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-第5章- 小さな命と絆
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「アサヒ、おはよう」
「ん、イヴァ……ン。おはよ」
毎年恒例となった王子様イヴァンが俺を起こす。
薄く目を開けると、一年に一度しか見れないキラキラしたイヴァンが俺を抱きしめていた。
「誕生日おめでとう」
「ありがとう」
イヴァンがちゅっと瞼に口付け、俺はくすぐったくて笑いを零す。
「なんだ、朝からご機嫌だな」
「ふふ、嬉しくて」
俺は朝からイヴァンが張り切って祝おうとしてくれている気持ちが嬉しく、それを素直に伝えたのだが、イヴァンは違った捉え方をした。
「俺にキスされてそんなに嬉しいか」
いたずらっぽく笑い、顔中にキスをする。
「ち、違う。俺は、」
ちゅっちゅと音を立てて俺の顔にキスを落とすイヴァンに違うと言うが、聞く耳を持たない。
終わりの見えないキスは、俺のお腹が空腹で音を鳴らすまで続いた。
「お二人とも、朝から仲がよろしくて和みますね!」
「え、これ見て和む? 私は砂糖でも吐きそうよ」
俺の誕生日を初めて一緒に過ごすドロシーは、イヴァンが俺を横抱きにして食堂に登場したことで、「まぁ!」と歓声をあげた。
家族は毎年のことで慣れており、それには突っ込まず「おめでとう」と俺に祝いの言葉を贈ってくれた。
弟達は学校へ、ララとリリも母シータと共に教育係の元へ向かったという。
それから俺は、イヴァンに手ずからご飯を食べさせられた。楽しそうなイヴァンとは反対に、俺は降ろしてくれと何度も思った。
その後はイヴァンと手を繋いで庭を散歩する。
庭で遊んでいたコタロウが走ってきて、俺は二十歳の誕生日を思い出した。
「初めて会った時みたい。あの時のコタロウ、凄く小さかったよね」
「まだ生まれてそんなに経っていなかったからな。今も小さいが、あの頃よりは成長してるな」
イヴァンにわしわしと頭を撫でられ、嬉しそうにワンと鳴いている。
そして俺達が歩くと、後ろからトコトコとついてきた。
「今年は出掛けられなくて残念だ」
イヴァンは申し訳なさそうに少し俯く。
毎年誕生日には、イヴァンと二人きりで外に泊まるのが定番だ。しかし今年は大事な目的があるため、念の為に屋敷で過ごすことになっている。
一回目は森にあるコテージ、二回目は隣町の趣ある宿、三回目は海の見えるホテルで過ごした。
毎回俺が驚きそうな場所を考えてくれるイヴァンは、今年も何件か候補を考えていたようで、少し残念そうにしている。
「アサヒをいろんな所へ連れて行きたい」
「今年はもっと大事なことがあるだろ。屋敷で過ごすのも楽しそうだよ」
それに、既に豪華な船にお泊りしたことを忘れたのだろうか。あれで十分すぎるくらいだとイヴァンに伝えた。
それに今日は、家族皆で夕食時に祝ってもらえると聞いた。俺はそれを今から楽しみにしている。
「アサヒ、マッサージでもしようか」
「してくれるの? 嬉しいけど、疲れてない?」
イヴァンと俺以外は不在の為、今日は部屋でゆっくりと過ごすことになった。
ソファに座り、バスケの練習で足が少し筋肉痛だと話すと、イヴァンは俺にマッサージをすると提案してきた。
「疲れていない。さ、足を出してみろ」
ありがたく足を出してソファに寝ころんだ俺だったが、揉む位置が上に上がっていくと、イヴァンが手を止めた。
「イヴァン? どうし……、ねぇ」
半身を起こすと、イヴァンの大きなモノが明らかにズボンを押し上げていた。
「……夜までしない約束だよね」
「違う! 俺はそういう気持ちで足を揉んでいるわけじゃない!」
どこにも行けない代わりに、少しでも良い思いをしてもらおうと純粋に申し出たと言うイヴァンは、俺の少し引いた言葉に慌てる。
しかし、イヴァンがこうなるのも無理はない。俺達はこの一週間、一切そういう行為をしなかった。
セックスはもちろん、お互いを触ることもなく、夜はただ抱き合って眠るのみ。
また、深いキスで興奮してはいけないと、軽いキスのみで過ごすという徹底っぷりだ。
最低でも五回は出さないといけないのだ。下品な考えだが、俺達は今日の為に精を貯めていた。
「う……、足くらいなら良いと思ったが、」
イヴァンは自分のことであるにも関わらず、昂ったソレを複雑な目で見ている。
「今日は出来るだけ二人きりにならないようにしようよ」
「ああ、それがいいな」
俺達はくっついて座っていたソファから立ち上がると、気持ちを落ち着けるために部屋を出た。
「あさひ~!」
「たんじょうび、おめでとぉ!」
夕方になり、やっと教育の終わったララとリリが談話室に入ってくる。
結局、使用人達が常に出入りする談話室で過ごすことにした俺達は、本を読んだり居眠りをしたりと、のんびり自由に過ごした。
静かだった室内が急に明るい声でいっぱいになる。
俺の膝に座って「あのね~」と今日のことを話す二人は興奮した様子だ。
少しするとラウルとセズも部屋に入ってきて、お祝いの言葉をくれた。
「兄さん!誕生日おめでとう!」
「おめでとう!」
足早に近寄って来る弟達に「ありがとう」と返事をして、頭をポンポンと撫でる。
弟が全員揃い、談話室はさらに賑やかになった。
そして、家族全員での夕食も無事終わった。
皆がプレゼントを用意してくれていたが、アルダリだけは今年も「後で渡す」と言い、嫌な予感がする。今回も絶対にイヴァンが喜ぶ物だと確信していた。
これまでに貰った数々の夜のグッズを思い出す。
アルダリは、町へ視察に行った時にその土地で人気の『そういう』グッズを買ってくる。
ただ、一回目のプレゼントで貰った避妊具とローションだけは役に立っており、定期的に購入している。
避妊具も、元いた世界のコンドーム程薄くはないが、滑りを良くすれば問題なく使える。
ただ、これを使いたがらないイヴァンのために、もっと薄い商品は無いのか何度も店に手紙を書いた。
俺は今までは縁の無かったその手の商品の発展を、心から願っている自分におかしくなった。
「ん、イヴァ……ン。おはよ」
毎年恒例となった王子様イヴァンが俺を起こす。
薄く目を開けると、一年に一度しか見れないキラキラしたイヴァンが俺を抱きしめていた。
「誕生日おめでとう」
「ありがとう」
イヴァンがちゅっと瞼に口付け、俺はくすぐったくて笑いを零す。
「なんだ、朝からご機嫌だな」
「ふふ、嬉しくて」
俺は朝からイヴァンが張り切って祝おうとしてくれている気持ちが嬉しく、それを素直に伝えたのだが、イヴァンは違った捉え方をした。
「俺にキスされてそんなに嬉しいか」
いたずらっぽく笑い、顔中にキスをする。
「ち、違う。俺は、」
ちゅっちゅと音を立てて俺の顔にキスを落とすイヴァンに違うと言うが、聞く耳を持たない。
終わりの見えないキスは、俺のお腹が空腹で音を鳴らすまで続いた。
「お二人とも、朝から仲がよろしくて和みますね!」
「え、これ見て和む? 私は砂糖でも吐きそうよ」
俺の誕生日を初めて一緒に過ごすドロシーは、イヴァンが俺を横抱きにして食堂に登場したことで、「まぁ!」と歓声をあげた。
家族は毎年のことで慣れており、それには突っ込まず「おめでとう」と俺に祝いの言葉を贈ってくれた。
弟達は学校へ、ララとリリも母シータと共に教育係の元へ向かったという。
それから俺は、イヴァンに手ずからご飯を食べさせられた。楽しそうなイヴァンとは反対に、俺は降ろしてくれと何度も思った。
その後はイヴァンと手を繋いで庭を散歩する。
庭で遊んでいたコタロウが走ってきて、俺は二十歳の誕生日を思い出した。
「初めて会った時みたい。あの時のコタロウ、凄く小さかったよね」
「まだ生まれてそんなに経っていなかったからな。今も小さいが、あの頃よりは成長してるな」
イヴァンにわしわしと頭を撫でられ、嬉しそうにワンと鳴いている。
そして俺達が歩くと、後ろからトコトコとついてきた。
「今年は出掛けられなくて残念だ」
イヴァンは申し訳なさそうに少し俯く。
毎年誕生日には、イヴァンと二人きりで外に泊まるのが定番だ。しかし今年は大事な目的があるため、念の為に屋敷で過ごすことになっている。
一回目は森にあるコテージ、二回目は隣町の趣ある宿、三回目は海の見えるホテルで過ごした。
毎回俺が驚きそうな場所を考えてくれるイヴァンは、今年も何件か候補を考えていたようで、少し残念そうにしている。
「アサヒをいろんな所へ連れて行きたい」
「今年はもっと大事なことがあるだろ。屋敷で過ごすのも楽しそうだよ」
それに、既に豪華な船にお泊りしたことを忘れたのだろうか。あれで十分すぎるくらいだとイヴァンに伝えた。
それに今日は、家族皆で夕食時に祝ってもらえると聞いた。俺はそれを今から楽しみにしている。
「アサヒ、マッサージでもしようか」
「してくれるの? 嬉しいけど、疲れてない?」
イヴァンと俺以外は不在の為、今日は部屋でゆっくりと過ごすことになった。
ソファに座り、バスケの練習で足が少し筋肉痛だと話すと、イヴァンは俺にマッサージをすると提案してきた。
「疲れていない。さ、足を出してみろ」
ありがたく足を出してソファに寝ころんだ俺だったが、揉む位置が上に上がっていくと、イヴァンが手を止めた。
「イヴァン? どうし……、ねぇ」
半身を起こすと、イヴァンの大きなモノが明らかにズボンを押し上げていた。
「……夜までしない約束だよね」
「違う! 俺はそういう気持ちで足を揉んでいるわけじゃない!」
どこにも行けない代わりに、少しでも良い思いをしてもらおうと純粋に申し出たと言うイヴァンは、俺の少し引いた言葉に慌てる。
しかし、イヴァンがこうなるのも無理はない。俺達はこの一週間、一切そういう行為をしなかった。
セックスはもちろん、お互いを触ることもなく、夜はただ抱き合って眠るのみ。
また、深いキスで興奮してはいけないと、軽いキスのみで過ごすという徹底っぷりだ。
最低でも五回は出さないといけないのだ。下品な考えだが、俺達は今日の為に精を貯めていた。
「う……、足くらいなら良いと思ったが、」
イヴァンは自分のことであるにも関わらず、昂ったソレを複雑な目で見ている。
「今日は出来るだけ二人きりにならないようにしようよ」
「ああ、それがいいな」
俺達はくっついて座っていたソファから立ち上がると、気持ちを落ち着けるために部屋を出た。
「あさひ~!」
「たんじょうび、おめでとぉ!」
夕方になり、やっと教育の終わったララとリリが談話室に入ってくる。
結局、使用人達が常に出入りする談話室で過ごすことにした俺達は、本を読んだり居眠りをしたりと、のんびり自由に過ごした。
静かだった室内が急に明るい声でいっぱいになる。
俺の膝に座って「あのね~」と今日のことを話す二人は興奮した様子だ。
少しするとラウルとセズも部屋に入ってきて、お祝いの言葉をくれた。
「兄さん!誕生日おめでとう!」
「おめでとう!」
足早に近寄って来る弟達に「ありがとう」と返事をして、頭をポンポンと撫でる。
弟が全員揃い、談話室はさらに賑やかになった。
そして、家族全員での夕食も無事終わった。
皆がプレゼントを用意してくれていたが、アルダリだけは今年も「後で渡す」と言い、嫌な予感がする。今回も絶対にイヴァンが喜ぶ物だと確信していた。
これまでに貰った数々の夜のグッズを思い出す。
アルダリは、町へ視察に行った時にその土地で人気の『そういう』グッズを買ってくる。
ただ、一回目のプレゼントで貰った避妊具とローションだけは役に立っており、定期的に購入している。
避妊具も、元いた世界のコンドーム程薄くはないが、滑りを良くすれば問題なく使える。
ただ、これを使いたがらないイヴァンのために、もっと薄い商品は無いのか何度も店に手紙を書いた。
俺は今までは縁の無かったその手の商品の発展を、心から願っている自分におかしくなった。
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