有限会社DIUD 物の怪退治をする会社でアルバイトをする事になりました!

川村直樹

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目一つ鬼 ②

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 遠慮を知らない、隼人の賀茂への質問が続く。
「正人さんが居なくても賀茂さんは、安倍晴明の様に強い式神や鬼を操れないのですか?」
「ははは・・・、君は面白い事を言うね。安倍晴明は、別格だよ。彼の様に十二天将は、使役できないよ。それに、僕の仕事は退魔だけが専門と言う訳じゃ無いからね」
 さらっと聞き流したが具体的になぜ安倍晴明は別格なのか、十二天将とは何なのか、隼人は理解していない。
「皇宮警察の陰陽師は、何をしているのですか?」
「私の仕事は、広い意味でこの国を護ること」
「どう言う事ですか?」
「主に、皇室での儀式や祈祷、天文学の研究、風水などでこの国の行く末を占い護っている。まあ、悪霊や鬼など退魔の仕事もあるけどね。あまり詳しくは、教えて上げられないけど」

 あれこれ、隼人が賀茂に質問していると古民家の裏、丁度裏庭のあたりで轟音と共に土煙が上がった。正人は一つ目の鬼と戦っている最中で、もの凄い音が周囲に響き渡る。
「目一鬼だ、警戒しろ!」
 正人の声がすると、一つ目の鬼が崩れた古民家を飛び越えて賀茂と隼人の前に姿を現わす。話で聞いた通りの一つ目、額に立派な角が1本あり全身が赤い、身長は3メートルを超えている。隼人は、賀茂の前で拳銃を構えたが、鬼の威圧に圧倒された。
「隼人君、私の傍から離れてはいけないよ」、ビビって動けなくなっていた隼人の肩を賀茂は引っ張った。
「うりゃぁぁぁぁぁ・・・」
 正人も古民家を飛び越え、目一鬼を後ろから殴りつける。そこから、鬼神化した正人と目一鬼との壮絶な殴り合いが始まった。
「ギャァァ、・・・グルルルル」
 目一鬼は体制を崩しながらも振り返り、正人に右フックを食らわせる。
 お互いに何発も顔を殴り合うが、両者とも倒れる気配は無い。
 唇を切ったのか、口の血を拭うと正人も負けじと目一鬼の腹を殴りつけた。
「ウ、ガァァァァァ・・・」
 腹を殴られ前のめりになった目一鬼の顔めがけて正人は膝蹴りを入れたが、目一鬼は攻撃を避け正人の足を掴み、古民家に向けて彼を投げ飛ばした。
 投げ飛ばされた正人の動きが止まり、目一鬼は狙いを賀茂と隼人へ変える。
 とっさに隼人は、拳銃の引き金を引いた。
 来るな!、近づいて来るなよ! 
 目一鬼の分厚い胸板に当たった銃弾は、貫通することなく体内に留まった後、メリメリと体から排出されて地面に落ちた。
 隼人は自分の目を疑う光景に焦りを感じ、銃を撃ち続ける。
 ゆっくりと、目一鬼は、彼の方に向かって歩みを進める。
 賀茂を見ると、動じることなく冷静だった。
「鬼に拳銃は効かないよ、鬼塚君、休むのも良いがそろそろ抑え込んでくれないか? 封印の準備は、出来ているのだが」
 賀茂の言葉を聞き正人の倒れていた場所を見ると、彼の姿は無かった。
「えっ?」と、思った瞬間に正人は目一鬼を後ろから抱き上げ、そのまま封印されていた場所に引きずって行く。正人は、賀茂と隼人の目の前で鬼を地面にひれ伏せさせた。
 
 賀茂は、指で印を切りながら九字を唱え始める。
青龍せいりゅう白虎びゃっこ朱雀すざく玄武げんぶ勾陳こうちん帝台ていたい文王ぶんおう三台さんたい玉女ぎょくにょ
 賀茂が九字を唱えている途中で、正人は結界から外に出た。そのまま結界の中に居続けると目一鬼と一緒に封印されてしまうからだ。
 円形の結界が光に包まれると、目一鬼は、封印されていた岩に吸い込まれる。
 九字を唱え終えた賀茂は、手のひらに置いた封印札を軽く息で吹き飛ばすと、風で揺らぐようにお札は飛んでいき、岩に貼りついた。
「これで、封印は完了だ。ご苦労様」

 鬼神化を解いた正人の服は汚れていたが、全く怪我をしいない。
「怪我は、無いのですか?」
「ああ、問題ないよ隼人君。鬼神化している時の回復力は凄いからな」
 隼人は感心する。はあ、あれだけ殴り合っても怪我しないとは、不死身だな。
「封印した岩は、どうしますか?」
 正人の問いかけに賀茂は、「近くの神社に預けましょう。ここにあると、邪魔でしょうから」
 涼し気に先導する賀茂の後ろを汗だくになりながら、正人と隼人の二人で岩を持ち神社へ運んだ。
 京都へ帰る間際、正人と賀茂に隼人はある提案をする。
 せっかく山陰地方の島根県に来たのだから、せめてどこかに寄ってから帰りたかったからだ。
「あの、汗だくになったので温泉に入ってから帰りませんか?」
「そうだな、このままだと、俺と隼人君はかなり汗臭いな」
「お二人が、行きたいのなら私もお付き合いしますよ」
 大人の二人は、快く隼人の提案に賛成した。
「出雲市駅の傍に浴室がランプで照らされ、立派な檜の浴槽の天然温泉があるので、そこに行きませんか?」
「それでは温泉に入った後は、私の奢りで出石そばを食べて帰りましょう。お二人に頑張って貰ったお礼です」
 隼人は運転席に座ると、温泉と出石そばを堪能するため車を走らせた
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