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赤のエクソシスト ④
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今日は全休の日、隼人にとって大学の授業が無い曜日だ。
食事会以降、林は雨宮と会う頻度も増えたと聞く。彼らの上手くいっている様子に隼人は、駄目だなとため息が出た。このままだと、長期休暇は一人で過ごすか、バイト漬けになるか、一日中布団を抱きしめながらベッドで悩むのも変だし・・・。
気分転換に日が暮れるまで、一回は外に出よう。少しは、気晴らしになるだろうから、そうしようと決め彼がアパートのドアのカギを閉めようとした時、DDから呼び出された。
事務所に入ると、茜が今まで見たことのない軽快なタイピングを見せていた。彼女は、鼻歌交じりで入力作業をしている。かなりご機嫌な様子だ。
「お疲れ様です、仕事ですか?」
奥の給湯室からコーヒーを入れたマグカップを片手に、タバコを口にくわえた正人が出てきた、「お疲れ、仕事だよ」
二人の様子から隼人は、そうか、この二人のお出かけは成功したのか。でも、若輩者は大人の恋愛に口を出さない方が良いと、言葉を飲み込んだ。
茜の隣、自分専用となった机に隼人は、背負っていたワンショルダーバッグを置いた。
「妖怪ですか、悪霊ですか?」
「うーん、悪魔だな」
「悪魔ですか、・・・え、・・・悪魔っているんですか?」
正人は、ソファに座りコーヒーをひとすすりした。
「居るよ、人に寄り添って耳元で悪意を囁く厄介な奴が」
悪魔も居るんだ、それに、その対処もここがするのかと、隼人は机の椅子に座り、引き出しから拳銃を出す。
「悪魔とは、どうやって戦うのですか?」
「厄介でね、人に入り込むから物理的な攻撃が出来ない」
「入り込む?・・・憑りつかれるのと同じですか?」
「見た目はね、長時間憑りつかれると完全に悪魔化してしまう。そうなると元に戻れる確率はかなり低くなるから、短時間で悪魔祓いをする必要がある。厄介なのは、悪魔に憑依されたら攻撃力が半端なくてね」
「半端ないって?」
「悪魔の力をフルに使って攻撃してくるし、憑依されている人の体を傷つけないように注意しながら戦わないといけない」
「じゃあ、どうやって戦うんですか?」
「今、専門職を呼んでいるから、待っている」
長老が、いつもの場所に居ない。茜さんの机の横で隠れるようにして、こちらに顔だけ出して覗き見る。
「小僧、専門職のエクソシストが来るのだよ」
「エクソシスト? 長老は、どうして隠れているのですか?」
「そのエクソシストの纏う光は、儂にとって強すぎるからな。それにあの、生意気な小娘は好かん」
「小娘? 今から来るエクソシストは、女の子ですか?」
「そうだ、シャーロット・桜・マクベイン。バチカンから正式にここへ派遣してもらったエクソシストだ。彼女も京都支部に勤める仲間だよ」
隼人は何処かで聞いた事がある名前を気にしながら、とりあえず手に持つ拳銃をガンホルダーに収める。
「おまたせ、正人。やっと私の出番ね!」
事務所の入り口に立つ、白いシャツにひざ丈の赤いスカートをはく女の子。
「シャーロット、遅いぞ」
「そ、その名前で呼ばないでよ、正人」、桜は口をとがらせ小声で呟いた。
「お、お前、桜!」
「ああ、あんた、お持ち帰り君ね。どうしてここに居るのよ?」
「ふざけるなよ、誰が、お持ち帰り君だ!」
「私の友達を自宅に持ち帰ろうとしたくせに」
桜の言葉で正人さん、茜さん、長老が、面白そうに彼らのやり取りを見る。
「小僧、女の子を襲おうとしたのか? 不届きものじゃな」
「隼人君、駄目だよ、女の子には紳士的に行動しないと」
「そうだよ、隼人。女性を襲っては、駄目だぞ」
完全に誤解されてしまった。隼人は心の中で叫びたくなる、どうして、俺が悪者になっているの? 女の子を連れて帰っていないし、襲っていないよ! 何を言っても、言い訳していると捉えられるのだろう。
―――もう、面倒くさい!
「喧嘩はそこまでだ、二人とも仕事に行くぞ」と、正人は立ち上がった
食事会以降、林は雨宮と会う頻度も増えたと聞く。彼らの上手くいっている様子に隼人は、駄目だなとため息が出た。このままだと、長期休暇は一人で過ごすか、バイト漬けになるか、一日中布団を抱きしめながらベッドで悩むのも変だし・・・。
気分転換に日が暮れるまで、一回は外に出よう。少しは、気晴らしになるだろうから、そうしようと決め彼がアパートのドアのカギを閉めようとした時、DDから呼び出された。
事務所に入ると、茜が今まで見たことのない軽快なタイピングを見せていた。彼女は、鼻歌交じりで入力作業をしている。かなりご機嫌な様子だ。
「お疲れ様です、仕事ですか?」
奥の給湯室からコーヒーを入れたマグカップを片手に、タバコを口にくわえた正人が出てきた、「お疲れ、仕事だよ」
二人の様子から隼人は、そうか、この二人のお出かけは成功したのか。でも、若輩者は大人の恋愛に口を出さない方が良いと、言葉を飲み込んだ。
茜の隣、自分専用となった机に隼人は、背負っていたワンショルダーバッグを置いた。
「妖怪ですか、悪霊ですか?」
「うーん、悪魔だな」
「悪魔ですか、・・・え、・・・悪魔っているんですか?」
正人は、ソファに座りコーヒーをひとすすりした。
「居るよ、人に寄り添って耳元で悪意を囁く厄介な奴が」
悪魔も居るんだ、それに、その対処もここがするのかと、隼人は机の椅子に座り、引き出しから拳銃を出す。
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「入り込む?・・・憑りつかれるのと同じですか?」
「見た目はね、長時間憑りつかれると完全に悪魔化してしまう。そうなると元に戻れる確率はかなり低くなるから、短時間で悪魔祓いをする必要がある。厄介なのは、悪魔に憑依されたら攻撃力が半端なくてね」
「半端ないって?」
「悪魔の力をフルに使って攻撃してくるし、憑依されている人の体を傷つけないように注意しながら戦わないといけない」
「じゃあ、どうやって戦うんですか?」
「今、専門職を呼んでいるから、待っている」
長老が、いつもの場所に居ない。茜さんの机の横で隠れるようにして、こちらに顔だけ出して覗き見る。
「小僧、専門職のエクソシストが来るのだよ」
「エクソシスト? 長老は、どうして隠れているのですか?」
「そのエクソシストの纏う光は、儂にとって強すぎるからな。それにあの、生意気な小娘は好かん」
「小娘? 今から来るエクソシストは、女の子ですか?」
「そうだ、シャーロット・桜・マクベイン。バチカンから正式にここへ派遣してもらったエクソシストだ。彼女も京都支部に勤める仲間だよ」
隼人は何処かで聞いた事がある名前を気にしながら、とりあえず手に持つ拳銃をガンホルダーに収める。
「おまたせ、正人。やっと私の出番ね!」
事務所の入り口に立つ、白いシャツにひざ丈の赤いスカートをはく女の子。
「シャーロット、遅いぞ」
「そ、その名前で呼ばないでよ、正人」、桜は口をとがらせ小声で呟いた。
「お、お前、桜!」
「ああ、あんた、お持ち帰り君ね。どうしてここに居るのよ?」
「ふざけるなよ、誰が、お持ち帰り君だ!」
「私の友達を自宅に持ち帰ろうとしたくせに」
桜の言葉で正人さん、茜さん、長老が、面白そうに彼らのやり取りを見る。
「小僧、女の子を襲おうとしたのか? 不届きものじゃな」
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「そうだよ、隼人。女性を襲っては、駄目だぞ」
完全に誤解されてしまった。隼人は心の中で叫びたくなる、どうして、俺が悪者になっているの? 女の子を連れて帰っていないし、襲っていないよ! 何を言っても、言い訳していると捉えられるのだろう。
―――もう、面倒くさい!
「喧嘩はそこまでだ、二人とも仕事に行くぞ」と、正人は立ち上がった
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