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北の遺跡 7
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十二階に転送された時、ここまで見せ場の無かったジルは、ニヤリと笑った。
暗闇の中で、小さな四つ足の魔獣が一匹だけしゃがんで寝ている影が見えたからだ。彼は心の中で、この敵なら自分達前衛が活躍できる戦いになる、しかも大きさから見て自分一人でも何とかなるかも知れないと踏んだのだった。
サーシャの魔法ライトによってその姿を見せた魔獣は、白色をベースに黒色と茶色の柔らかそうな毛を持つ三毛猫!?
鈴付きの首輪をする三毛猫は、丸まり気持ちよさそうに眠っている。
三毛猫を始めて見たカレン達は、魔獣なのか獣なのか判断に迷っていた。
最後尾のクリスは、頭の中で女神とコンタクトを試みた。目を閉じた彼は、頭の中で念じる。
『おーい、見ているんだろ。女神アテーナにディアナ、聞こえているのなら返事してくれ』
話しかけてから暫くすると、マテーナの姿が頭の中に浮かび上がって来た。
『うるさいわね! 試練の邪魔をして欲しくないのに』
マテーナだけが答えた。やはり、一緒に居ないと言う事は、ディアナと彼女の仲が悪い噂は本当なのだと、クリスは思った。
『手出しは、一切していないだろ。見ているなら分かっているはずだし』
『ふん、知ってるわよ。それで何の用よ』
マテーナは不機嫌そうだったが、クリスは何とも思わない。むしろ面倒ごとに巻き込まれたくない彼は、不機嫌になる原因を知りたいなど全く思わなかった。
『あの獣は何だ。初めて見るけど、魔獣なのか?』
『ああ、あれね。可愛いでしょう!』、不機嫌そうな低い声から一変して高い声を出した。
『可愛いとかじゃなくて、あれは魔獣の類なのか』
『あなただけに教えて上げるわ。特別よ!』と、頭の中のマテーナがウインクする。
その仕草に何の意味があるのか良く分からなかったクリスは、とりあえず無視した。
『有難い、特別だと言う事を嬉しく思うよ』
『猫よ! 三毛猫のミケちゃんよ。異世界の動物なんだけど、あまりにも可愛くて一目ぼれしちゃったから、ペットにしているのよ』
『異世界の動物なのか。しかし、弱そうだけど』
『普通のペットな訳ないでしょ。女神が飼っているのよ、だから神獣よ。小さくても彼等には、絶対に負けないわ』
『えっ、えええ! 神獣なんて倒せないじゃん。それじゃあ、十二階は攻略できないぞ』
『あなたも、まだまだ経験と修行が足りないようね。殺す=倒す事だと思っているなんて』
『違うのか?』
『ふふふ、それは、お楽しみに。カレン達がどうやって攻略するか、見守りましょう』
神獣を出してくるとは、勇者の試練は意外に厳しいのだ。
目を開けたクリスは、またもや小さな愛くるしい生き物を試練に出してくるとは、女神の趣味が影響しているのかと考える。
それにしても、神獣三毛猫だと知らずに前衛で全員を制止して飛び出そうとするジルは、全くもって運の無い男だ。年齢的に厄年の彼だが、この世界でも“厄”が影響しているのなら、彼は本当についてない。
「うぉりゃああああああ!」、威勢よく声を上げたジルは三毛猫目がけて走り出した。
大声に驚いて目を覚ました三毛猫は、大きな欠伸をしながら体を伸ばした。切りかかって来るジルに、ミケは尻尾を膨らませて勢いよく壁際に逃げて行った。
「ちょっと、ジル。どうして一人で戦っているのよ?」と、カレンは頭を抱えた。
「そんな事をしていると、十階の時みたいになるぞ!」、クリスの言葉で毛玉にボコボコにされたのを思い出したジルは、そそくさと仲間の元に戻って来た。
「すまない。良い所を見せようと、焦ってしまった」
「しっかりしろよ、兄弟」と、ギリはジルの脇腹に肘を入れた。
「うっ、ぐう。痛いけど、悪かった。冷静にカレンの指示に従うよ」
前衛にカレンとジルが並び、その後ろでギリが槍を構える。後衛では、チェンがサーシャを守る役割を担う。
2-1-2の陣形を取った彼等を壁にもたれるクリスは、女神の話していた通り神獣に勝てないなら、どうやってこの部屋をクリアすれば良いのだろうかと考えていた。
そんな事情など知らないカレンとジルの二人は、壁際で体を曲げて威嚇するミケを攻撃しようとしていた。
「可愛いけど、ごめんね。恨まないでね」、魔獣だと思っているカレンは、出来るだけ苦しませないように、聖剣で素早く心臓を貫こうとした。
ひょいと、横に逃げたはずなのに、ミケが彼等の視界から消えた。
ガキッと、獲物を捕らえられなかった聖剣が壁に突き刺さる音がした。空間が歪みカレンの目の前にミケは姿を現し、柔らかい肉球で彼女の頬をパンチした。高速猫パンチにビックリしたカレンは、後ろにのけぞりそのまま尻もちを付いた。
ひらりと宙を舞うミケに、ジルは剣を振りかざしていた。
「フゥ、フゥ、フッシャー!」、器用に体を捻りジルの攻撃を避けたミケは、地面に着地すると、直ぐにジャンプして鋭い爪でジルの顔をバリバリとひっかいた。
「・・・ッ」、見事な爪痕をジルの頬に残したミケは、そのまま後ろに居たチェンとサーシャの方に向かって走った。
「そうはさせない!」と、ミケの側面からギリは槍で攻撃した。
犬科の獣人はお気に召さないのか、素早く横っ飛びで槍を避け、ガブリとギリの尻尾に思いっきり噛みついた。
「$@%&#!!! ギャー!」、我慢できない強烈な痛みが走った。
ギリは槍を投げ出して、慌てて自分の尻尾を擦った。
前衛の攻撃を全て避け切ったミケは、真っすぐチェンとサーシャの方へ向かった。
突進して来る猫を捕まえるつもりなのか、闘気を纏い体を硬化させたチェンは、両足を踏ん張り力士の様な構えを取った。
「おっしゃああああ!」、両手で抱きかかえるようにミケを捕えたチェンが叫んだ。
「うっ、にゃーあ」、瞳孔を開き目を丸くしたミケは、後ろ足でチェンの胸に猫キックを入れた。
連続してチェンを蹴る高速猫キック、最初はペチペチペチと聞こえていた音が次第に変化していく、ドドドドドドと聞こえたと思ったら、ドドーンと大きな音ともにチェンは、吹き飛ばされ壁にめり込んだ。
「きゃあー!」と、チェンの後ろに居たサーシャが叫び声を上げながら向かってくるミケに魔法を放った。
「天の唸り、光の刃となりて我を守れ【上級魔法】サンダーボルト」
パチパチと、サーシャの杖は電気を帯びて光り輝いた。
雷鳴と共に杖から放たれた雷撃は、龍の形を成し空気を切り裂きながらミケに襲い掛かった。雷撃が直撃すると、眩い閃光が走り一瞬だけ全員の視力が奪われた。
「ちょ、直撃したはずなのに。どうして、何ともなっていないの?」、光の中から無傷のミケが現れ、優雅に毛づくろいしていた。
魔法耐性を持つ神獣を雷で倒せる訳が無い。雷だけでなく、魔法攻撃は全て無効にしてしまうので、結局、魔法使いは手も足も出せないのだ。
「ひっ・・・」と、飛び込んできたミケから身を守る術の無いサーシャは、目をつぶった。
もう間に合わない、諦めた彼女の名前を仲間達が呼ぶ声が聞こえた。
何も起こらないし、痛くない。地面に座り込んだ彼女の太ももに、何かが当たる感覚がするので、ゆっくりと目を開けた。
「ゴロゴロゴロ・・・」と、喉を鳴らすミケは、体を丸めてサーシャの膝の上で寝ていた。
床に座り込んだサーシャは、泣きながら笑っていた。
確実に死んでいたはずだったのに、ミケの可愛い仕草に恐怖と安堵が同時にやって来てしまい、感情がおかしくなってしまった。
真っ先に駆け寄ったカレンは、サーシャを抱きしめた。
「ごめんなさい。前衛の私達が上手く対応できなかったから、あなたを危険な目に会わせてしまった」
「大丈夫です。後衛の私の方こそ、もっと早く戦闘に適した魔法を使えば良かったのに。それが出来なかったから、カレンさんのミスじゃないですよ」
カレンとサーシャの二人は、喉を鳴らしながら箱座りするミケを見つめた。
気持ちよさそうに目をつぶってゴロゴロ喉を鳴らす、この見たことも無い生物はそもそも危険なのかと疑問が沸いて来た。
それにしても見ているだけで癒されるし、無性に触りたい衝動に駆られる。
カレンは、恐る恐るミケを両手で抱き上げると、自分の膝の上に置いた。
体の力を抜くミケは、何とも言えない柔らかさだ。
気が付くと彼女は、ミケの体を撫でていた。
「はあー、やっぱり駄目。きっとこの子は、魔獣じゃないのよ。何の危害もない生き物なのよ」
「私もそう思います」と、サーシャもカレンに抱かれるミケを撫でた。
女性二人は無傷で、男性陣はこっぴどく神獣にやられてしまった。
女神のペットは、単純に男性が嫌いなだけだった。
「そうか! そうだったのか、殺さず倒す意味は」、突然クリスは大声を出した。
「どうしたのよ、クリス。何が分かったのよ?」
「もう話しても良いかな。そいつは、神獣だよ。今の俺達では、倒すどころか傷一つ付けられない相手だ」
「えっ、えええ。そんなのを相手にしていたの。女神は、無茶な試練を与えるのね」
「そうでもないぞ。ここの部屋を攻略する方法は、神獣を倒すか、手懐けるかのどちらかだ」
「じゃあ、私達はクリアしたの」、カレンの言葉にミケは、「ニャッ、ニャッ、ニャッ」と、返事した。
「その様子だと、クリアしたみたいだな」、クリスは部屋の真ん中に出現した台座を指さした。
恐るべし神獣三毛猫。全てにおいて最高の力を持つ女神のペットは、その力で男性達をコテンパに倒し、愛くるしい見た目で女性陣を虜にしてしまった。
暗闇の中で、小さな四つ足の魔獣が一匹だけしゃがんで寝ている影が見えたからだ。彼は心の中で、この敵なら自分達前衛が活躍できる戦いになる、しかも大きさから見て自分一人でも何とかなるかも知れないと踏んだのだった。
サーシャの魔法ライトによってその姿を見せた魔獣は、白色をベースに黒色と茶色の柔らかそうな毛を持つ三毛猫!?
鈴付きの首輪をする三毛猫は、丸まり気持ちよさそうに眠っている。
三毛猫を始めて見たカレン達は、魔獣なのか獣なのか判断に迷っていた。
最後尾のクリスは、頭の中で女神とコンタクトを試みた。目を閉じた彼は、頭の中で念じる。
『おーい、見ているんだろ。女神アテーナにディアナ、聞こえているのなら返事してくれ』
話しかけてから暫くすると、マテーナの姿が頭の中に浮かび上がって来た。
『うるさいわね! 試練の邪魔をして欲しくないのに』
マテーナだけが答えた。やはり、一緒に居ないと言う事は、ディアナと彼女の仲が悪い噂は本当なのだと、クリスは思った。
『手出しは、一切していないだろ。見ているなら分かっているはずだし』
『ふん、知ってるわよ。それで何の用よ』
マテーナは不機嫌そうだったが、クリスは何とも思わない。むしろ面倒ごとに巻き込まれたくない彼は、不機嫌になる原因を知りたいなど全く思わなかった。
『あの獣は何だ。初めて見るけど、魔獣なのか?』
『ああ、あれね。可愛いでしょう!』、不機嫌そうな低い声から一変して高い声を出した。
『可愛いとかじゃなくて、あれは魔獣の類なのか』
『あなただけに教えて上げるわ。特別よ!』と、頭の中のマテーナがウインクする。
その仕草に何の意味があるのか良く分からなかったクリスは、とりあえず無視した。
『有難い、特別だと言う事を嬉しく思うよ』
『猫よ! 三毛猫のミケちゃんよ。異世界の動物なんだけど、あまりにも可愛くて一目ぼれしちゃったから、ペットにしているのよ』
『異世界の動物なのか。しかし、弱そうだけど』
『普通のペットな訳ないでしょ。女神が飼っているのよ、だから神獣よ。小さくても彼等には、絶対に負けないわ』
『えっ、えええ! 神獣なんて倒せないじゃん。それじゃあ、十二階は攻略できないぞ』
『あなたも、まだまだ経験と修行が足りないようね。殺す=倒す事だと思っているなんて』
『違うのか?』
『ふふふ、それは、お楽しみに。カレン達がどうやって攻略するか、見守りましょう』
神獣を出してくるとは、勇者の試練は意外に厳しいのだ。
目を開けたクリスは、またもや小さな愛くるしい生き物を試練に出してくるとは、女神の趣味が影響しているのかと考える。
それにしても、神獣三毛猫だと知らずに前衛で全員を制止して飛び出そうとするジルは、全くもって運の無い男だ。年齢的に厄年の彼だが、この世界でも“厄”が影響しているのなら、彼は本当についてない。
「うぉりゃああああああ!」、威勢よく声を上げたジルは三毛猫目がけて走り出した。
大声に驚いて目を覚ました三毛猫は、大きな欠伸をしながら体を伸ばした。切りかかって来るジルに、ミケは尻尾を膨らませて勢いよく壁際に逃げて行った。
「ちょっと、ジル。どうして一人で戦っているのよ?」と、カレンは頭を抱えた。
「そんな事をしていると、十階の時みたいになるぞ!」、クリスの言葉で毛玉にボコボコにされたのを思い出したジルは、そそくさと仲間の元に戻って来た。
「すまない。良い所を見せようと、焦ってしまった」
「しっかりしろよ、兄弟」と、ギリはジルの脇腹に肘を入れた。
「うっ、ぐう。痛いけど、悪かった。冷静にカレンの指示に従うよ」
前衛にカレンとジルが並び、その後ろでギリが槍を構える。後衛では、チェンがサーシャを守る役割を担う。
2-1-2の陣形を取った彼等を壁にもたれるクリスは、女神の話していた通り神獣に勝てないなら、どうやってこの部屋をクリアすれば良いのだろうかと考えていた。
そんな事情など知らないカレンとジルの二人は、壁際で体を曲げて威嚇するミケを攻撃しようとしていた。
「可愛いけど、ごめんね。恨まないでね」、魔獣だと思っているカレンは、出来るだけ苦しませないように、聖剣で素早く心臓を貫こうとした。
ひょいと、横に逃げたはずなのに、ミケが彼等の視界から消えた。
ガキッと、獲物を捕らえられなかった聖剣が壁に突き刺さる音がした。空間が歪みカレンの目の前にミケは姿を現し、柔らかい肉球で彼女の頬をパンチした。高速猫パンチにビックリしたカレンは、後ろにのけぞりそのまま尻もちを付いた。
ひらりと宙を舞うミケに、ジルは剣を振りかざしていた。
「フゥ、フゥ、フッシャー!」、器用に体を捻りジルの攻撃を避けたミケは、地面に着地すると、直ぐにジャンプして鋭い爪でジルの顔をバリバリとひっかいた。
「・・・ッ」、見事な爪痕をジルの頬に残したミケは、そのまま後ろに居たチェンとサーシャの方に向かって走った。
「そうはさせない!」と、ミケの側面からギリは槍で攻撃した。
犬科の獣人はお気に召さないのか、素早く横っ飛びで槍を避け、ガブリとギリの尻尾に思いっきり噛みついた。
「$@%&#!!! ギャー!」、我慢できない強烈な痛みが走った。
ギリは槍を投げ出して、慌てて自分の尻尾を擦った。
前衛の攻撃を全て避け切ったミケは、真っすぐチェンとサーシャの方へ向かった。
突進して来る猫を捕まえるつもりなのか、闘気を纏い体を硬化させたチェンは、両足を踏ん張り力士の様な構えを取った。
「おっしゃああああ!」、両手で抱きかかえるようにミケを捕えたチェンが叫んだ。
「うっ、にゃーあ」、瞳孔を開き目を丸くしたミケは、後ろ足でチェンの胸に猫キックを入れた。
連続してチェンを蹴る高速猫キック、最初はペチペチペチと聞こえていた音が次第に変化していく、ドドドドドドと聞こえたと思ったら、ドドーンと大きな音ともにチェンは、吹き飛ばされ壁にめり込んだ。
「きゃあー!」と、チェンの後ろに居たサーシャが叫び声を上げながら向かってくるミケに魔法を放った。
「天の唸り、光の刃となりて我を守れ【上級魔法】サンダーボルト」
パチパチと、サーシャの杖は電気を帯びて光り輝いた。
雷鳴と共に杖から放たれた雷撃は、龍の形を成し空気を切り裂きながらミケに襲い掛かった。雷撃が直撃すると、眩い閃光が走り一瞬だけ全員の視力が奪われた。
「ちょ、直撃したはずなのに。どうして、何ともなっていないの?」、光の中から無傷のミケが現れ、優雅に毛づくろいしていた。
魔法耐性を持つ神獣を雷で倒せる訳が無い。雷だけでなく、魔法攻撃は全て無効にしてしまうので、結局、魔法使いは手も足も出せないのだ。
「ひっ・・・」と、飛び込んできたミケから身を守る術の無いサーシャは、目をつぶった。
もう間に合わない、諦めた彼女の名前を仲間達が呼ぶ声が聞こえた。
何も起こらないし、痛くない。地面に座り込んだ彼女の太ももに、何かが当たる感覚がするので、ゆっくりと目を開けた。
「ゴロゴロゴロ・・・」と、喉を鳴らすミケは、体を丸めてサーシャの膝の上で寝ていた。
床に座り込んだサーシャは、泣きながら笑っていた。
確実に死んでいたはずだったのに、ミケの可愛い仕草に恐怖と安堵が同時にやって来てしまい、感情がおかしくなってしまった。
真っ先に駆け寄ったカレンは、サーシャを抱きしめた。
「ごめんなさい。前衛の私達が上手く対応できなかったから、あなたを危険な目に会わせてしまった」
「大丈夫です。後衛の私の方こそ、もっと早く戦闘に適した魔法を使えば良かったのに。それが出来なかったから、カレンさんのミスじゃないですよ」
カレンとサーシャの二人は、喉を鳴らしながら箱座りするミケを見つめた。
気持ちよさそうに目をつぶってゴロゴロ喉を鳴らす、この見たことも無い生物はそもそも危険なのかと疑問が沸いて来た。
それにしても見ているだけで癒されるし、無性に触りたい衝動に駆られる。
カレンは、恐る恐るミケを両手で抱き上げると、自分の膝の上に置いた。
体の力を抜くミケは、何とも言えない柔らかさだ。
気が付くと彼女は、ミケの体を撫でていた。
「はあー、やっぱり駄目。きっとこの子は、魔獣じゃないのよ。何の危害もない生き物なのよ」
「私もそう思います」と、サーシャもカレンに抱かれるミケを撫でた。
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女神のペットは、単純に男性が嫌いなだけだった。
「そうか! そうだったのか、殺さず倒す意味は」、突然クリスは大声を出した。
「どうしたのよ、クリス。何が分かったのよ?」
「もう話しても良いかな。そいつは、神獣だよ。今の俺達では、倒すどころか傷一つ付けられない相手だ」
「えっ、えええ。そんなのを相手にしていたの。女神は、無茶な試練を与えるのね」
「そうでもないぞ。ここの部屋を攻略する方法は、神獣を倒すか、手懐けるかのどちらかだ」
「じゃあ、私達はクリアしたの」、カレンの言葉にミケは、「ニャッ、ニャッ、ニャッ」と、返事した。
「その様子だと、クリアしたみたいだな」、クリスは部屋の真ん中に出現した台座を指さした。
恐るべし神獣三毛猫。全てにおいて最高の力を持つ女神のペットは、その力で男性達をコテンパに倒し、愛くるしい見た目で女性陣を虜にしてしまった。
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