有限会社DIUD 物の怪退治をする会社でアルバイトをする事になりました!

川村直樹

文字の大きさ
上 下
68 / 86

殺人鬼 ②

しおりを挟む
 群がる餓鬼が方々へ飛び散る。銃弾を浴びて倒れるのは三体だ。隼人は目で残りの餓鬼を追いかけた。
「一体、二体、三体・・・合計で残りは五体」
「油断するなよ、前から二体来るぞ!」
 隼人は、襲い掛かってくる餓鬼の胸に龍の爪を突き刺した。もう一体は、彼を飛び越えて後ろに居る正人の目の前に着地した。
「こいつは、俺が仕留めるから残りの三体を片付けろ」
 正人は、目の前の餓鬼の眉間に銃弾を全て撃ち込む。同じ場所に続けて銃弾を受けた餓鬼は絶命したのか、チリとなり汚水と一緒に流されていく。
 最初に銃弾を浴びた餓鬼達が、ヨロヨロと起きだす姿が隼人の目に入る。
 死角から襲ってきた餓鬼の鋭い爪で、隼人の雨合羽の袖が破けた。
 そのまま籠手に噛みつく餓鬼を隼人は力いっぱい壁に叩きつけた。
「数が多くて、単体で倒していくのは非効率ですよ」
 隼人は、下から足に噛みつこうとした餓鬼を踏みつけた。
「なら、この狭い空間で何か有効な手段でもあるのか?」と、正人はグレッグ19のマガジンを取り換え、前方をすり抜けてくる餓鬼を撃つ。
 正人の言葉に隼人は見返り不敵な笑みを浮かべた。
「正人さん、ゴムは電気を通しませんよね」
「低い電圧なら大丈夫だと思うが。絶縁体の全てが完璧に電気を通さない訳じゃないんだよ、耐えられる電圧って物があるから、無茶はしないでくれよ」
「難しい事は、分かりませんが、取り敢えずやって見ましょう」と、前を向く隼人が叫んだ。
「馬鹿! ここで変な物をぶっ放すなよ・・・、やめてくれ」
 不安が心をよぎった正人は、慌ててこの場から離れようと後ろを向いた。
“本当にこんな所でやるんだな。どうなっても知らないぞ”と、隼人の頭の中で龍も忠告してきた。
「うーん、大丈夫だと思う。それに一気に片付けた方が良いし」
“なら、やってみろ。後ろの正人は、逃げようとしているがな”
天鼓てんこ・・・」と、隼人が呟くと体に光が集まって来る。
 ゴロゴロと地上では聞き慣れない音が、管内に響き渡る。
 隼人が手を前にかざすと、彼の体からパリパリと閃光が発生する。
閃電一撃せんでんいちげき、全てを消し去れ」
 隼人の腕から餓鬼の群れに向かって高速で稲妻が走った。
 ドッカーン―――あり得ない爆音が下水管内で響き渡ると、餓鬼達は一瞬にして消滅したのだが、下水管内で発生した衝撃で汚水が塊となって押し寄せて来た。
 後ろに居た正人は、汚水の塊に襲われずぶ濡れになった。
外では逆流してきた汚水がマンホールから吹きだしたので、待機していた城崎を含め大騒ぎとなった。
                   
 最後に下水管から顔を覗かせた隼人は、周囲の惨状に申し訳なさそうな顔をした。
「やり過ぎましたか? すいません」
「隼人、お前は何てことしてくれるんだよ」と、ずぶ濡れの正人は隼人に文句を言いながら、自分の体に付いた匂いを気にしていた。
「下水管の中での作業ですよ。汚水をかぶる事なんて、しょっちゅうある事なので気にしなくて良いよ」と、城崎は笑いながら話す。
「一気に片付けた方が良いと思って。ちょっと威力があり過ぎましたね」
「強力過ぎるよ。今度、それを使う時は俺が許可してからにしろよ」
 凄い剣幕で起こる正人を横目に城崎は、高圧洗浄車の水圧を調整する。勢いよくホースから水が出てくると、文句を言う正人と謝る隼人に向けて、城崎はその水で彼らを洗い始めた。
「着替える前に汚水を洗い流しますよ」
 二人は無言で、ホースから勢いよく出る水をかけられた。
「着替えたら、お風呂に入ってから帰るのをお勧めしますよ」
「えっ、どうしてですか?」と、正人が聞き直した。
「この匂いに慣れると、自分の匂いが分からなくなるのですよ。多分、此処にいる人間はみんな匂っているはずですから」
 車の影で着替えを済ました正人は、警察官に中の状況を説明する。下水管の中で餓鬼が群がっていたのは、複数の人間のバラバラ死体だった。
 正人達の餓鬼退治の仕事は、終了した。
バラバラ死体に関しては、これから警察が殺人事件として捜査を始める。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...