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-第3章- 王の誕生祭と真実

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 それから一ヶ月が過ぎ、俺達は町で仕事を再開した。
 帰ってきたばかりの数日は、屋敷の人々に心配され、しばらくは部屋から出させて貰えず過保護な扱いを受けた。しかし今ではすっかりイヴァンのアシスタントとして各地へ出向いている。
 今日も別の町での視察を終え、ホテルに宿泊しているのだが、イヴァンはお風呂から上がりベッドに入ると、俺のおでこに口づけた後、明かりを消して眠ろうとする。
「おやすみ、アサヒ」
 王都から帰った日から、イヴァンは性的なスキンシップを一切しなくなったのだ。
 軽いキスをすることはあるが、それ以上は何もせず、夜も一緒に抱き合って眠るのみ。
 俺も深く考える前に眠ってしまっていたが、そんな日が何日も過ぎ、イヴァンの行動に疑問を感じ始めた。
 だって変態なイヴァンが、一切そういうことしないなんて変だ……
 おかしいと思いながらも、イヴァンに抱きしめられる形で今日も目を瞑る。
 どういうつもりなのかとしばらく考えていたところ、イヴァンが俺の後ろでモゾモゾと動いた。それに気づかないフリを続ける。
 目を瞑り、気配で様子を確認していると、イヴァンが布団から出ようとしていた。
「……何してるの?」
「アサヒ?」
 寝ていると思っていた俺が、いきなり声を掛けたことで驚いたようだ。
 息を飲む音がする。
「起きてたのか」
「うん。なんで布団から出るの?」
 以前、俺の住んでいたあばら家でも同じことがあった。
 その時のイヴァンは自分の欲望を吐き出すために家から出ていこうとしていたのだ。
 ベッドサイドの明かりを付けてみると、寝間着の上からでも分かるくらいイヴァンのモノが勃ち上がっていた。
「アサヒ、その……」
「一人でするの?」
 俺の言葉に少し躊躇いながらも頷くイヴァンだが、どう考えても『セックスしたい』というのを隠している。
「俺がいるのに?」
 俺は、なぜ自分とそういう行為をしないのか尋ねた。
「あんなことがあったばかりだ。傷ついたアサヒを怖がらせたくはない」
 一か月前のディルの件を言っているのだろう。
 あれに関しては、押し倒されたくらいで何もされてはいないと伝えている。
 そもそも、恋人に手を出されて怖いとは思わない。
 イヴァンは俺の心が繊細だと勘違いしているようだが、俺は過ぎたことなので気にしていなかった。
 むしろ、あの事件が解決して以来は夢遊病に悩まされることもなく、そのことを嬉しく思い喜んでいたほどだ。
「イヴァン、俺なんともないよ」
「しかし……」
 俺を傷つけそうで怖いと食い下がる言葉に、はぁ……と溜息をつく。
「じゃあイヴァンからは触らないでね」
 俺はそれを約束させると、硬く引き締まったお腹の上に跨る。
 謎の理由で俺と触れ合わなかったイヴァンには、少し反省してもらう必要があるな。
「アサヒ……?」
「俺が気持ちよくするから、触っちゃ駄目だよ」

 じゅっ、じゅ……
 イヴァンの硬くなったモノを口に含み舌を絡める。
 そして入りきらない部分は、射精を促すように手で強く擦り上げていく。
「は……、アサヒ」
 俺の名前を呼びながら、興奮した様子で頭を撫でてくるイヴァンの顔を窺う。
 俺を見下ろす茶色の瞳と目が合うと、口の中のモノがビクッと震えた。
 それに気づかぬフリをして、ぬめりを加えようと口を離し、唾液を先端に垂らす。
「…くっ……」
 イヴァンが堪らないといった風に軽く腰を揺すった。
 俺の舌に先端が軽く当たる。
「イヴァン、動いたら駄目だよ」
「……だがッ、」
 ギラギラした目をしながら、俺の言うことを大人しく聞いて動きを無理やり止めるイヴァン。
 よしよしと熱い先端を指で撫でると、さらにグンと大きくなった。
「俺も一緒にするね」
 一か月触れていなかったのだ。
 それまでは毎日のように触れ合っていた習慣が急に無くなったとあって、俺も物足りなさを感じていた。
 イヴァンのモノを舐めながら自身も固くなっているのが分かっていた俺は、寝間着のズボンを脱いで跨り、足を左右に開く。
「アサヒ……」
 そのまま、驚いているイヴァンのモノを握ると、自分のと合わせて両手で扱く。
 硬いイヴァンのモノが裏スジに擦れて、その気持ち良さに思わず声が漏れた。
「ん……あぁ、」
「……っ、」
 イヴァンの顔を覗くと、眉を寄せながら俺を見ている。
 吐息を漏らしている姿に、もうすぐ限界なのだと分かった。そのままぐりぐりとお互いを擦りながら上下に扱き続ける。
「はぁ…気持ちぃ……」
「…ッく……!」
 俺が小さく呟いた瞬間、イヴァンが身体を震わせ、白濁を吐き出した。ぬめった熱い精液が俺のお腹に掛かる。
「まだ勃ってるね」
 はぁ、はぁ、と息の乱れたイヴァンの瞳は熱を持っている。その眼には『挿れたい』とはっきり書いてあり、俺は少し笑って自分の後ろへ手を伸ばす。
 つぷ……っ
 指を入れ、イヴァンを受け入れるためにほぐしていく。
 自分の細い指では気持ちの良いところに当たらず、ただの作業でしかない。
 眉を寄せながらぐちゅぐちゅと中をほぐしていると、イヴァンが掠れた声で問いかけてくる。
「……約束を、破っていいか?」
 手はすでに俺の竿に掛けられている。
 少し悩んだが、俺も気持ちよくなりたいという気持ちでいっぱいになっており、頑固になってもしょうがない。
「うん、もう触っていいよ」
 俺が言ったのを合図に、イヴァンが俺のモノを緩く扱きだす。自分とは違う大きな手に包まれて、それだけで限界を迎えそうだ。
 俺は必死にイヴァンの名前を呼ぶ。
「イヴァン、…あ、後ろもッ、触って……」
 腰を上げるとイヴァンの喉がゴクリと上下した。指が俺の後ろへ回り、つぷっと一本、根元まで差し込まれる。
「ああぁッ……!」
 長い指が気持ちの良い部分を直接刺激し、足が震えた。
 イヴァンはそのまま抜き差しを繰り返し、さらに指を増やしていく。
「はぁ……柔らかくなったな」
 息を漏らしながらイヴァンが満足そうに俺の身体を見る。
 じっくりと中をいじられて、達しそうになるのを寸止めされて、俺はもう挿れてほしくて堪らなかった。
「イヴァン、もう欲しいよ……」
「よしよし、今挿れてやるからな」
 すっかり元の少し意地悪な男に戻ったイヴァンが、俺の尻を撫でてくる。
 仰向けになっているイヴァンは、上に座る俺の腰を浮かせて、窄まりに自分のそそり立ったモノをあてがった。
「ん、入って、くる……ッ」
 イヴァンは俺の腰を掴んでゆっくりと下へ降ろした。
 ずぷ……っ
「あああッ、」
 ゆっくりではあるが確実に中を進んでくる熱さに、頭が真っ白になる。
 全部入るまで残りあと数センチのところで、イヴァンが俺の中で一際狭い部分に差し掛かった。
 もう少し……
 俺は体重を掛けて腰を落とすが、イヴァンがそれを阻む。
「……アサヒ、これ以上は無理だ」
「ん、大丈夫」
 まだイヴァンの全てを受け入れたことはない。
 優しい恋人はわがままなようでいて、いつも俺を気遣いながら抱いてくれている。
 その気持ちは嬉しいが、もっと奥で俺を感じてほしい。
 ぐっと腰を下げる俺に、イヴァンが負けて手を緩める。その瞬間、パチュンと太ももがぶつかる音がして俺の中にイヴァンの全てが埋まった。
「やぁぁ、ッ!」
「……くッ、」
 俺は大きな声を上げ、喉を反らせて上を向く。
 目の前は白くチカチカとしており、何も考えられない。
 意識のぼんやりとした中、身体だけは敏感に快感を捉え、ぎゅっぎゅっとイヴァンのモノを締め付ける。
「っ……アサヒ、大丈夫か?」
 動かずに俺を心配するイヴァン。
 その声に思考がはっきりとしてきた俺は、そのまま腰を前後に軽く揺らしてみる。
「あ、あ、……ッ」
 ゴリゴリと奥が抉られる刺激に、声が漏れるのを止められない。
「全部……入っちゃったぁ、」
 確かめるように繋がっている部分を指で撫でる。
 すると、じっと耐えていたイヴァンが、俺の腰を強く掴みグッと下から突き上げる。
「ッはぁ! ぁぁんッ…!」
 グポッと奥の奥までこじ開けられた感覚に襲われる。
 入ってはいけない部分なのではないかと心配になるが、すぐに気持ち良さが訪れ、快感に喘ぐことしかできない。

「アサヒ……、アサヒ、」
 腰を奥へ擦りつけるように動かされ、俺は自身が痛いほど張りつめているのに気付いた。
「あ、あ、いく……出るぅッ」
「出せ。奥で気持ちよくなって出すんだ」
 身体を上下に激しく動かされる。
 そしてイヴァンの先端が最奥を突いた瞬間、俺は身体を震わせて欲望を吐き出した。
「あ、あぅ……っ」
 俺の開いたままの口から涎が垂れる。
 イヴァンはそんな俺をぐいっと引き寄せると、唇に吸い付いた。そのまま音を立てて舌を吸う。
「んぅ、ん……」
 キスの気持ちよさにふわふわと浸っていたが、イヴァンが俺を強く抱きしめ、ぐりぐりと下から中を擦った。
「あ、俺イッた、からぁ、待って……ッ」
「すまないっ……!」
 余裕のない声で謝ったイヴァンが、また舌を口内に差し込んでくる。
 腰の動きはそのままに、射精するために腰の動きを速めていった。
「ん、んむ、ん……!」
 口が塞がれ、くぐもった声が漏れる。
「アサヒ、」
 名前を呼んだと同時に、ビクビクと中でイヴァンのモノが震える。そしてズルッと抜け出ると、俺のお腹に自身を擦り付けて果てていった。

「久しぶりだったね」
「はぁ……最高だった。明日もしたい」
 風呂に入り軽く汗を流してからベッドに寝転がる。
「今日のアサヒは大胆で可愛かった」
 イヴァンはすっかり前の調子に戻っており、頬を緩ませている。
「あのさ、イヴァンは俺のこと繊細だと思ってるんだろうけど、けっこう図太いんだよ」
 だから気にしすぎないでほしいと目を見ながら言うと、イヴァンは嬉しそうに笑った。
「そうか」
 その笑顔を見ていると、喜ばせたついでにイヴァンの知らない情報も教えようという気になった。
「俺、帰ってから毎日準備してたんだからな」
 いつイヴァンが『したい』と言ってきても良いように、俺は常に後ろの準備をしていたのだ。
 結構大変であるにも関わらず手を出さないイヴァンに、拗ねた態度で告げる。
「アサヒ」
 真剣な声で名前を呼ぶイヴァンの顔を見ると、その目はまたギラギラとしている。
 嫌な予感がして、とっさに距離を取ろうと後ろへ下がる俺の腕をイヴァンが掴んだ。
「また勃った」
「……ちょ、今日はもう無理だって」
 俺は焦った声で無理だと言うが、じりじりと距離を詰めてくるイヴァン。
 その後も攻防が続いたが、ベッドの壁側に追いやられてしまい、逃げられないと確信した俺は観念して、近づいてくる唇を受け入れた。

 ◇◇◇◇◇

 あれから何日か経ったある日、寝る前に本を読んでいた俺の部屋にイヴァンがやってきた。
「ん? もう寝る?」
 少し早い時間だが、疲れたのだろうか。
 本を閉じてベッドを整える俺に、イヴァンはご機嫌な声で話しかけてきた。
「アサヒ、寝る前に少しついて来てくれ」
「うん、いいよ」
 イヴァンに言われて部屋を共に出る。
 今夜は雲も出ておらず、てっきり星でも見るのかと思っていたが、連れていかれたのは俺の隣の部屋。
 ここは本来なら子ども部屋として作られたものだが、何も置かれていないため、俺がダンスの練習をするのに使っていた。
「入ってくれ」
 先に入るよう言われ、恐る恐る部屋へ入る。
 そろりと足を踏み出す俺にイヴァンが続き、部屋の明かりが付けられた。
「えっ! これって……!」
 俺は目を見開く。
 目の前には、懐かしいふかふかの白いモノ。
 それは、俺が自分で稼いだお金で初めて手に入れた布団だった。
「……なんでここに?」
 近づいて触ってみると、あの家にあった時よりふかふか具合が増していて気持ち良い。ずっと使ってよれていた布団の端や表面も真っ白で奇麗な状態だ。
「びっくりしたか?」
 してやったりといった顔で俺を見下ろすイヴァン。俺は素直に感想を述べる。
「うん。俺の大事なものだったから、すっごく嬉しい!」
 感情が高ぶってイヴァンに抱き着く。その背をよしよしと撫でながら、イヴァンも嬉しそうに笑った。
「なんで、これがこの屋敷にあるの?」
「俺達が森を出発した後、すぐに回収の手配をしたんだ」
 俺達が森を出てすぐ、イヴァンは使いの者に連絡を入れたらしい。
 それから布団を綺麗にするために隣町にあるクリーニング店に出し、最近ようやく返ってきたとのことだった。
 それで買ったときよりふわふわなのか。
 さすがはプロだ。前でも十分寝心地は良かったが、今はこの屋敷の布団にも劣らない柔らかさだ。
「寝てみたらどうだ」
「うん!」
 お言葉に甘えて布団の中に入ってみる。
「わぁ~、久しぶりだなぁ……この感じ」
 表面を撫でながら久々の再会を懐かしむ。
「こっち来て」
 立ったまま微笑ましく見ているイヴァンを手招きすると、端をめくって大きな身体を迎え入れる。
「いいのか? 水入らずのところを邪魔して」
「イヴァンもお世話になっただろ」
 その言い方がおかしく、笑いながら答える。
「俺達が初めて愛し合ったのも、この布団だったな」
 感慨深い……と呟くイヴァンに枕をぶつける。
「うぷっ……!」
「何言ってんだよ!」
 すぐにいやらしい方に話を持っていくんだから。
「本当のことだ。俺が紳士的に外で自慰をしようとしたのを止めたのはアサ……ッんむっ……!」
 注意したにも関わらず続けるイヴァンの顔に、枕を強く押し付けた。

 それからしばらくじゃれていた俺達だったが、笑い疲れて仰向けで寝転ぶ。掛け布団は遠くに飛ばされており、投げ合った枕はお互いの足元にある。
「ふふ。はぁ……疲れた」
「アサヒが暴れるから、布団が可哀想なことになったぞ」
 俺はまた笑えてきて、ふふふ……と声を漏らす。
 ツボに入って笑い続ける俺を見て、イヴァンは幸せそうに目を細める。
「初めてアサヒの笑顔を見た時、好きだと思ったんだ」
 急に言われて、笑っていた俺の表情が固まる。
 イヴァンは俺の頬を優しく撫でると、初めて森に来た時のことを話しだした。
 初めて会った日、一緒に眠った俺がしがみついてきて可愛いと感じた。
 自分では、妹や甥っ子達と俺を重ねているのだと思っていたが、隣で眠る無防備な姿に愛しさを感じたと語る。
 そして町に降りる時に見た笑顔と、その後の涙を見て『好きだと確信した』と言う。
「早くない⁈ まだ出会って二日しか経ってないのに」
「一目惚れってやつだ。まぁ、それから一緒に住んで、素直な性格とか、一生懸命な姿を見てさらに好きになったんだがな。そして、アサヒとずっと一緒にいたいと思うようになったんだ」
「イヴァン……」
 真っすぐな言葉が恥ずかしくて、顔が真っ赤になる。
「好きだ」
 うつむく俺のおでこを愛おしそうに撫でるイヴァンに改めて告げられた。
「俺も、好きだよ」
 イヴァンを好きだと思ったのは、いつからなのか明確には分からない。気づいたら側に居るのが当たり前で、離れるかもしれなくなった時には、絶対に嫌だと強く思った。
 あの森でイヴァンに見つけてもらえて、今こうして同じ布団で寝ていることを幸せに思う。
 控えめに身体を寄せると、大きな胸に顔を埋める。
「今日はここで寝ようか」
「うん!」
 イヴァンの提案に、俺は元気に返事をして大きな身体をぎゅっと抱きしめる。

 俺達はあの森で過ごした日々を思い返しながら、幸せな思いを胸に眠りについた。



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第4章に続きます。

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詳細はpixivのお品書きにてご確認いただけたらと思います。

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