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牛鬼 ②
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正人の話では、ショッピングセンター内で働く人やお客さんが行方不明になる事件が発生したとの事だった。隼人はニュースになっていない事件だと気が付き、表沙汰に出来ない案件だよなと考えた。
ショッピングセンターを封鎖して警察が調査すると、仮囲いをしていた空き店舗に潜む牛鬼と行方不明になっていた人達の遺体を発見した。
愛媛県警が総力を挙げて牛鬼退治を試みたが、被害を拡大するだけで何の成果もあげられず、最終的にDDへ依頼が来たのだった。
牛鬼は、人を食い殺す獰猛な鬼。
頭は牛、体は巨大なクモの姿をしている。
主に海岸に姿を現すらしいが、人が集まるショッピングセンターを餌場に選んだ。
「愛媛県まで車で行くのですか?」
「そうだよ、早く終わらせたい。今から出発したいのだけど?」
「そんな、獰猛な鬼を放っておく訳には、行かないでしょ。直ぐ行きましょう」
「君は、仕事をよく理解しているな。嬉しいよ」
「儂も行くぞ! 獰猛な奴じゃ、二人だけでは心もとないだろ」
車を飛ばす、京都南インターチェンジから名神高速道路に入り、大阪を通り抜け、明石海峡大橋を渡る。途中、兵庫県の淡路サービスエリアで休憩した。
「正人さん、高速だし運転変わりましょうか?」
「それは、助かるが、くれぐれも安全運転で頼むな」
「無茶は、しませんよ」
淡路島を通過した後は、休むことなく一気に高松道を通り抜け、新居浜インターチェンジを降りた。ようやく目的のショッピングセンターに着いた。
瀬戸内海に面する愛媛県の東側、東予地方。有数の工業都市で大企業傘下の会社も多く、県内では11万人と人口の多い地域だ。
国内のタオル産業で有名な今治市から車で1時間、電車なら30分の距離。京都からは、車で約5時間かかった。
隼人の腕時計で、午前3時を過ぎた所だった。
「直ぐに始めますか?」
「ああ、人目に付かないほうが良いからな」
複数のパトカーが誰も入れないよう、ショッピングセンターを取り囲む。搬入口で車を止めると、複数の警察官がライオットシールドを構え入り口を警戒していた。
「DIUDです、署長はおられますか?」
規制線の前に立つ警察官が無線で呼び出しをする。
「DIUDの方が来られました」
直ぐに署長らしき人が、正人に声を掛けた。
「署長の安田です。ご面倒をお掛けして申し訳ない」
「ええ、中の様子は?」
「中に入った者の話では、寝床にしている空き店舗の周辺に潜んでいるようで」
「生存者は?」
「残念ながら、居ないかと思います」
「そうですか」と、正人は腕を組みながら考えている。
「隼人君、金砕棒を持って行くから」
隼人は金砕棒の入ったスーツケースを車から降ろし、長老を肩に乗せる正人と一緒に鬼の佇む戦場へ向かう。
ショッピングセンターを封鎖して警察が調査すると、仮囲いをしていた空き店舗に潜む牛鬼と行方不明になっていた人達の遺体を発見した。
愛媛県警が総力を挙げて牛鬼退治を試みたが、被害を拡大するだけで何の成果もあげられず、最終的にDDへ依頼が来たのだった。
牛鬼は、人を食い殺す獰猛な鬼。
頭は牛、体は巨大なクモの姿をしている。
主に海岸に姿を現すらしいが、人が集まるショッピングセンターを餌場に選んだ。
「愛媛県まで車で行くのですか?」
「そうだよ、早く終わらせたい。今から出発したいのだけど?」
「そんな、獰猛な鬼を放っておく訳には、行かないでしょ。直ぐ行きましょう」
「君は、仕事をよく理解しているな。嬉しいよ」
「儂も行くぞ! 獰猛な奴じゃ、二人だけでは心もとないだろ」
車を飛ばす、京都南インターチェンジから名神高速道路に入り、大阪を通り抜け、明石海峡大橋を渡る。途中、兵庫県の淡路サービスエリアで休憩した。
「正人さん、高速だし運転変わりましょうか?」
「それは、助かるが、くれぐれも安全運転で頼むな」
「無茶は、しませんよ」
淡路島を通過した後は、休むことなく一気に高松道を通り抜け、新居浜インターチェンジを降りた。ようやく目的のショッピングセンターに着いた。
瀬戸内海に面する愛媛県の東側、東予地方。有数の工業都市で大企業傘下の会社も多く、県内では11万人と人口の多い地域だ。
国内のタオル産業で有名な今治市から車で1時間、電車なら30分の距離。京都からは、車で約5時間かかった。
隼人の腕時計で、午前3時を過ぎた所だった。
「直ぐに始めますか?」
「ああ、人目に付かないほうが良いからな」
複数のパトカーが誰も入れないよう、ショッピングセンターを取り囲む。搬入口で車を止めると、複数の警察官がライオットシールドを構え入り口を警戒していた。
「DIUDです、署長はおられますか?」
規制線の前に立つ警察官が無線で呼び出しをする。
「DIUDの方が来られました」
直ぐに署長らしき人が、正人に声を掛けた。
「署長の安田です。ご面倒をお掛けして申し訳ない」
「ええ、中の様子は?」
「中に入った者の話では、寝床にしている空き店舗の周辺に潜んでいるようで」
「生存者は?」
「残念ながら、居ないかと思います」
「そうですか」と、正人は腕を組みながら考えている。
「隼人君、金砕棒を持って行くから」
隼人は金砕棒の入ったスーツケースを車から降ろし、長老を肩に乗せる正人と一緒に鬼の佇む戦場へ向かう。
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