そわそわしていると、屋敷の方からガイアスが歩いてくるのが見えた。
まだ約束の5時まで15分はある。
「ミア!」
ミアに気づいて手を振ってくるガイアス。
黒いズボンに白いシャツ。上着は濃いグレーのニットで体にぴったりとしている。
靴は黒い革で、全体的に落ち着いた大人な装いだ。
「ガイアス!」
たたっ、と近寄るミアに手を広げ、その身体を抱きしめると、頭の上に軽くキスを落とすガイアス。
「ッえ…!」
「いつもと雰囲気が違うな。」
「あの…変かな?」
「素敵で目のやり場に困る。」
ミアの目の下を親指の腹で軽く撫でる。
(えええ~~~!ガイアスってこんな事言っちゃうの?!)
あわあわと動揺を隠せないミアに、ガイアスが、ふっ、と笑うと耳のない頭をじっと見る。
「前にも見せてもらったが、本当にどうやって消えてるんだ…。」
「不思議だけど便利だからいいや。」
「見えないけど、ちゃんとここにあるな。」
耳の端を摘まむように指で持ったガイアスに、ミアがピコピコとそれを動かして手から逃れようとする。
「お、逃げた逃げた。」
どこか嬉しそうに見えない耳を追いかけるガイアス。
「遊ぶなよな…あ、そろそろ街に行く?」
「ああ、そうしようか。」
言いながら、ガイアスが手に持っていたマフラーをミアに巻く。
「え、これ俺用だったのか?」
「夕方から少し冷えるからな。これを巻いたほうがいい。…というのは建前で、ミアの顔をあまり他の奴に見せたくないんだ。」
両手はそのままミアの首元に、ガイアスはそう言うと、照れたように横を向いた。
(か、可愛い…。)
ミアは高鳴る胸を押さえながら、不安に思った。
(俺の心臓、夜まで持つのか…?!)
街に降りてみると、色とりどりのキャンドルが道路横に並べられていた。大小さまざまで大きいものだと50センチはある。
「今日は街で一番盛り上がる祭の日なんだ。キャンドル祭と言って電気を使わずに過ごし、俺達の代まで文明を築いてくれた先人に感謝する。」
「へぇ~。」と言いながらミアがキョロキョロと周りを見渡す。
そんなミアが人々の横を通り過ぎると、必ずと言っていいほどみんながミアを二度見する。
「可愛いな。」「誰だあの美人。」と噂する声が聞こえる。
「あと少ししたら火が灯されるはずだ。」
「綺麗だろうなぁ~。楽しみ!」
「あぁ、俺もだ。」
ガイアスは少し態勢を下にすると、無防備なミアの手を下からすくうように握った。
「…あっ。」
「嫌だったか?」
「ううん…嬉しい。」
「そうか。」
ガイアスがミアの指の間に自身の指を絡めた。
手がより密着するこの繋ぎ方に、ミアは頭が沸騰しそうだった。
(なんか…すごく恋人っぽくないか…?ガイアス今日はいつもより積極的だ。)
顔が熱くなるのを冷ますため、手で仰ぐ仕草をするミア。
それを横目に見ながらガイアスも浮かれた様子で街を歩いた。
ガイアスが言っていたように、たくさんの屋台が並び賑わっている。
「一応、店を予約しているんだが、屋台で食べたいか?」
「予約?サンドウィッチは持ち帰り専門店って言ってなかった?」
「実は…ミアに内緒で違う店を押さえたんだ。もちろん変えることもできる。」
「ううん!そっちに行ってみたい。」
「俺の好きな店なんだ。特別な日によく祖父と行っていた。」
「誕生日とか?」
「当たりだ。」
(ガイアスが俺のために店を予約…!まさかそこで告白するのでは…。)
期待で顔がカッカとしてくる。
「予約までまだ時間があるし、少し店に寄っていいか?」
「うん、どこか行くの?」
「ああ、頼んでいた物が届いたと連絡があって。」
そう言うガイアスが向かったのは、まさかの宝石店だった。
「好きに見ていてくれ。受け取ってくる。」
そう言って店のカウンターで、上品な老紳士と話すガイアス。
チラッと視線を向けると、店主である紳士の申し出に軽く手を振り何かの申し出を断ったようだ。そして小さい箱を受け取り、そのままポケットへ入れた。
(これは…人間が渡し合うという指輪では…?)
リースと徹夜で、人間の愛の形について調べた時に得た知識だ。
人間は恋人や結婚の証として、身に着ける物を贈りあう習慣がある。
それは指輪であったり腕輪であったりと国や地域によって違いはあるが、ここサバル国では指輪がその証だ。
ミアが後ろから凝視しているとは知らないガイアス。
少し談笑していたが、店主の「ありがとうございました。」の声と同時にミアの元へ戻ってきた。
「待たせたな。」
「ううん、手ぶらだけどちゃんと受け取れたの?」
「ああ、自分用だから包装は断ったんだ。」
(嘘だな…。)
ミアは確信した。
(俺には分かる…。今のガイアスはサプライズを用意している男の顔だ!)
「そっかぁ~!」と少し大きめの声が出たが「ははは。」と笑ってごまかした。
「ここだ。」
ガイアスが予約していたというレストランは、いかにも記念日にぴったりといった特別な雰囲気のお店だった。
赤茶色の屋根と白いレンガ造りの外観は温かみがあり、店の横に立てられた白い看板のプレートには『ようこそ最高の日に』と書かれている。
窓からはぼんやりとした黄色い灯りがカーテン越しに映っており、中はどうだろうか、と期待をあおる。
わぁ~、と見上げるミアの手を引き、ガイアスは馴染みの店に慣れた様子で入っていく。
「おぅガイアス、よく来たな。」
「ああ、元気だったか?」
「元気すぎるくらいだ。久しぶりだな。」
「2年間遠征に行ってたからな。ここの味が恋しかったよ。」
「そうかそうか、今日はいっぱい食ってけ…って、ん?」
ガイアスの後ろにいるミアに気付いた店主は、のぞき込んでその美しさに驚いた。
「おいおい、こんな美人見たことないぞ…。というか、今日ここに連れて来てるってことは、ははーん…お前もすみにおねけぇな。」
「彼は俺の大切な人なんだ。今日はよろしく頼む。」
ボンッとミアの顔が火を噴いた。
「よ、よろしくお願いします。」
「おや、美人かと思ったら、可愛い子だったか~。真っ赤になっちゃって。」
まぁ、ゆっくりしていってくれ、と二階へ案内される。
2階の角。窓ガラスで囲まれた席を用意されると、店主から説明される。
「ここからメインの通りと、あっちに公園が見えるだろ?どっちもキャンドルが付いたら絶景だから、見て楽しむといい。」
「はい。」
「じゃあ、メニューが決まったら呼んでくれ。」
そういって去っていく店主は、一度振り向いてミアにウインクをして行った。
(なんだか明るい人だなぁ。)
「彼は祖父の友人で、昔から世話になってるんだ。ちょっとガサツなところがあるが、良い人だ。」
「うん、伝わってきたよ。」
「ミアは何が食べたい?」
メニューをミアの方へ向け、ガイアスが聞いてくる。
それをパラパラとめくっていたミアだったが、シーバ国にはない名前の料理ばかりでいまいちピンとこない。
「うーん、何が有名なの?」
「肉料理はすべて美味い。特に煮込みが絶品だ。」
「それがいい!他にもオススメある?名前からじゃ想像できなくて。」
「あぁ、分かった。」
ガイアスがメニューはミアに向けたまま、料理名に指を指しながら説明する。
「俺がよく頼むのは、この牛の煮込みと鳥のグリルだな。これに付いてるチーズソースが美味いんだ。あとは、マッシュポテトとベーコンをパンに付けて食べるこれも好きだな。そして、いつも箸休めにピクルスを頼む。あ、この海老の塩焼きもいいぞ。」
「どれも美味しそう。全部食べてみたいけど…多いかな?」
「量はどれもそんなに多くはないんだ。店主はああ見えて繊細な料理を出す。」
「ふふ、意外だね。」
「ここでいろんな料理を食べた俺のベスト5だ。ぜひミアに食べてほしい。」
「うん!」
注文を済ませ、最初に頼んでいたシャンパンで乾杯をする。
「今日は来てくれてありがとう。」
「こっちこそ誘ってくれてありがとう。」
その時、街の大通りに明かりが灯った。
いくつか大きなキャンドルがつくと、他のものにも次々と明かりがつき、あっという間に色とりどりの光でいっぱいになった。
「わぁ~!」
興奮した様子で身を乗り出し、外を眺めるミア。
さすが恋人向けの祭と言われるだけはある。
町中が優しい明りに包まれ、まるで別世界のようだ。
他のテーブルも、その明かりを静かに見ていたようだが、何人かの男達が相手に何かを渡す姿がちらほら見えた。貰った方は嬉しそうに頷いている。
(ここで俺も告白されるのか…。)
今から自分にも大きなイベントが待っているのだ。
そう思うとミアは期待で胸を膨らませた。
ミアは森の入り口に立って、30分後に現れるであろうガイアスを待つことにした。
履きなれない黒いズボンに白いブラウスの裾を入れ、黒の薄手のジャケットを羽織っている自分の姿に違和感を感じる。
いつもゆったりとしたデザインの服を着ているせいか、体にフィットするこの服に多少むずむずとする。
尻尾と耳は石の力で見えないようになっており、触らない限りは狼だと分からない。
寒さに強い狼のミアは、めったに履かない靴下と靴を見下ろしながら、自分の恰好が変ではないか、心配になった。
(リースもイリヤも似合ってるって言ってくれたけど…。)
そわそわしていると、屋敷の方からガイアスが歩いてくるのが見えた。
まだ約束の5時まで15分はある。
「ミア!」
ミアに気づいて手を振ってくるガイアス。
黒いズボンに白いシャツ。上着は濃いグレーのニットで体にぴったりとしている。
靴は黒い革で、全体的に落ち着いた大人な装いだ。
「ガイアス!」
たたっ、と近寄るミアに手を広げ、その身体を抱きしめると、頭の上に軽くキスを落とすガイアス。
「ッえ…!」
「いつもと雰囲気が違うな。」
「あの…変かな?」
「素敵で目のやり場に困る。」
ミアの目の下を親指の腹で軽く撫でる。
(えええ~~~!ガイアスってこんな事言っちゃうの?!)
あわあわと動揺を隠せないミアに、ガイアスが、ふっ、と笑うと耳のない頭をじっと見る。
「前にも見せてもらったが、本当にどうやって消えてるんだ…。」
「不思議だけど便利だからいいや。」
「見えないけど、ちゃんとここにあるな。」
耳の端を摘まむように指で持ったガイアスに、ミアがピコピコとそれを動かして手から逃れようとする。
「お、逃げた逃げた。」
どこか嬉しそうに見えない耳を追いかけるガイアス。
「遊ぶなよな…あ、そろそろ街に行く?」
「ああ、そうしようか。」
言いながら、ガイアスが手に持っていたマフラーをミアに巻く。
「え、これ俺用だったのか?」
「夕方から少し冷えるからな。これを巻いたほうがいい。…というのは建前で、ミアの顔をあまり他の奴に見せたくないんだ。」
両手はそのままミアの首元に、ガイアスはそう言うと、照れたように横を向いた。
(か、可愛い…。)
ミアは高鳴る胸を押さえながら、不安に思った。
(俺の心臓、夜まで持つのか…?!)
街に降りてみると、色とりどりのキャンドルが道路横に並べられていた。大小さまざまで大きいものだと50センチはある。
「今日は街で一番盛り上がる祭の日なんだ。キャンドル祭と言って電気を使わずに過ごし、俺達の代まで文明を築いてくれた先人に感謝する。」
「へぇ~。」と言いながらミアがキョロキョロと周りを見渡す。
そんなミアが人々の横を通り過ぎると、必ずと言っていいほどみんながミアを二度見する。
「可愛いな。」「誰だあの美人。」と噂する声が聞こえる。
「あと少ししたら火が灯されるはずだ。」
「綺麗だろうなぁ~。楽しみ!」
「あぁ、俺もだ。」
ガイアスは少し態勢を下にすると、無防備なミアの手を下からすくうように握った。
「…あっ。」
「嫌だったか?」
「ううん…嬉しい。」
「そうか。」
ガイアスがミアの指の間に自身の指を絡めた。
手がより密着するこの繋ぎ方に、ミアは頭が沸騰しそうだった。
(なんか…すごく恋人っぽくないか…?ガイアス今日はいつもより積極的だ。)
顔が熱くなるのを冷ますため、手で仰ぐ仕草をするミア。
それを横目に見ながらガイアスも浮かれた様子で街を歩いた。
ガイアスが言っていたように、たくさんの屋台が並び賑わっている。
「一応、店を予約しているんだが、屋台で食べたいか?」
「予約?サンドウィッチは持ち帰り専門店って言ってなかった?」
「実は…ミアに内緒で違う店を押さえたんだ。もちろん変えることもできる。」
「ううん!そっちに行ってみたい。」
「俺の好きな店なんだ。特別な日によく祖父と行っていた。」
「誕生日とか?」
「当たりだ。」
(ガイアスが俺のために店を予約…!まさかそこで告白するのでは…。)
期待で顔がカッカとしてくる。
「予約までまだ時間があるし、少し店に寄っていいか?」
「うん、どこか行くの?」
「ああ、頼んでいた物が届いたと連絡があって。」
そう言うガイアスが向かったのは、まさかの宝石店だった。
「好きに見ていてくれ。受け取ってくる。」
そう言って店のカウンターで、上品な老紳士と話すガイアス。
チラッと視線を向けると、店主である紳士の申し出に軽く手を振り何かの申し出を断ったようだ。そして小さい箱を受け取り、そのままポケットへ入れた。
(これは…人間が渡し合うという指輪では…?)
リースと徹夜で、人間の愛の形について調べた時に得た知識だ。
人間は恋人や結婚の証として、身に着ける物を贈りあう習慣がある。
それは指輪であったり腕輪であったりと国や地域によって違いはあるが、ここサバル国では指輪がその証だ。
ミアが後ろから凝視しているとは知らないガイアス。
少し談笑していたが、店主の「ありがとうございました。」の声と同時にミアの元へ戻ってきた。
「待たせたな。」
「ううん、手ぶらだけどちゃんと受け取れたの?」
「ああ、自分用だから包装は断ったんだ。」
(嘘だな…。)
ミアは確信した。
(俺には分かる…。今のガイアスはサプライズを用意している男の顔だ!)
「そっかぁ~!」と少し大きめの声が出たが「ははは。」と笑ってごまかした。
「ここだ。」
ガイアスが予約していたというレストランは、いかにも記念日にぴったりといった特別な雰囲気のお店だった。
赤茶色の屋根と白いレンガ造りの外観は温かみがあり、店の横に立てられた白い看板のプレートには『ようこそ最高の日に』と書かれている。
窓からはぼんやりとした黄色い灯りがカーテン越しに映っており、中はどうだろうか、と期待をあおる。
わぁ~、と見上げるミアの手を引き、ガイアスは馴染みの店に慣れた様子で入っていく。
「おぅガイアス、よく来たな。」
「ああ、元気だったか?」
「元気すぎるくらいだ。久しぶりだな。」
「2年間遠征に行ってたからな。ここの味が恋しかったよ。」
「そうかそうか、今日はいっぱい食ってけ…って、ん?」
ガイアスの後ろにいるミアに気付いた店主は、のぞき込んでその美しさに驚いた。
「おいおい、こんな美人見たことないぞ…。というか、今日ここに連れて来てるってことは、ははーん…お前もすみにおねけぇな。」
「彼は俺の大切な人なんだ。今日はよろしく頼む。」
ボンッとミアの顔が火を噴いた。
「よ、よろしくお願いします。」
「おや、美人かと思ったら、可愛い子だったか~。真っ赤になっちゃって。」
まぁ、ゆっくりしていってくれ、と二階へ案内される。
2階の角。窓ガラスで囲まれた席を用意されると、店主から説明される。
「ここからメインの通りと、あっちに公園が見えるだろ?どっちもキャンドルが付いたら絶景だから、見て楽しむといい。」
「はい。」
「じゃあ、メニューが決まったら呼んでくれ。」
そういって去っていく店主は、一度振り向いてミアにウインクをして行った。
(なんだか明るい人だなぁ。)
「彼は祖父の友人で、昔から世話になってるんだ。ちょっとガサツなところがあるが、良い人だ。」
「うん、伝わってきたよ。」
「ミアは何が食べたい?」
メニューをミアの方へ向け、ガイアスが聞いてくる。
それをパラパラとめくっていたミアだったが、シーバ国にはない名前の料理ばかりでいまいちピンとこない。
「うーん、何が有名なの?」
「肉料理はすべて美味い。特に煮込みが絶品だ。」
「それがいい!他にもオススメある?名前からじゃ想像できなくて。」
「あぁ、分かった。」
ガイアスがメニューはミアに向けたまま、料理名に指を指しながら説明する。
「俺がよく頼むのは、この牛の煮込みと鳥のグリルだな。これに付いてるチーズソースが美味いんだ。あとは、マッシュポテトとベーコンをパンに付けて食べるこれも好きだな。そして、いつも箸休めにピクルスを頼む。あ、この海老の塩焼きもいいぞ。」
「どれも美味しそう。全部食べてみたいけど…多いかな?」
「量はどれもそんなに多くはないんだ。店主はああ見えて繊細な料理を出す。」
「ふふ、意外だね。」
「ここでいろんな料理を食べた俺のベスト5だ。ぜひミアに食べてほしい。」
「うん!」
注文を済ませ、最初に頼んでいたシャンパンで乾杯をする。
「今日は来てくれてありがとう。」
「こっちこそ誘ってくれてありがとう。」
その時、街の大通りに明かりが灯った。
いくつか大きなキャンドルがつくと、他のものにも次々と明かりがつき、あっという間に色とりどりの光でいっぱいになった。
「わぁ~!」
興奮した様子で身を乗り出し、外を眺めるミア。
さすが恋人向けの祭と言われるだけはある。
町中が優しい明りに包まれ、まるで別世界のようだ。
他のテーブルも、その明かりを静かに見ていたようだが、何人かの男達が相手に何かを渡す姿がちらほら見えた。貰った方は嬉しそうに頷いている。
(ここで俺も告白されるのか…。)
今から自分にも大きなイベントが待っているのだ。
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