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抵抗勢力 1
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ギルド会館では、興奮冷めやらない冒険者達が今日起きた出来事を話していた。
せっかく帰って来たのに誰も自分に気づいてくれないのを、クリスは少し寂しく思いながらカウンターで姿勢よく立つ受付嬢の元へと足を進めた。
「やあ、リリ。久しぶり、相変わらず綺麗な立ち姿だな」と、カウンター越しからリリのミニスカートから除く細くて白い脚をまじまじと見た。
「わぁ、クリス様。お帰りなさいませ。褒めてくださるのは嬉しいのですが・・・、帰って来て早々に私の脚を見つめるのは、やめてもらえませんか。恥ずかしいですよ」
「悪い、あまりにも綺麗だったから久しぶりに見とれてしまったよ。それより、館長室に行きたいんだが、良いか?」
「はい、館長でしたらお部屋に居ますのでお連れ様もご一緒にどうぞ」
「ありがとう」
笑顔を見せながら軽くお辞儀したリリの脚をミツヤは無意識に見てしまった。あまりにもクリスが褒めるので、ついつい目が行ってしまったのだ。その姿を見たサーシャは、急に腹立たしくなりミツヤの腕を引っ張った。
「うわぁ、急に引っ張って・・・。どうしたんですか、サーシャさん?」
「ふん! 何でもないです。早く付いて行かないと置いてかれますよ」
仲良くじゃれ合うサーシャとミツヤは、急に立ち止まったクリスの背中に顔をぶつけてしまった。
「うっ、すいません(ごめんなさい)」
「おっと、二人とも大丈夫か」
「急に立ち止まったから・・・、ここが館長室ですか?」
「そうだ、まあ、館長は俺の叔父だから遠慮しなくて良いよ」
そう話すとクリスは、ドアをノックし部屋の中からの返答を待たずにドアを開けた。
「やっと、帰って来たか。随分長い旅だったな」、デスクワークをしていたスライブは手を止め立ち上がる。
「相変わらず忙しそうだな、お・じ・さ・ん」
「ふん、からかうな。お前に叔父さんと呼ばれるほど年は取っていないと何時も言っているだろう。それにしても、ミツヤ以外に客を連れて帰って来るとはお前らしくないな」
「彼女達は、客じゃないよ。サーシャとシルクは俺の新しい仲間だ」
「まあ、良い。お茶を用意させるから、みんな座りなさい」
言われる通り全員がソファに座ると、スライブはリリを呼びお茶を持ってくるよう頼んだ。
「あの、その節はお世話になり有り難うございました」
「いや、君が無事クリスに会えて良かったよ。あの時と比べると随分と表情が変わったな」
「はい、ダンディルグ王国でクリスさんや新しい仲間に出会う事が出来て。今までの迷いが無くなりましたから」
「そうか、それよりミツヤを差し出せと外で居座っていたグランベルノ軍を追い払ったのは、お前達だろ。おかげで助かったよ」
「ああ、攻め込まれる前に辿り着けて良かったよ。まあ、ドラゴンの腹をかち割るより簡単だったけどな」と、クリスは含みを持たせた。
「な、何を言っているんだ。お前、まさか、モーガンから何か聞いたのか」
「ははは、やっぱりモーガンの話しは本当だったんだ。スライブの昔話で盛り上がってね。色々と闇歴史を聞いたよ」
「はあー、よりによってお前に知られるとはな」と、話す割にスライブは残念そうな顔をしていなかった。むしろ、嬉しそうにしていた。
「館長は、師匠を知っているのですか」
「サーシャだったね。そうだ、若い頃にモーガンと一緒に冒険の旅をした事があってね。今では良い思い出ばかりだよ。しかし、あのモーガンが弟子を取るとは驚きだよ」
「そうなんだ。サーシャは、特別なのか?」
スライブとクリスの会話にサーシャは、言い難そうに頬を指で掻いた。
「えーとですね、弟子は私一人だけです。弟子にしてくれた理由が、何と言うか・・・そのー」
「そう言う事か、良いよ。おおよそ想像できるよ。モーガンの事だから君には気まぐれで弟子に取ったとでも言っているんだろう」
「は、はい。その通りです」と、言い当てたスライブを不思議そうにサーシャは見つめた。
「本当の事を教えて上げよう。その代わり、モーガンには絶対に内緒にして欲しい。後が怖いからな」
「本当の事ですか。絶対に師匠には言いませんから、教えてください」
真実を知りたいサーシャは、両手を握りしめ身を乗り出した。
「君が純粋な者だからだよ。昔、彼から直接聞いた事がある。魔法は、誰にでも簡単に教えられる代物ではない。とにかく危険だとね。だからこそ純粋な心を持ち、魔法の力を恐れる者しか弟子に取らないと話していたよ」
「純粋な心と恐れですか・・・」
「そうだよ、君なら決して魔法を悪用しないと見込んだから弟子にしたんだろう」
「でも、力に対する恐れはありますが、私は純粋な心を持っていると思えません。皆さんと同じ様に邪な思いだってあるはずだし・・・」
「恨み、妬み、嫉妬・・・、それらを意味している訳じゃないんだ。モーガンいわく、悪に染まらない心だそうだ。決して闇に落ちない心の持ち主は、ほとんど存在しないらしいが、君はその数少ない存在の一人なんだろうね」
黙ったまま自分の両手を見るサーシャは、涙をこぼした。
気まぐれだと聞かされていたのに、本当は師匠が見込んでくれたから弟子になれたのを知って嬉しかったのだ。
せっかく帰って来たのに誰も自分に気づいてくれないのを、クリスは少し寂しく思いながらカウンターで姿勢よく立つ受付嬢の元へと足を進めた。
「やあ、リリ。久しぶり、相変わらず綺麗な立ち姿だな」と、カウンター越しからリリのミニスカートから除く細くて白い脚をまじまじと見た。
「わぁ、クリス様。お帰りなさいませ。褒めてくださるのは嬉しいのですが・・・、帰って来て早々に私の脚を見つめるのは、やめてもらえませんか。恥ずかしいですよ」
「悪い、あまりにも綺麗だったから久しぶりに見とれてしまったよ。それより、館長室に行きたいんだが、良いか?」
「はい、館長でしたらお部屋に居ますのでお連れ様もご一緒にどうぞ」
「ありがとう」
笑顔を見せながら軽くお辞儀したリリの脚をミツヤは無意識に見てしまった。あまりにもクリスが褒めるので、ついつい目が行ってしまったのだ。その姿を見たサーシャは、急に腹立たしくなりミツヤの腕を引っ張った。
「うわぁ、急に引っ張って・・・。どうしたんですか、サーシャさん?」
「ふん! 何でもないです。早く付いて行かないと置いてかれますよ」
仲良くじゃれ合うサーシャとミツヤは、急に立ち止まったクリスの背中に顔をぶつけてしまった。
「うっ、すいません(ごめんなさい)」
「おっと、二人とも大丈夫か」
「急に立ち止まったから・・・、ここが館長室ですか?」
「そうだ、まあ、館長は俺の叔父だから遠慮しなくて良いよ」
そう話すとクリスは、ドアをノックし部屋の中からの返答を待たずにドアを開けた。
「やっと、帰って来たか。随分長い旅だったな」、デスクワークをしていたスライブは手を止め立ち上がる。
「相変わらず忙しそうだな、お・じ・さ・ん」
「ふん、からかうな。お前に叔父さんと呼ばれるほど年は取っていないと何時も言っているだろう。それにしても、ミツヤ以外に客を連れて帰って来るとはお前らしくないな」
「彼女達は、客じゃないよ。サーシャとシルクは俺の新しい仲間だ」
「まあ、良い。お茶を用意させるから、みんな座りなさい」
言われる通り全員がソファに座ると、スライブはリリを呼びお茶を持ってくるよう頼んだ。
「あの、その節はお世話になり有り難うございました」
「いや、君が無事クリスに会えて良かったよ。あの時と比べると随分と表情が変わったな」
「はい、ダンディルグ王国でクリスさんや新しい仲間に出会う事が出来て。今までの迷いが無くなりましたから」
「そうか、それよりミツヤを差し出せと外で居座っていたグランベルノ軍を追い払ったのは、お前達だろ。おかげで助かったよ」
「ああ、攻め込まれる前に辿り着けて良かったよ。まあ、ドラゴンの腹をかち割るより簡単だったけどな」と、クリスは含みを持たせた。
「な、何を言っているんだ。お前、まさか、モーガンから何か聞いたのか」
「ははは、やっぱりモーガンの話しは本当だったんだ。スライブの昔話で盛り上がってね。色々と闇歴史を聞いたよ」
「はあー、よりによってお前に知られるとはな」と、話す割にスライブは残念そうな顔をしていなかった。むしろ、嬉しそうにしていた。
「館長は、師匠を知っているのですか」
「サーシャだったね。そうだ、若い頃にモーガンと一緒に冒険の旅をした事があってね。今では良い思い出ばかりだよ。しかし、あのモーガンが弟子を取るとは驚きだよ」
「そうなんだ。サーシャは、特別なのか?」
スライブとクリスの会話にサーシャは、言い難そうに頬を指で掻いた。
「えーとですね、弟子は私一人だけです。弟子にしてくれた理由が、何と言うか・・・そのー」
「そう言う事か、良いよ。おおよそ想像できるよ。モーガンの事だから君には気まぐれで弟子に取ったとでも言っているんだろう」
「は、はい。その通りです」と、言い当てたスライブを不思議そうにサーシャは見つめた。
「本当の事を教えて上げよう。その代わり、モーガンには絶対に内緒にして欲しい。後が怖いからな」
「本当の事ですか。絶対に師匠には言いませんから、教えてください」
真実を知りたいサーシャは、両手を握りしめ身を乗り出した。
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黙ったまま自分の両手を見るサーシャは、涙をこぼした。
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