有限会社DIUD 物の怪退治をする会社でアルバイトをする事になりました!

川村直樹

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目一つ鬼 ①

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 皇宮警察本部からの依頼で正人と隼人は、陰陽師の賀茂と一緒に島根県雲南市しまねけんうんなんしを訪れていた。松江市と出雲大社のある出雲市の真ん中に位置する山に囲まれた町、3人を乗せる車は市街から三刀屋川みとやかわの上流を進む。市街地を抜けると、民家より田畑の方が多い。
 
 助手席に座る賀茂の話によると、古民家の解体作業中に床下からお札の貼られた岩が出て来たのだが、工事をしていた人がその岩を動かしてしまった。そうすると大きな一つ目の鬼が現れて、作業現場にあったショベルカーを倒し立ち去った。驚いた作業員たちは、作業の手を止め一目散にその場から逃げだしたそうだ。幸い怪我人や死者は、出ていないと報告を受けているらしい。
 封印されていた鬼の出現、目覚めた鬼は直ぐ本来の力を発揮できず、周辺の農家で飼育されている家畜やペットを襲っていた。町で起こる奇怪な事件が住民に及ぶ前に皇宮警察本部は、事態の収束を陰陽師の賀茂に託した。今回のDDの仕事は、賀茂のサポートである。
 隼人は陰陽師がどのように鬼を封印するのか興味津々だったが、運転する正人は何度も陰陽師と一緒に仕事をしている様子だった。
 
 正人は多分ここだと思うと、車を解体途中の古民家の前に止める。
 賀茂は目的地を地図で確認すると車を降り、鳥形の紙に息を吹きかけ式神を出した。以前、正人と隼人を監視していた白い鳥は、空高く飛んでいく。
「鬼の出す邪気を私の式神で追跡する」
「式神で見つけられるのですか?」と、陰陽師の知識の無い隼人。
「式神は、私の目になる。現代風に例えるなら、あれはドローンだね」
 賀茂は式神が鬼を探している間、今回の鬼に関する説明をしてくれる。初めて一緒に仕事をする隼人の為に注意点を教えたかったのだ。
「この辺には、一つ目の人食い鬼、目一鬼まひとつおにや一つ目の妖怪野馬のうまの言い伝えがある。どちらも、人食いなので十分注意して欲しい。今は家畜しか襲っていないが、いつ人を襲い始めるか分からないからね」

 上空を舞う式神は、裏山の中腹部の真上をクルクルと旋回している。
「目一鬼を見つけた様だ、鬼塚君は鬼神化して鬼を捕まえて来てくれ。隼人君には、結界を作る作業を手伝って欲しい」
 正人は式神が旋回する真下を目指し、建物の裏へと姿を消した。隼人は、賀茂に言われるまま封印されていた岩を中心に結界を作るための杭打ちをする。そして均等に打ち終えた杭に、白い縄を結び付けていった。
「賀茂さん、準備できました。後は、何をすれば良いですか?」
「隼人君は、私の隣で護衛でもしてもらいましょうかね」
 隼人は素直に賀茂の横に並んで立つ。彼はジャケットのボタンを外すと、ガンホルダーから拳銃を取り出し周囲を警戒する。
「正人さん、遅いですね」
「封印が解けてしまってから、時間はさほど経っていませんが、鬼ですから。本来の力が出せないとしても、簡単には捕まえられませんよ。鬼塚君が戻ってくるまで、待つしかありませんね」
 
 正人を待つ間に隼人は、賀茂に質問をする。
 不躾ぶしつけになるかもしれないが、自分の知らない情報を賀茂なら何か教えてくれるかも知れないと期待したからだ。
「賀茂さん、聞いても良いですか?」
「何だい?話せる事は、教えて上げるよ」
「以前、京都護衛署にお邪魔した時、正人さんに降らないかと言っていましたが、正人さんが鬼神化できるからですか?」
「うん、鬼塚君が私の右腕なら心強いからね」
「確かに、鬼神化した正人さんは強いですから」
「しかし、それだけでは無いのだよ。彼は鬼の血を継ぐものだが、ただの鬼では無い。鬼神、荒ぶる神の方だから」
「荒ぶる神ですか?」、隼人には何を意味するのか分からなかった。
「説明すると四天王である持国天じこくてん増長天ぞうじょうてん広目天こうもくてん多聞天たもんてんには八部鬼衆はちぶきしゅうと言われる鬼神が仕えている。その中で多聞天、毘沙門天とも呼ぶ、の眷属けんぞくである羅刹らせつの力を鬼塚君は持っている。だから私は、彼に興味がある」
 どんな理由でそうなったのか想像すら出来なかったが、隼人は神にも近い存在の血を引く正人に脅威を感じた。
 しかし、凄いな正人さんの持つ力は荒ぶる神の力か。
 桜も守護天使の力を使うエクソシストだし。
 何もない俺は、この人達と一緒に仕事をして良いのだろうか?
 まあ、深く考えず凡人なりにしっかりサポートしよう。
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