有限会社DIUD 物の怪退治をする会社でアルバイトをする事になりました!

川村直樹

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牛鬼 ③

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 警備員室の横にある入り口から施設に入ると、そこはバックヤードになっていた。人が3人並んで歩けるほどの通路幅、所々、蛍光灯は消え薄暗い。節約の為に蛍光灯を抜いているのだろうか?
 バックヤードから館内に入る前、正人は鬼神化し金砕棒を手にした。長老も本来の猫又の姿となり、正人と並んで隼人の前を進む。
 専門店街の店舗の照明は消されていたが、通路は明るかった。
 隼人は、銃を手に左右に並ぶ店舗を注意深く確認する。吹き抜けから2階だけで無く3階も見える、異変を見逃すまいと慎重に足を運ぶ。
 人が集まる施設、普段なら大勢の人で賑わう場所、閉店後の閑散としたショッピングセンターに入るのは隼人にとって初めてだったので、異世界のように感じる。
隼人は、フロアマップを確認した。
「正人さん、目的の店舗ばしょは、丁度この辺りの2階になります」
「そうか、なら上に移動しよう」と、正人と長老は、2階へ軽くジャンプするように飛び移った。
 隼人は、二人の行動に唖然とする。あの人達の様にジャンプして2階には行けない。遅れてはいけないと、慌てて動きを止めるエスカレーターを駆け上がった。
「ちょっと、置いて行かないでくださいよ!」

 2階のフロアに漂う異臭に思わず、隼人は鼻を塞いだ。なんだ、この匂い。もの凄く鼻に残る、嫌な匂い・・・腐敗臭か?
 正人と長老が、通路の真ん中で立ち止まっている。仮囲いされた店舗の前。
 隼人は二人に駆け寄ったが、先にドアを開け、中に入ってしまった。開けっ放しのドア、銃を構え恐る恐る店内を見ると・・・。ガランとした店内の真ん中で牛鬼は、正人と長老を威嚇していた。
 牛鬼は、想像していたより大きい。
 頭の両脇から角の生えた立派な角、口から出る鋭い牙、クモと同じ体からは、先の尖った1本の爪を携えた足が6本生えている。
 クモの糸のようなものでくるまれた繭が、壁に貼り付いている。牛鬼は食事中だったのか、頭のない胴体を床に転がし、首をくわえ血を吸っている。足元には複数の頭が転がり、血を吸われ皮一枚だけとなった顔は、悲壮な表情だけが残されていた。
 恐怖よりこの店内に充満する匂いが、隼人にとって一番きつかったに違いない。
「正人さん!」、隼人は銃を構えたまま正人の後ろで待機する。
「怪我しないように気を付けろ」
 正人はそう言うと、金砕棒を牛鬼の頭めがけて振り下ろす。牛鬼は、頭を銜えたまま後ろに下がり、正人の攻撃を避けた。えっ、こいつ素早いぞ。
 負けじと長老は、後退した牛鬼に鋭い爪で攻撃した。
「ああ、駄目だ。正人、牛鬼は思っていたよりすばしっこいの」
「長老、注意して、攻撃していきますよ」
 牛鬼は、銜えていた頭を長老に放り投げると奇声を上げる。
「ギッ、ギッヤァァァァァァ・・・」
 牛鬼は前足を軸にして体を曲げ、尻の部分を長老に向けると糸を出した。
「しまった!」、長老が叫ぶ。
 牛鬼の出した糸が長老の体に巻き付く。粘着力が強いのか、長老は体に巻き付く糸を食いちぎろうとするが、体から切り離せない。
「俺が、時間を稼ぎます」と、正人は牛鬼の背中に飛び乗った。
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