有限会社DIUD 物の怪退治をする会社でアルバイトをする事になりました!

川村直樹

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赤のエクソシスト ③

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 乾杯をした後、コース料理が順番に運ばれて来る。出てくる料理の良し悪しで場の雰囲気は変わるが、女性陣は満足そうだ。話題作りに長けた林のおかげで、話も盛り上り上々な出だしとなった。
「桜さんは、留学生ですか?」、小川が変な質問をする。
「こんな流暢な日本語を話す留学生は、居ないでしょ! 私は、日本人です」
「ごめん、ごめん。見た目が外人さんだったから」
 悪気の無い小川は、素直に彼女に謝る。
「良いですよ。私は、父がアメリカ人で母が日本人のハーフですから」
 桜の話しぶりから幼い頃から日本で育ったことが伺える。
 機嫌を損ねた桜を彼女の友人たちが、からかいだした。
「桜はね、本名で呼ばれるのがすごく嫌なの」
「朱鷺、止めてよ」、桜はグラスをテーブルに置いた。
「それと・・・」、新藤が呟く。
「歩美まで、止めてよね」、桜の表情が曇った。
「桜、赤いでしょ」
「赤い?」、男三人の声が重なる。
「見た目が、服装とか持ち物とか。赤色が好きなんだけど、必ず、何かしら赤い物を身に着けるか持っているの」
 桜が、止めて欲しそうに友人たちを見たが、彼女たちは声を揃える。
「付いた通り名が、赤い豹・・・赤豹なの」
「勝手に名付けないで欲しいわ。単純に私の好きな色、ラッキーカラーが赤なのに」
 理由はどうであれ、見た目であだ名を付ける行為を隼人は好きになれない。
「似合っていたら、良いんじゃないですか?」
 隼人の言葉に桜以外、全員が乗っかってくる。多分、飲みなれていないワインで酔いが回っていたのだろう。
「あれぇー、小坂君は、桜ちゃんを気に入ったのかな?」
「それは、奥手の桜には朗報ね♪」
「ちょっと、朱鷺、歩美まで冗談言わないでよ」
 林は、調子に乗って女子たちの会話に便乗してきた。
「隼人、良かったな。彼女いない歴イコール年齢だからな」
「そうなの小坂君、彼女いないの。見た目は、悪くないから良いじゃん。桜、この機会に付き合っちゃえ」
 はあ、酔っ払いは節度が無くなる。
 みんな、明日になれば、すっかり会話の内容を忘れているはず。
 小川は酔っぱらうと笑顔だけで、話さなくなったけど、笑い上戸なのだろう。
「桜さん、ごめん、気を悪くしたかな」
「別に、関係ないわよ。あんたとは、付き合わないから」
 桜の全面的な否定に、そこまで否定しなくてもと、隼人はがっかりした。彼も一応は、男として扱われたかったのだ。

 盛り上がりを見せるが、時間も遅くなってきたので全員店を出た。林は、雨宮と仲良く話している。
 みんなから少し離れた所で新藤がうずくまっていた。もしかしたら酔いで気持ちが悪いのかと、隼人は彼女の傍に寄る。
「大丈夫ですか、気持ち悪いなら無理しないで」
 隼人と新藤の姿を見て勘違いをしたのか、強面の桜が駆け寄ってきた。
「ちょっと、何しているのよ。歩美、大丈夫?」
「新藤さんが、うずくまっていたから介抱しようと思って」
「ウソ! 男はみんな、女が弱っていたら、そこにつけ込むの。お持ち帰りしようと考えていたでしょう!」
「何でだ、その発想は何処から生まれて来たんだよ! 男はみんなそんな考えで行動していないよ、純粋に心配しただけなんだけど」と、隼人はこの子は気が強いのか、それとも思い込みが激しいのかと、この状況で疑いを抱く桜の心理が理解出来ない。
「吐いた方が楽になるから、あっちへ」、隼人が新藤の手を取ろうとした時だった。
 バシッ・・・桜は、隼人にビンタをした。
「彼女に触らないで、私が介抱して連れて帰るから」
 頬を手で押さえながら、「分かりました、俺は退散します。じゃあ、気を付けてね」
 林と雨宮が、心配そうに隼人と桜の所に近づいてきた。
「何かあったか? 隼人」
「大丈夫だよ、新藤さんが気持ち悪いみたい」
「そうかそれなら、桜さんが介抱してくれているから任せよう」
「そうだな、そろそろ、解散しようか」
 せっかくの楽しい時間も、後味の悪い終わり方をした。
 結局、隼人は女の子と連絡先の交換も出来ず、店の前でみんなと別れると、重い足取りで京都駅を目指して歩き出した。
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