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海と磯女と座敷童 ④
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長い一日が終わった。林が手配していた旅館に到着すると、男性三人と女性三人の二部屋が用意されていた。温泉に入るのは、食後の楽しみにしようと林と小川が揃って提案して来たので、料理が準備されるまで1時間ほどの自由時間が出来た。
隼人は何をしようかと悩んでいると、四郎が散歩に行きたいとお願いする。
「隼人、散歩したいです。初めて来た町の景色を見たいです」
「せっかく一緒に来たのだから、四郎も楽しまないとな」
玄関で靴を履こうとする隼人は、背後に気配を感じた。
「一人でどこ行くの?」
桜は不思議そうな顔で、後ろから隼人に声を掛けた。桜の気配に慌てた四郎は、姿を隠してしまった。
「散歩に行くんだよ。・・・四郎、大丈夫だから出ておいで」
隼人の足元から四郎が顔を覗かせ、つぶらな瞳で桜を見つめた。
「えっ、何この子。かわいい、隼人が連れて来たの?」
あまりの可愛いさに桜は、悶絶しそうになる。
四郎は二本足で立ち上がり、桜にペコリとお辞儀をした。
「初めまして。僕は、四郎と申します。今は、隼人の下でお世話になっています」
「初めまして、私は桜。隼人と一緒に仕事をしています」
「前に保護した鼬だよ。怪我が治ってからは、僕の友人として一緒に居る」
「友人だなんてもったいないお言葉。僕は、命の恩人の隼人に仕えているのです」
「へぇー、使い魔みたい。それにしても真っ白でとても綺麗な毛並みをしているのね。私とも友人になってくれる?」
四郎はチラっと隼人を見た、隼人は笑顔で頷く。
「もちろんです。僕も友人が増えて嬉しいです」
「やったー、じゃあ君の事はシー君と呼ぶね」
桜も加わり隼人と四郎は、旅館周辺の散策へと出かける。四郎は初めて見る町や自然の風景に興奮しながら、隼人と桜の前を進む。四郎も隼人達と旅行を楽しむことが出来たのだった。
豪華な夕食が目の前に出され、みんな驚きを隠せなかった。
「こんな、料理はテレビでしか見たこと無いよ。宿泊代金は、大丈夫なのか?」
隼人の問いかけに林は、テーブルを囲むみんなが最低限聞こえるぐらいの小声で、「この旅館は、幽霊が出るんだよ。それで、訳ありの宿として格安で泊まれた」
雨宮と新藤は顔を青ざめさせ、やめてーと声が漏れた。
「噂だけじゃないのか」、隼人はこの建物や周辺の雰囲気から良い気を感じていた。決して悪い類の者は居ないと、自信をもって断言できる。しかし、なぜ幽霊が出ると噂されているのだろうか。
「私も悪い感じがしないのよね」と、桜も隼人に同意見だった。
料理が全て揃った所で、女将がそれぞれの料理の説明をしてくれた。
学生の彼らにこの様なもてなしをしてくれるのは嬉しい事だ。しかし、宿泊料金に対して、この料理だと採算が取れないのではと、彼らは心配になる。
「せっかくだし、美味しい料理を堪能して、その後は温泉で疲れを取ろう」と、早く料理を食べたかった林は箸を手にした。
若い彼らは、一日の疲れがすぐに出てしまう。温泉に入った後、缶ビールを1本飲んだだけなのに、三人とも布団の上で大の字になってしまった。
パタパタパタと、何かが廊下を走る。
暫くするとまた、パタパタパタと廊下を走る音がするとドンとドアが閉まる音がした。目を覚ました隼人が時計を見ると、午前三時頃だった。
「隼人、起きましたか。何か居ますね」
「何だろうね、悪い感じがしないのだけど。四郎は何だと思う?」
隼人は何をしようかと悩んでいると、四郎が散歩に行きたいとお願いする。
「隼人、散歩したいです。初めて来た町の景色を見たいです」
「せっかく一緒に来たのだから、四郎も楽しまないとな」
玄関で靴を履こうとする隼人は、背後に気配を感じた。
「一人でどこ行くの?」
桜は不思議そうな顔で、後ろから隼人に声を掛けた。桜の気配に慌てた四郎は、姿を隠してしまった。
「散歩に行くんだよ。・・・四郎、大丈夫だから出ておいで」
隼人の足元から四郎が顔を覗かせ、つぶらな瞳で桜を見つめた。
「えっ、何この子。かわいい、隼人が連れて来たの?」
あまりの可愛いさに桜は、悶絶しそうになる。
四郎は二本足で立ち上がり、桜にペコリとお辞儀をした。
「初めまして。僕は、四郎と申します。今は、隼人の下でお世話になっています」
「初めまして、私は桜。隼人と一緒に仕事をしています」
「前に保護した鼬だよ。怪我が治ってからは、僕の友人として一緒に居る」
「友人だなんてもったいないお言葉。僕は、命の恩人の隼人に仕えているのです」
「へぇー、使い魔みたい。それにしても真っ白でとても綺麗な毛並みをしているのね。私とも友人になってくれる?」
四郎はチラっと隼人を見た、隼人は笑顔で頷く。
「もちろんです。僕も友人が増えて嬉しいです」
「やったー、じゃあ君の事はシー君と呼ぶね」
桜も加わり隼人と四郎は、旅館周辺の散策へと出かける。四郎は初めて見る町や自然の風景に興奮しながら、隼人と桜の前を進む。四郎も隼人達と旅行を楽しむことが出来たのだった。
豪華な夕食が目の前に出され、みんな驚きを隠せなかった。
「こんな、料理はテレビでしか見たこと無いよ。宿泊代金は、大丈夫なのか?」
隼人の問いかけに林は、テーブルを囲むみんなが最低限聞こえるぐらいの小声で、「この旅館は、幽霊が出るんだよ。それで、訳ありの宿として格安で泊まれた」
雨宮と新藤は顔を青ざめさせ、やめてーと声が漏れた。
「噂だけじゃないのか」、隼人はこの建物や周辺の雰囲気から良い気を感じていた。決して悪い類の者は居ないと、自信をもって断言できる。しかし、なぜ幽霊が出ると噂されているのだろうか。
「私も悪い感じがしないのよね」と、桜も隼人に同意見だった。
料理が全て揃った所で、女将がそれぞれの料理の説明をしてくれた。
学生の彼らにこの様なもてなしをしてくれるのは嬉しい事だ。しかし、宿泊料金に対して、この料理だと採算が取れないのではと、彼らは心配になる。
「せっかくだし、美味しい料理を堪能して、その後は温泉で疲れを取ろう」と、早く料理を食べたかった林は箸を手にした。
若い彼らは、一日の疲れがすぐに出てしまう。温泉に入った後、缶ビールを1本飲んだだけなのに、三人とも布団の上で大の字になってしまった。
パタパタパタと、何かが廊下を走る。
暫くするとまた、パタパタパタと廊下を走る音がするとドンとドアが閉まる音がした。目を覚ました隼人が時計を見ると、午前三時頃だった。
「隼人、起きましたか。何か居ますね」
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