29 / 86
目一つ鬼 ①
しおりを挟む
皇宮警察本部からの依頼で正人と隼人は、陰陽師の賀茂と一緒に島根県雲南市を訪れていた。松江市と出雲大社のある出雲市の真ん中に位置する山に囲まれた町、3人を乗せる車は市街から三刀屋川の上流を進む。市街地を抜けると、民家より田畑の方が多い。
助手席に座る賀茂の話によると、古民家の解体作業中に床下からお札の貼られた岩が出て来たのだが、工事をしていた人がその岩を動かしてしまった。そうすると大きな一つ目の鬼が現れて、作業現場にあったショベルカーを倒し立ち去った。驚いた作業員たちは、作業の手を止め一目散にその場から逃げだしたそうだ。幸い怪我人や死者は、出ていないと報告を受けているらしい。
封印されていた鬼の出現、目覚めた鬼は直ぐ本来の力を発揮できず、周辺の農家で飼育されている家畜やペットを襲っていた。町で起こる奇怪な事件が住民に及ぶ前に皇宮警察本部は、事態の収束を陰陽師の賀茂に託した。今回のDDの仕事は、賀茂のサポートである。
隼人は陰陽師がどのように鬼を封印するのか興味津々だったが、運転する正人は何度も陰陽師と一緒に仕事をしている様子だった。
正人は多分ここだと思うと、車を解体途中の古民家の前に止める。
賀茂は目的地を地図で確認すると車を降り、鳥形の紙に息を吹きかけ式神を出した。以前、正人と隼人を監視していた白い鳥は、空高く飛んでいく。
「鬼の出す邪気を私の式神で追跡する」
「式神で見つけられるのですか?」と、陰陽師の知識の無い隼人。
「式神は、私の目になる。現代風に例えるなら、あれはドローンだね」
賀茂は式神が鬼を探している間、今回の鬼に関する説明をしてくれる。初めて一緒に仕事をする隼人の為に注意点を教えたかったのだ。
「この辺には、一つ目の人食い鬼、目一鬼や一つ目の妖怪野馬の言い伝えがある。どちらも、人食いなので十分注意して欲しい。今は家畜しか襲っていないが、いつ人を襲い始めるか分からないからね」
上空を舞う式神は、裏山の中腹部の真上をクルクルと旋回している。
「目一鬼を見つけた様だ、鬼塚君は鬼神化して鬼を捕まえて来てくれ。隼人君には、結界を作る作業を手伝って欲しい」
正人は式神が旋回する真下を目指し、建物の裏へと姿を消した。隼人は、賀茂に言われるまま封印されていた岩を中心に結界を作るための杭打ちをする。そして均等に打ち終えた杭に、白い縄を結び付けていった。
「賀茂さん、準備できました。後は、何をすれば良いですか?」
「隼人君は、私の隣で護衛でもしてもらいましょうかね」
隼人は素直に賀茂の横に並んで立つ。彼はジャケットのボタンを外すと、ガンホルダーから拳銃を取り出し周囲を警戒する。
「正人さん、遅いですね」
「封印が解けてしまってから、時間はさほど経っていませんが、鬼ですから。本来の力が出せないとしても、簡単には捕まえられませんよ。鬼塚君が戻ってくるまで、待つしかありませんね」
正人を待つ間に隼人は、賀茂に質問をする。
不躾になるかもしれないが、自分の知らない情報を賀茂なら何か教えてくれるかも知れないと期待したからだ。
「賀茂さん、聞いても良いですか?」
「何だい?話せる事は、教えて上げるよ」
「以前、京都護衛署にお邪魔した時、正人さんに降らないかと言っていましたが、正人さんが鬼神化できるからですか?」
「うん、鬼塚君が私の右腕なら心強いからね」
「確かに、鬼神化した正人さんは強いですから」
「しかし、それだけでは無いのだよ。彼は鬼の血を継ぐものだが、ただの鬼では無い。鬼神、荒ぶる神の方だから」
「荒ぶる神ですか?」、隼人には何を意味するのか分からなかった。
「説明すると四天王である持国天、増長天、広目天、多聞天には八部鬼衆と言われる鬼神が仕えている。その中で多聞天、毘沙門天とも呼ぶ、の眷属である羅刹の力を鬼塚君は持っている。だから私は、彼に興味がある」
どんな理由でそうなったのか想像すら出来なかったが、隼人は神にも近い存在の血を引く正人に脅威を感じた。
しかし、凄いな正人さんの持つ力は荒ぶる神の力か。
桜も守護天使の力を使うエクソシストだし。
何もない俺は、この人達と一緒に仕事をして良いのだろうか?
まあ、深く考えず凡人なりにしっかりサポートしよう。
助手席に座る賀茂の話によると、古民家の解体作業中に床下からお札の貼られた岩が出て来たのだが、工事をしていた人がその岩を動かしてしまった。そうすると大きな一つ目の鬼が現れて、作業現場にあったショベルカーを倒し立ち去った。驚いた作業員たちは、作業の手を止め一目散にその場から逃げだしたそうだ。幸い怪我人や死者は、出ていないと報告を受けているらしい。
封印されていた鬼の出現、目覚めた鬼は直ぐ本来の力を発揮できず、周辺の農家で飼育されている家畜やペットを襲っていた。町で起こる奇怪な事件が住民に及ぶ前に皇宮警察本部は、事態の収束を陰陽師の賀茂に託した。今回のDDの仕事は、賀茂のサポートである。
隼人は陰陽師がどのように鬼を封印するのか興味津々だったが、運転する正人は何度も陰陽師と一緒に仕事をしている様子だった。
正人は多分ここだと思うと、車を解体途中の古民家の前に止める。
賀茂は目的地を地図で確認すると車を降り、鳥形の紙に息を吹きかけ式神を出した。以前、正人と隼人を監視していた白い鳥は、空高く飛んでいく。
「鬼の出す邪気を私の式神で追跡する」
「式神で見つけられるのですか?」と、陰陽師の知識の無い隼人。
「式神は、私の目になる。現代風に例えるなら、あれはドローンだね」
賀茂は式神が鬼を探している間、今回の鬼に関する説明をしてくれる。初めて一緒に仕事をする隼人の為に注意点を教えたかったのだ。
「この辺には、一つ目の人食い鬼、目一鬼や一つ目の妖怪野馬の言い伝えがある。どちらも、人食いなので十分注意して欲しい。今は家畜しか襲っていないが、いつ人を襲い始めるか分からないからね」
上空を舞う式神は、裏山の中腹部の真上をクルクルと旋回している。
「目一鬼を見つけた様だ、鬼塚君は鬼神化して鬼を捕まえて来てくれ。隼人君には、結界を作る作業を手伝って欲しい」
正人は式神が旋回する真下を目指し、建物の裏へと姿を消した。隼人は、賀茂に言われるまま封印されていた岩を中心に結界を作るための杭打ちをする。そして均等に打ち終えた杭に、白い縄を結び付けていった。
「賀茂さん、準備できました。後は、何をすれば良いですか?」
「隼人君は、私の隣で護衛でもしてもらいましょうかね」
隼人は素直に賀茂の横に並んで立つ。彼はジャケットのボタンを外すと、ガンホルダーから拳銃を取り出し周囲を警戒する。
「正人さん、遅いですね」
「封印が解けてしまってから、時間はさほど経っていませんが、鬼ですから。本来の力が出せないとしても、簡単には捕まえられませんよ。鬼塚君が戻ってくるまで、待つしかありませんね」
正人を待つ間に隼人は、賀茂に質問をする。
不躾になるかもしれないが、自分の知らない情報を賀茂なら何か教えてくれるかも知れないと期待したからだ。
「賀茂さん、聞いても良いですか?」
「何だい?話せる事は、教えて上げるよ」
「以前、京都護衛署にお邪魔した時、正人さんに降らないかと言っていましたが、正人さんが鬼神化できるからですか?」
「うん、鬼塚君が私の右腕なら心強いからね」
「確かに、鬼神化した正人さんは強いですから」
「しかし、それだけでは無いのだよ。彼は鬼の血を継ぐものだが、ただの鬼では無い。鬼神、荒ぶる神の方だから」
「荒ぶる神ですか?」、隼人には何を意味するのか分からなかった。
「説明すると四天王である持国天、増長天、広目天、多聞天には八部鬼衆と言われる鬼神が仕えている。その中で多聞天、毘沙門天とも呼ぶ、の眷属である羅刹の力を鬼塚君は持っている。だから私は、彼に興味がある」
どんな理由でそうなったのか想像すら出来なかったが、隼人は神にも近い存在の血を引く正人に脅威を感じた。
しかし、凄いな正人さんの持つ力は荒ぶる神の力か。
桜も守護天使の力を使うエクソシストだし。
何もない俺は、この人達と一緒に仕事をして良いのだろうか?
まあ、深く考えず凡人なりにしっかりサポートしよう。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる