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その瞬間、今まで微動だにしていなかったつば広帽の女が言葉を発した。
「ここはそろそろ終わりよ、次に行きましょう」
勇者は、目が覚めたようにきょろきょろと周囲を見渡すと、女に向かって深くうなずいた。
勇者が階段を降り始めると、一行も荷物を持ち、群衆の脇で待機していた数頭の馬と馬車の方へと向かいだした。
いや、今を逃したらいけない。そう頭の中でささやく声がした。
「待った。どこへ行くつもりだ」
勇者はゆっくりと振り返り、さっきの苦しそうな表情に戻った。
「次のクエストだ」
やっと答えてくれた。
続けてたずねる。
「何のために、どうやってこの世界に来たんだ」
とたんに、勇者の後ろにいた少年が、騒々しく声をあげた。
「さっさと馬に乗った、乗った」
思わず少年の肩をつかんで叫んだ。
「今、話をしようとしているところだ」
少年はこちらを振り向いた。でも、その目は自分を見ていない。中空に向けられている。
「勇者と話をさせろ」
そう言ってみた。
少年の目が、心なしかこちらを向いた気がした。ところが……。
「さっさと馬に乗った、乗った」
会話にならない。
そうこうするうち、勇者はすでに馬にまたがっていた。
「あ、待て」
力が抜けた瞬間、少年はするりと駆け出して、馬車に飛び乗った。
「ここはそろそろ終わりよ、次に行きましょう」
勇者は、目が覚めたようにきょろきょろと周囲を見渡すと、女に向かって深くうなずいた。
勇者が階段を降り始めると、一行も荷物を持ち、群衆の脇で待機していた数頭の馬と馬車の方へと向かいだした。
いや、今を逃したらいけない。そう頭の中でささやく声がした。
「待った。どこへ行くつもりだ」
勇者はゆっくりと振り返り、さっきの苦しそうな表情に戻った。
「次のクエストだ」
やっと答えてくれた。
続けてたずねる。
「何のために、どうやってこの世界に来たんだ」
とたんに、勇者の後ろにいた少年が、騒々しく声をあげた。
「さっさと馬に乗った、乗った」
思わず少年の肩をつかんで叫んだ。
「今、話をしようとしているところだ」
少年はこちらを振り向いた。でも、その目は自分を見ていない。中空に向けられている。
「勇者と話をさせろ」
そう言ってみた。
少年の目が、心なしかこちらを向いた気がした。ところが……。
「さっさと馬に乗った、乗った」
会話にならない。
そうこうするうち、勇者はすでに馬にまたがっていた。
「あ、待て」
力が抜けた瞬間、少年はするりと駆け出して、馬車に飛び乗った。
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