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怒りの炎 ④
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路地裏へと逃げ込む鼬の姿を見つけた正人は、狭い路地の中へ入って行く。人一人がやっと通れる幅の路地には、住宅で使わなくなった物などが置かれている。足に物が当たり走り難い、正人はしまったと思った。このままでは、鼬達のスピードに付いて行けず、追いつけない。
軽快に屋根伝いに上から鼬を追いかける隼人と長老は、正人を見下ろしていた。
「あいつらは、僕と長老が追いかけます。正人さんは、先回りしてください」
「分かった。先回りするにはどこに行けば良い?」
「このまま真っすぐ進んだ所です。お願いします」と、隼人と長老は鼬を追いかけて行った。
正人は、足に纏わりつくゴミ箱を蹴飛ばし路地から通りへ出ると、火事の現場を見ようと野次馬の集団が歩いて来る。不審者に間違われないよう何食わぬ顔で彼らを追い抜くと、正人は急いで走り出した。
鼬達が空き家へ入って行くのを屋根の上から隼人と長老が確認していると、追いついた正人がキョロキョロと周囲を確認していた。
「長老、正人さんを呼んできますので、見張りをお願いします」
「お安い御用じゃ、早くあの鈍間を呼んで来い」
合流した正人と隼人は、空き家の前で鼬達の出方を伺っていた。猫又の長老も居るので、万が一鼬達が攻撃してきても倒せる自信はある。鼬達を殺すのは簡単だが、平和的な解決を彼らは模索していた。最善な方法は、無いのか?
「どうしますか、正人さん」
「このまま、待っていても意味無いし。中に入って、奴らの言い分でも聞くか?」
「全員、中に入ると警戒心の強い奴らじゃから攻撃して来るぞ。中に入るなら、正人か隼人のどちらか一人だけにするのじゃ」
「それなら、僕が行きます。龍神化しているので、襲われても怪我しないし」
「そうだな、じゃあ、俺と長老は外で待つよ」
律儀に隼人は、玄関のドアを開けて建物の中に入る。中はがらんどうで、生活感が全く無い。土足のまま進んで行くと、8畳の居間の奥に白い鼬が座布団の上に横たわる姿が見えた。隼人が居間に足を踏み入れると、彼の死角に居た3匹の鼬が、尻尾を膨らませ威嚇してきた。
「人間、我らの住処に足を踏み入れるな」と、隼人に警戒する一郎が話した。
「お前達は、人の言葉を話せるのか。それなら、何故、火事を起こしていたのか教えて欲しい」
「人間に教える義理は無い。お前は、俺が倒してやる」
次郎は牙を剥き果敢に隼人の腕に噛みつくが、彼は直ぐに噛みついた口を隼人の腕から離した。
今度は、「やあー」と、腰の引けた三郎が目をつぶったまま隼人に飛び掛かったが、隼人に両手で掴まれてしまった。前足をジタバタさせ抵抗しているが、短すぎて隼人には届かない。
「あぁぁぁ、人間、俺を離せ・・・、放してください、・・・お願い許して」
一郎は三郎を助けようと前に出たが、次郎が彼を制止した。
「兄さん、駄目だ。あいつは、ただの人間じゃない」
「何を言っているんだ、次郎。早く、三郎を助けないと」
「あいつは、龍だよ。俺達にはかなわない相手だよ」
「龍だと、人間の姿をしているじゃないか」
「噛みついた時、あいつの腕は龍の鱗で守られていた。それにとてつもない力を感じたんだ」
隼人の力に怖気づいた一郎と次郎は、後ろに下がり二匹とも四郎の前で身構えた。
軽快に屋根伝いに上から鼬を追いかける隼人と長老は、正人を見下ろしていた。
「あいつらは、僕と長老が追いかけます。正人さんは、先回りしてください」
「分かった。先回りするにはどこに行けば良い?」
「このまま真っすぐ進んだ所です。お願いします」と、隼人と長老は鼬を追いかけて行った。
正人は、足に纏わりつくゴミ箱を蹴飛ばし路地から通りへ出ると、火事の現場を見ようと野次馬の集団が歩いて来る。不審者に間違われないよう何食わぬ顔で彼らを追い抜くと、正人は急いで走り出した。
鼬達が空き家へ入って行くのを屋根の上から隼人と長老が確認していると、追いついた正人がキョロキョロと周囲を確認していた。
「長老、正人さんを呼んできますので、見張りをお願いします」
「お安い御用じゃ、早くあの鈍間を呼んで来い」
合流した正人と隼人は、空き家の前で鼬達の出方を伺っていた。猫又の長老も居るので、万が一鼬達が攻撃してきても倒せる自信はある。鼬達を殺すのは簡単だが、平和的な解決を彼らは模索していた。最善な方法は、無いのか?
「どうしますか、正人さん」
「このまま、待っていても意味無いし。中に入って、奴らの言い分でも聞くか?」
「全員、中に入ると警戒心の強い奴らじゃから攻撃して来るぞ。中に入るなら、正人か隼人のどちらか一人だけにするのじゃ」
「それなら、僕が行きます。龍神化しているので、襲われても怪我しないし」
「そうだな、じゃあ、俺と長老は外で待つよ」
律儀に隼人は、玄関のドアを開けて建物の中に入る。中はがらんどうで、生活感が全く無い。土足のまま進んで行くと、8畳の居間の奥に白い鼬が座布団の上に横たわる姿が見えた。隼人が居間に足を踏み入れると、彼の死角に居た3匹の鼬が、尻尾を膨らませ威嚇してきた。
「人間、我らの住処に足を踏み入れるな」と、隼人に警戒する一郎が話した。
「お前達は、人の言葉を話せるのか。それなら、何故、火事を起こしていたのか教えて欲しい」
「人間に教える義理は無い。お前は、俺が倒してやる」
次郎は牙を剥き果敢に隼人の腕に噛みつくが、彼は直ぐに噛みついた口を隼人の腕から離した。
今度は、「やあー」と、腰の引けた三郎が目をつぶったまま隼人に飛び掛かったが、隼人に両手で掴まれてしまった。前足をジタバタさせ抵抗しているが、短すぎて隼人には届かない。
「あぁぁぁ、人間、俺を離せ・・・、放してください、・・・お願い許して」
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「兄さん、駄目だ。あいつは、ただの人間じゃない」
「何を言っているんだ、次郎。早く、三郎を助けないと」
「あいつは、龍だよ。俺達にはかなわない相手だよ」
「龍だと、人間の姿をしているじゃないか」
「噛みついた時、あいつの腕は龍の鱗で守られていた。それにとてつもない力を感じたんだ」
隼人の力に怖気づいた一郎と次郎は、後ろに下がり二匹とも四郎の前で身構えた。
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