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殺人鬼 ②
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群がる餓鬼が方々へ飛び散る。銃弾を浴びて倒れるのは三体だ。隼人は目で残りの餓鬼を追いかけた。
「一体、二体、三体・・・合計で残りは五体」
「油断するなよ、前から二体来るぞ!」
隼人は、襲い掛かってくる餓鬼の胸に龍の爪を突き刺した。もう一体は、彼を飛び越えて後ろに居る正人の目の前に着地した。
「こいつは、俺が仕留めるから残りの三体を片付けろ」
正人は、目の前の餓鬼の眉間に銃弾を全て撃ち込む。同じ場所に続けて銃弾を受けた餓鬼は絶命したのか、チリとなり汚水と一緒に流されていく。
最初に銃弾を浴びた餓鬼達が、ヨロヨロと起きだす姿が隼人の目に入る。
死角から襲ってきた餓鬼の鋭い爪で、隼人の雨合羽の袖が破けた。
そのまま籠手に噛みつく餓鬼を隼人は力いっぱい壁に叩きつけた。
「数が多くて、単体で倒していくのは非効率ですよ」
隼人は、下から足に噛みつこうとした餓鬼を踏みつけた。
「なら、この狭い空間で何か有効な手段でもあるのか?」と、正人はグレッグ19のマガジンを取り換え、前方をすり抜けてくる餓鬼を撃つ。
正人の言葉に隼人は見返り不敵な笑みを浮かべた。
「正人さん、ゴムは電気を通しませんよね」
「低い電圧なら大丈夫だと思うが。絶縁体の全てが完璧に電気を通さない訳じゃないんだよ、耐えられる電圧って物があるから、無茶はしないでくれよ」
「難しい事は、分かりませんが、取り敢えずやって見ましょう」と、前を向く隼人が叫んだ。
「馬鹿! ここで変な物をぶっ放すなよ・・・、やめてくれ」
不安が心を過った正人は、慌ててこの場から離れようと後ろを向いた。
“本当にこんな所でやるんだな。どうなっても知らないぞ”と、隼人の頭の中で龍も忠告してきた。
「うーん、大丈夫だと思う。それに一気に片付けた方が良いし」
“なら、やってみろ。後ろの正人は、逃げようとしているがな”
「天鼓・・・」と、隼人が呟くと体に光が集まって来る。
ゴロゴロと地上では聞き慣れない音が、管内に響き渡る。
隼人が手を前にかざすと、彼の体からパリパリと閃光が発生する。
「閃電一撃、全てを消し去れ」
隼人の腕から餓鬼の群れに向かって高速で稲妻が走った。
ドッカーン―――あり得ない爆音が下水管内で響き渡ると、餓鬼達は一瞬にして消滅したのだが、下水管内で発生した衝撃で汚水が塊となって押し寄せて来た。
後ろに居た正人は、汚水の塊に襲われずぶ濡れになった。
外では逆流してきた汚水がマンホールから吹きだしたので、待機していた城崎を含め大騒ぎとなった。
最後に下水管から顔を覗かせた隼人は、周囲の惨状に申し訳なさそうな顔をした。
「やり過ぎましたか? すいません」
「隼人、お前は何てことしてくれるんだよ」と、ずぶ濡れの正人は隼人に文句を言いながら、自分の体に付いた匂いを気にしていた。
「下水管の中での作業ですよ。汚水をかぶる事なんて、しょっちゅうある事なので気にしなくて良いよ」と、城崎は笑いながら話す。
「一気に片付けた方が良いと思って。ちょっと威力があり過ぎましたね」
「強力過ぎるよ。今度、それを使う時は俺が許可してからにしろよ」
凄い剣幕で起こる正人を横目に城崎は、高圧洗浄車の水圧を調整する。勢いよくホースから水が出てくると、文句を言う正人と謝る隼人に向けて、城崎はその水で彼らを洗い始めた。
「着替える前に汚水を洗い流しますよ」
二人は無言で、ホースから勢いよく出る水をかけられた。
「着替えたら、お風呂に入ってから帰るのをお勧めしますよ」
「えっ、どうしてですか?」と、正人が聞き直した。
「この匂いに慣れると、自分の匂いが分からなくなるのですよ。多分、此処にいる人間はみんな匂っているはずですから」
車の影で着替えを済ました正人は、警察官に中の状況を説明する。下水管の中で餓鬼が群がっていたのは、複数の人間のバラバラ死体だった。
正人達の餓鬼退治の仕事は、終了した。
バラバラ死体に関しては、これから警察が殺人事件として捜査を始める。
「一体、二体、三体・・・合計で残りは五体」
「油断するなよ、前から二体来るぞ!」
隼人は、襲い掛かってくる餓鬼の胸に龍の爪を突き刺した。もう一体は、彼を飛び越えて後ろに居る正人の目の前に着地した。
「こいつは、俺が仕留めるから残りの三体を片付けろ」
正人は、目の前の餓鬼の眉間に銃弾を全て撃ち込む。同じ場所に続けて銃弾を受けた餓鬼は絶命したのか、チリとなり汚水と一緒に流されていく。
最初に銃弾を浴びた餓鬼達が、ヨロヨロと起きだす姿が隼人の目に入る。
死角から襲ってきた餓鬼の鋭い爪で、隼人の雨合羽の袖が破けた。
そのまま籠手に噛みつく餓鬼を隼人は力いっぱい壁に叩きつけた。
「数が多くて、単体で倒していくのは非効率ですよ」
隼人は、下から足に噛みつこうとした餓鬼を踏みつけた。
「なら、この狭い空間で何か有効な手段でもあるのか?」と、正人はグレッグ19のマガジンを取り換え、前方をすり抜けてくる餓鬼を撃つ。
正人の言葉に隼人は見返り不敵な笑みを浮かべた。
「正人さん、ゴムは電気を通しませんよね」
「低い電圧なら大丈夫だと思うが。絶縁体の全てが完璧に電気を通さない訳じゃないんだよ、耐えられる電圧って物があるから、無茶はしないでくれよ」
「難しい事は、分かりませんが、取り敢えずやって見ましょう」と、前を向く隼人が叫んだ。
「馬鹿! ここで変な物をぶっ放すなよ・・・、やめてくれ」
不安が心を過った正人は、慌ててこの場から離れようと後ろを向いた。
“本当にこんな所でやるんだな。どうなっても知らないぞ”と、隼人の頭の中で龍も忠告してきた。
「うーん、大丈夫だと思う。それに一気に片付けた方が良いし」
“なら、やってみろ。後ろの正人は、逃げようとしているがな”
「天鼓・・・」と、隼人が呟くと体に光が集まって来る。
ゴロゴロと地上では聞き慣れない音が、管内に響き渡る。
隼人が手を前にかざすと、彼の体からパリパリと閃光が発生する。
「閃電一撃、全てを消し去れ」
隼人の腕から餓鬼の群れに向かって高速で稲妻が走った。
ドッカーン―――あり得ない爆音が下水管内で響き渡ると、餓鬼達は一瞬にして消滅したのだが、下水管内で発生した衝撃で汚水が塊となって押し寄せて来た。
後ろに居た正人は、汚水の塊に襲われずぶ濡れになった。
外では逆流してきた汚水がマンホールから吹きだしたので、待機していた城崎を含め大騒ぎとなった。
最後に下水管から顔を覗かせた隼人は、周囲の惨状に申し訳なさそうな顔をした。
「やり過ぎましたか? すいません」
「隼人、お前は何てことしてくれるんだよ」と、ずぶ濡れの正人は隼人に文句を言いながら、自分の体に付いた匂いを気にしていた。
「下水管の中での作業ですよ。汚水をかぶる事なんて、しょっちゅうある事なので気にしなくて良いよ」と、城崎は笑いながら話す。
「一気に片付けた方が良いと思って。ちょっと威力があり過ぎましたね」
「強力過ぎるよ。今度、それを使う時は俺が許可してからにしろよ」
凄い剣幕で起こる正人を横目に城崎は、高圧洗浄車の水圧を調整する。勢いよくホースから水が出てくると、文句を言う正人と謝る隼人に向けて、城崎はその水で彼らを洗い始めた。
「着替える前に汚水を洗い流しますよ」
二人は無言で、ホースから勢いよく出る水をかけられた。
「着替えたら、お風呂に入ってから帰るのをお勧めしますよ」
「えっ、どうしてですか?」と、正人が聞き直した。
「この匂いに慣れると、自分の匂いが分からなくなるのですよ。多分、此処にいる人間はみんな匂っているはずですから」
車の影で着替えを済ました正人は、警察官に中の状況を説明する。下水管の中で餓鬼が群がっていたのは、複数の人間のバラバラ死体だった。
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