有限会社DIUD 物の怪退治をする会社でアルバイトをする事になりました!

川村直樹

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生霊 ②

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 隼人の金色の瞳を隠すためのカラーコンタクトを購入した後、歩き疲れた二人は休憩しようと先斗町にあるレトロな喫茶店に入った。
「桜、宮田君の捜査の件、どんな状況なのか聞いて良いか?」
「良いわよ、あれから彼の自宅を賀茂さんと一緒に行ったけど、特に変な物は見つからなかったから」
「見つからなった?」
「そうなの、悪魔崇拝的な資料や怪しい小道具とかも。何もなかったの」
「なら、彼は犯人じゃないと言う事か?」
「まだ、断定できないわよ。老人ホームのアルバイトを辞めてから彼は、行方不明になっているから」
 行方不明のままか、彼に何があったのだろうか。
 事件に巻き込まれた可能性もあるし、無事だと良いが。
「賀茂さんは、何か言っていたか?」
「事件の真相を知るためにも、失踪した宮田君の行方を捜すのを優先すると言っていたわ」
 隼人は宮田の無事を祈るしかないのかと、腕を組んで大きく息を吸い込む。
 夕暮れ時、雰囲気の良い通りを桜と一緒に歩いていると、チリーン、チリーンと鳴る鈴の音が隼人の耳に入る。人通りが多い雑音の中なのに、はっきりと聞こえるその鈴の音は徐々に近づいて来る。
 昼間の鈴の音と同じだと思った瞬間、並んで歩く桜と隼人の間に昼間出会った女の幽霊が割って入ってきた。
 えっ、二人は間に居る幽霊を見て驚く。無表情だった女の幽霊の表情は一変し、般若のような形相になった。
「やっぱり、あなた・・・私のものよ・・・お前には渡さない・・・」
 桜を襲わんばかりの形相で両手を上に上げて掴みかかろうとしたので、彼女はその場にしゃがみ込んだ。隼人は、女の幽霊の腕を掴もうと手を伸ばしたが、実態が無いので掴めなかった。
「この女を選ぶのか・・・悔しい・・・私だけのもの・・・」
 一瞬、時間が止まり静寂に包まれると、女の幽霊は隼人に抱きつく。
 桜の目の前で、女の幽霊に抱き付かれた隼人は女と一緒にその場から消えた。
「な、な、何が起こったの?」
 桜が立ち上がると、何事も無かったかのように時間が進み始める。
 ざわざわと人が行きかう通りで、一人になった桜は、まるで狐に化かされたかのように呆然と立ち尽くした。

 勢いよくDD事務所のドアが開くと、正人、茜、長老は息を切らす桜の姿を何事かと見る。
「元気があるのは良い事だが、もう少しお行儀よくドアを開けないか、桜」と、正人が自分の机でパソコンに向かい報告書を作成していた。
「はぁ、はぁ・・・、隼人が、消えたの」
「消えた、何かあったの?」と、茜は給湯室から桜の為にお水を持って来た。
「一緒に買い物をした帰りに、女の幽霊に連れ去られたの」
「怨霊の類か、しかし、お主は小僧と一緒に出掛けておったのか?」
「隼人と仲良くなったのか、良い事だ」と、正人は無頓着に答えた。
「一緒に出掛けていたのは置いといて、隼人は何処に行っちゃったの?」
「多分、この世とあの世の狭間に連れ去られた可能性が高いな」と、正人。
「そうじゃな、あの世に行けない魂は、この世とあの世の狭間を行き来しているからな。しかし、何故? 小僧が連れ去れれるのじゃ」、長老は他人事の様だ。
「誰かと間違えたか、仲良く歩くあなた達に嫉妬したのかも」と、茜が指を唇に当てながら話した。
「ははは、幽霊が嫉妬するぐらい仲が良いのか。隼人は、鈍感だから大丈夫かな」と、正人は桜の話に関心が移ってしまい、報告書を作成する手を止めてしまった。
 正人の態度に茜と長老は、彼を指さして大声で怒鳴った。
「鈍感なのは、あなた、お前、だ!」
 ぐうの音も出ない正人は、一度、視線を皆からそらしてから話を無理矢理戻した。
「隼人を連れ戻す方法を考えないとな・・・」
「しょうがないわね、私が何とかします」
 茜は受話器を取ると、電話をかける。
「もしもし、お久しぶりです。山本茜ですが、お願いがありまして・・・」
 電話をする茜の机の上を悠々と通り過ぎると、長老は隼人のパソコンのキーボードを踏み台にして肩に乗った。
「長老、気を付けてください。まだ、報告書のデータを保存していませんから」
「細かい事を気にするな、正人。茜は恐らくあそこに連絡を入れていると思うのだが、全員で小僧の救出に出掛けるか」
「そうですね、あそこからならあの世にも黄泉よみにも行けますから」
「どこに行くの、隼人を助けられる方法はあるの?」
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