有限会社DIUD 物の怪退治をする会社でアルバイトをする事になりました!

川村直樹

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豆狸 ④

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 酒が進むと、切り株の上で順番に狸たちが芸を披露していく。
 狸たちは、月を背景に器用に踊る。
 3匹の狸がとっておきの芸を見せると言って、どこで手に入れたのか三味線と太鼓を持って登場すると、空に向かってキュゥーンと一鳴きした。
 白い煙に包まれ、芸子さんが3人現れた・・・違う化けた!
 長老と金長は、楽しそうに踊りを披露する芸子に合わせて踊りだす。
 夜更けに山の中でこんな宴会を狸達がしているとは、誰も想像できない。飲み慣れていない隼人は、飲むペースが早すぎたのか酔っぱらっていた。
 長老と金長が両方から彼の服を引っ張った。
「小僧、儂と金長にお主の芸を見せるのじゃ」
 長老の無茶ぶりが来たよ。
 酔いも回り気持ち良いし、どんな芸を見せてもみんな喜んでくれるかな。
 隼人は高校の文化祭で披露したブレイクダンスを踊りだした。最初、狸たちは初めて見る踊りに驚いていたが、隼人の見せる軽快な動きが気に入ったのか彼と一緒に踊りだした。
 隼人と狸たちが繰り広げるダンスをよほど気に入ったのか、長老と金長は地面に転がり大喜びしていた。
 
 夜が明ける前に話をまとめるかと、正人が立ち上がった。
「良い、話し合いの場となり感謝する。どうだろうか、近いうちにこの地には多くの人間がやって来る。その前に信楽か伊賀の山へ、住処を移動してもらえないだろうか」
「ここは、長年、俺達が住んできた土地だ。人間の勝手に屈したくない」
 豆狸の親方の好戦的な発言に狸達は、クゥーンと鳴くと姿を変える。
 大男、一つ目の化け物、作業服を着た男性、艶っぽい女子に・・・子供?
 姿を変えるのは良いが、それぞれが好き勝手に思い描いた姿に変化しているように、隼人の目には映る。変化しなかった狸は牙をむきだし、正人達を威嚇してきた。
「おい、おい、争いはお互いの為にはならんぞ」と、長老が猫又へと姿を変えた。
 豆狸の親方と襲い掛かろうとする狸達に、金長は説得を試みる。
「人間のする事に腹を立てるのは当然だが、無駄な殺し合いをしてはならない。正人たちの様に我々を理解する人間も居るのだ。我々の為を思って言ってくれていると、信じようじゃないか」
 話を聞いていた隼人は、狸の方が人間より平和的なのかも知れないと感じる。酔った勢いで、彼は話の中に入ってしまった。
「申し訳ない、僕たち人間は何の考えも無しに自然を壊し、あなた達の住処を奪う。本当に申し訳なく思っています」
 隼人が勢いよくお辞儀をして頭を下げると、しばし沈黙の後、豆狸の親方の甲高い笑い声と狸達の鳴き声が夜空に響いた。
「面白い、人間の若者だな。金長殿の面子もあるし、お前たちを信じることにしよう。信楽方面に住処を移すことにするよ」
 話がまとまると、再び狸達との宴が始まり、日が昇るまで続いた。

 山を下りると、流石に正人と隼人は車の中で酔いが覚めるまで動けなくなった。
 隼人が目を覚ますと、優に6時間は寝ていた。
 うう、気持ち悪い。これが、二日酔いなのか?
 口の中がカラカラで飲み物が欲しい。彼は外に出てプレハブ小屋の横にあった自販機で水を買うと、一気に飲み干した。
「今回の話し合いは、隼人のおかげで上手く行ったよ」
 隼人は昨晩の事を思い出そうとしたが、ブレイクダンスをする所までしか覚えていなかった。
 まあ、良いか。話し合いが上手く行ったのなら。
 宮田君の件もなんか吹っ切れたような気持になったし。
 深く考えても、今は何も出来ないから仕方が無い。
 地元に戻る前、金長は茜から最高品種の日本酒をお土産にもらった。上機嫌で風呂敷に入れた日本酒を抱えると、隼人にアドバイスをする。
「隼人殿、そなたの力は強い。正しい使い方をするためにも正人殿を良く見て学ぶのだぞ」
「金長さん、有り難うございました」と、全員が声を揃えた。
「また、そなたらとの宴会を楽しみにしている」、事務所のドアを通り過ぎると消えるように金長は、阿波の国へと帰って行った。
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