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会議 ②
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茜は、自分の知っている限りの桜の過去を隼人に話す。
幼い頃から強力な守護霊に護られる桜は、ヴァチカンから有望なエクソシストになると期待されていた。そのため、中学生になるとエクソシストになるための見習いになり、教育を施された。中学を卒業すると、アメリカに渡りカトリック教会で実習も兼ね修行をしていたらしい。その時は、アメリカの祖父母の家に預けられたそうだ。
祖父母と暮らしながら桜は、修行を続けていた。しかし、ある日、下位悪魔に襲われ目の前で祖父は命を落とした。未熟な桜を庇い祖父は命を落としたと茜は聞いたそうだが、それ以上の事は桜から聞いていなかった。
目の前で大切な人の命が奪われた、それ以来、彼女は自分より弱い人、特に男性を拒絶するようになったらしい。
「桜の問題は、異性が嫌いとかじゃないと思うの」
「桜と初めてあった時、近づくなオーラを全身で出していましたよ」
「自分の為に、特に大切な人が自分の目の前で不幸になるのを見たくなくて、無意識に拒絶していたのよ。それが、この間の隼人君の行動が彼女の閉ざした心に響いたようね」
「俺の行動ですか・・・」
「命懸けで自分を助けてくれた。しかもその人は自分より強く、簡単には死なない。そうなると、見る目が180度変わるわよ」
「そうじゃ、惚れる理由には十分じゃろ」
「は、は、は・・・、血まみれで壮絶だったけどな」と、正人が笑った。
「好かれるのは、正直、男として嬉しいですが」
「それで、問題は隼人君が桜の事をどれくらい理解してあげられるかなのよ」
「でも、まだ、僕は桜の事をそんな風に見ていませんけど」
茜が当たり前でしょと言わんばかりの口調で、隼人に質問をする。
「桜、可愛いでしょ」
「そりゃ、可愛いですけど」
「付き合ってと、言われたらどうするの?」
「つ、つ、・・・付き合うと思います」
「あら、あら、思っていた以上に正直な答え」
「男なら普通、拒否しませんよ」
「もし、恋人になって二人っきりの時に桜が迫ってきたらどうする?」
「うっ、答えなくては駄目ですか?」
「重要な質問よ、答えて」
「流れに任せます」
「一線を越えちゃうってことね?」
「そうですよね、流れのままに進んでしまえば」
「ブブー、不正解!」と、茜は隼人の頭にチョップした。
隼人はあっけに取られた。
この人達は、俺をからかっているのか?
このやり取りは、そんなに重要な事なのか?
「茜の質問の意図が分からない様だな」と、正人は茜に代わって隼人に質問を続けた。
「意味が分かりませんよ、恋人同士なら普通の行為じゃないですか?」
「普通ならな、桜と恋人になるなら、話はまた別だ」
「別なのですか?」
「隼人、エクソシストとしての桜は、修道女と同じだ」
「修道女ですか?」
「修道女だ。神に仕え、祈りを捧げ、貞操を守る」
「桜も神に仕え、祈りを捧げ、貞操を守っている・・・、処女?」
「そうだ、もし、君と桜が一線を越えれば、桜は貞操を失う。そうなれば、彼女は守護霊を呼び出せなくなる可能性が高くなる」
「そんな、彼女は一生、結婚できないのすか?」
「出来るよ、ちゃんと段取りを踏めばね。ただし、若気の至りで君が桜を抱いてしまうと、ヴァチカンが黙っていないだろうね」
「ヴァチカンですか。黙っていないとは、何かしてくるのですか?」
「大切なエクソシストを守るために、君を排除しようとする。場合によっては、命を狙われる可能性がある」
「またですか。この世界は、直ぐに命を狙われますね」
「は、は、は、しょうがないよ。数少ない大切なエクソシストだからね、しかも桜の守護天使は大天使だから。付き合う場合でも結婚するにしても、ヴァチカンの承諾が必要だからね」
はあ、みんなが心配しているのは、行動力が半端ない桜が恋焦がれて一線を越えようとしても俺が理性を保って制止しろと、言っているように隼人には聞こえる。
「まだ、付き合っても居ませんが、心得ておきますよ」
「そうじゃ、小僧、龍の力で不死に近くてもヴァチカンから刺客をバンバン送られてきたら、儂等にも迷惑が掛かるからのう。気を付けるのじゃ」
「そうよ、隼人君、恋人=セックスだけじゃないからね」
茜のストレートな表現に隼人は、顔を赤らめた。
「分かりました、彼女とは理性を持って接します」
「宜しい、小僧。しかし、正人は逆じゃぞ!いい加減、手を出せ。いつまで待たせておくのじゃ」
話しを振られた正人は、やばいとばかりに席を立ち事務所を出て行こうとする。しかし、茜は素早く立ち上がり後ろを通り過ぎようとした正人の正面に立った。
「待ちますけど、いい加減、私の気持ちに答えてよ!」と、茜は正人の両頬をつまみ上げた。
「イテテテ・・・、茜、もう少しだからこれで我慢してくれ・・・」
正人は、茜の耳元に顔を近づけると何か囁いた。すると、茜は真っ赤になり、つまんでいた手を正人の頬から離した。
正人は茜を軽く抱きしめると彼女の頬に軽くキスをした。
「隼人、飲みに行くから付き合え。男同士で語りあうぞ」
「正人さん、良いんですか?」と、隼人は茜の方を見た。
「もう、卑怯なんだから。二人とも行って」と、膨れっ面になった茜はドアの方を指さした。
「儂も行くのじゃ」と、ドアノブを掴んだ正人の肩にひょいっと長老が飛び乗った。
男達だけで楽しく語らう為、彼らは事務所を後にした。
残された茜は、隼人が来てから正人はより一層明るくなったので嬉しく感じる。ただ、女性一人だけ仲間に入れてもらえず取り残された事に腹を立てていた。
幼い頃から強力な守護霊に護られる桜は、ヴァチカンから有望なエクソシストになると期待されていた。そのため、中学生になるとエクソシストになるための見習いになり、教育を施された。中学を卒業すると、アメリカに渡りカトリック教会で実習も兼ね修行をしていたらしい。その時は、アメリカの祖父母の家に預けられたそうだ。
祖父母と暮らしながら桜は、修行を続けていた。しかし、ある日、下位悪魔に襲われ目の前で祖父は命を落とした。未熟な桜を庇い祖父は命を落としたと茜は聞いたそうだが、それ以上の事は桜から聞いていなかった。
目の前で大切な人の命が奪われた、それ以来、彼女は自分より弱い人、特に男性を拒絶するようになったらしい。
「桜の問題は、異性が嫌いとかじゃないと思うの」
「桜と初めてあった時、近づくなオーラを全身で出していましたよ」
「自分の為に、特に大切な人が自分の目の前で不幸になるのを見たくなくて、無意識に拒絶していたのよ。それが、この間の隼人君の行動が彼女の閉ざした心に響いたようね」
「俺の行動ですか・・・」
「命懸けで自分を助けてくれた。しかもその人は自分より強く、簡単には死なない。そうなると、見る目が180度変わるわよ」
「そうじゃ、惚れる理由には十分じゃろ」
「は、は、は・・・、血まみれで壮絶だったけどな」と、正人が笑った。
「好かれるのは、正直、男として嬉しいですが」
「それで、問題は隼人君が桜の事をどれくらい理解してあげられるかなのよ」
「でも、まだ、僕は桜の事をそんな風に見ていませんけど」
茜が当たり前でしょと言わんばかりの口調で、隼人に質問をする。
「桜、可愛いでしょ」
「そりゃ、可愛いですけど」
「付き合ってと、言われたらどうするの?」
「つ、つ、・・・付き合うと思います」
「あら、あら、思っていた以上に正直な答え」
「男なら普通、拒否しませんよ」
「もし、恋人になって二人っきりの時に桜が迫ってきたらどうする?」
「うっ、答えなくては駄目ですか?」
「重要な質問よ、答えて」
「流れに任せます」
「一線を越えちゃうってことね?」
「そうですよね、流れのままに進んでしまえば」
「ブブー、不正解!」と、茜は隼人の頭にチョップした。
隼人はあっけに取られた。
この人達は、俺をからかっているのか?
このやり取りは、そんなに重要な事なのか?
「茜の質問の意図が分からない様だな」と、正人は茜に代わって隼人に質問を続けた。
「意味が分かりませんよ、恋人同士なら普通の行為じゃないですか?」
「普通ならな、桜と恋人になるなら、話はまた別だ」
「別なのですか?」
「隼人、エクソシストとしての桜は、修道女と同じだ」
「修道女ですか?」
「修道女だ。神に仕え、祈りを捧げ、貞操を守る」
「桜も神に仕え、祈りを捧げ、貞操を守っている・・・、処女?」
「そうだ、もし、君と桜が一線を越えれば、桜は貞操を失う。そうなれば、彼女は守護霊を呼び出せなくなる可能性が高くなる」
「そんな、彼女は一生、結婚できないのすか?」
「出来るよ、ちゃんと段取りを踏めばね。ただし、若気の至りで君が桜を抱いてしまうと、ヴァチカンが黙っていないだろうね」
「ヴァチカンですか。黙っていないとは、何かしてくるのですか?」
「大切なエクソシストを守るために、君を排除しようとする。場合によっては、命を狙われる可能性がある」
「またですか。この世界は、直ぐに命を狙われますね」
「は、は、は、しょうがないよ。数少ない大切なエクソシストだからね、しかも桜の守護天使は大天使だから。付き合う場合でも結婚するにしても、ヴァチカンの承諾が必要だからね」
はあ、みんなが心配しているのは、行動力が半端ない桜が恋焦がれて一線を越えようとしても俺が理性を保って制止しろと、言っているように隼人には聞こえる。
「まだ、付き合っても居ませんが、心得ておきますよ」
「そうじゃ、小僧、龍の力で不死に近くてもヴァチカンから刺客をバンバン送られてきたら、儂等にも迷惑が掛かるからのう。気を付けるのじゃ」
「そうよ、隼人君、恋人=セックスだけじゃないからね」
茜のストレートな表現に隼人は、顔を赤らめた。
「分かりました、彼女とは理性を持って接します」
「宜しい、小僧。しかし、正人は逆じゃぞ!いい加減、手を出せ。いつまで待たせておくのじゃ」
話しを振られた正人は、やばいとばかりに席を立ち事務所を出て行こうとする。しかし、茜は素早く立ち上がり後ろを通り過ぎようとした正人の正面に立った。
「待ちますけど、いい加減、私の気持ちに答えてよ!」と、茜は正人の両頬をつまみ上げた。
「イテテテ・・・、茜、もう少しだからこれで我慢してくれ・・・」
正人は、茜の耳元に顔を近づけると何か囁いた。すると、茜は真っ赤になり、つまんでいた手を正人の頬から離した。
正人は茜を軽く抱きしめると彼女の頬に軽くキスをした。
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「もう、卑怯なんだから。二人とも行って」と、膨れっ面になった茜はドアの方を指さした。
「儂も行くのじゃ」と、ドアノブを掴んだ正人の肩にひょいっと長老が飛び乗った。
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