有限会社DIUD 物の怪退治をする会社でアルバイトをする事になりました!

川村直樹

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ワーウルフ ②

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 関西国際空港では、離陸する飛行機が次々に夜空の中へ吸い込まれると、着陸する飛行機が暗闇から姿を現し滑走路に降りて来る。離着陸の光景がリズミカルに繰り返されていた。
 熱気が籠った滑走路は飛行機のジェットエンジンから出る熱気も加わり、空港の外より気温は高かい。チャーター機専用カウンターでチェックインを済ませた正人と隼人は、エンジン音が鳴り響く滑走路を横切り、本部のチャーター機に乗り込んだ。 
 直ぐに離陸すると聞いていたので席に座ろうとすると、正人は先客が居るのに気が付いた。懐かしい人物の横顔、ジャンと彼は声を掛ける。
 ジャンと呼ばれる金髪、ブルーアイの男性は、顔にかっかる少し長い前髪を手で払った後、席から身を乗り出し正人と固い握手をした。隼人にも笑顔で握手を求めて来たので、つたない英語で初めましてと挨拶を交わした。
 黒いスーツとネクタイ姿のジャンは、映画でよく見るFBI捜査官のように隼人の目には映った。
 正人さんも、ノーネクタイだがいつも黒いスーツを着ている。
 DDの職員は皆、黒のスーツを着るのを義務付けられているのかもと、隼人ははだけたシャツからだらしなくTシャツが見える自分の服装が気になった。

 離陸後、シートベルト着用の掲示板の光が消えると、キャビンアテンダントの女性がコーヒーを持ってきてくれた。隼人はコーヒーをすすりながら、正人に何気なく聞いた。
「正人さん、あの人、ジャンさんとは知合いですか?」
「昔馴染みだよ。軍隊でも一緒だった」
「えっ、正人さんは軍隊に居たのですか?」
「そうだ、昔の話だがアメリカ軍に所属していた」
「ふーん、そうなんですね」
 隼人は正人の表情から、軍隊に関する事をあまり深く聞かない方が良いと察した。
「ジャンさんは、DDで働いているのですか?」
「彼は、アメリカ支部に所属するヴァンパイアハンターだよ」
「ヴァンパイアハンター?」と、隼人は初めて聞いた名称だったが、言葉尻から何となく想像は出来た。
 現代でもヴァンパイア、吸血鬼、が居る。今まで彼自身も空想の産物だと思っていた鬼や悪魔、妖怪に悪霊と戦い見て来たので、何の疑問も持つことなくすんなりと受け入れてしまった。
「ワーウルフですよね、今回の仕事は。何故、ヴァンパイアハンターのジャンさんが同じ飛行機に乗っているのでしょう」
「俺にも分からない、今回の仕事はアメリカ支部との共同作業では無いはずだし」
 正人は席を立つとジャンの横に座り、彼と話をする。
『ジャン、何年ぶりだよ』
『3,4年ぶりだな。元気にしていたか、正人』
『ああ、元気だが年だけ食ったかな。しかし、どうしてお前がこの飛行機に乗っているのだ』
『俺なりのけじめを付けたくて、お前達の邪魔はしないから、何も言わず一緒に連れて行ってくれないか?』
『けじめ、訳ありか?』と、正人は両腕を組み考えるような仕草をした。
『今は理由を話せない、すまない』
 その言葉を最後にジャンは、口を閉ざして下を向く。彼の肩を軽く叩いた後に正人は、席を離れた。隼人には、正人とジャンの話す流暢な英語を聞き取れる訳も無く、彼らの会話の内容は分からなかった。

 大阪から沖縄まで約2時間。昼間のフライトなら窓から外の景色を楽しむことも出来たが、夜のフライトでは寝る以外に何も出来ない。
 ガクッと上半身が浮きそうになる衝撃で、隼人は目を覚ます。着陸したのかなと横を見ると、正人はまだ熟睡している。疲れているのに申し訳ないなと、感じながらも隼人は正人の身体を揺すった。
「正人さん、着きましたよ」
「もう、着いたのか。あれ、ジャンは?」
「先に降りられましたよ」
「俺達も行くか」と、正人はダルそうに伸びをしながら大きな欠伸をした。
 那覇空港を出ると、正人と隼人はゆいレールに乗りおもろまち駅で降りた。駅を出ると公園が広がる、暖かく湿った空気は彼らに南国を感じさせるのに十分だった。
 駅の直ぐそばには、正面玄関にGALLERIAと書かれた建物があり、少し離れた所には三角形が3つ書かれた看板が見える。そこは、デューティーフリーショップと沖縄のショッピングモールだった。
「レンタカーショップは何処ですかね?」と、隼人は辺りを見回すが、それらしい建物は見当たらなかった。
「ん、この中だよ」と、正人はデューティーフリーショップを指さした。
 正人の手配していた車は、黒のボックスカー。
 二人だけなのにどうしてこの車を選んだのか。
 いつもと同じ車種、正人は乗り慣れたこの手の車が好きなだけだった。
「これなら、乗り慣れているし、金砕棒や荷物も載せやすいだろ」
 得意げに話をしながら運転する正人は、沖縄の高速道路である沖縄自動車道に入ると、北に車を走らせた。沖縄南インターチェンジを出て一般道に入り、嘉手納基地のゲートへと向かう。
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