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皇宮警察
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翌朝、定時の9時にDD事務所に入ると、正人の様子が変だった。いつもは香水など付けていないのに、今日は爽やかな良い匂いを体から漂わせている。
「今日は、夕方から約束があるので早く終われますか?」
「大丈夫だよ、隼人君、今日は定時前に必ず終わるから」
「正人さん、何か良い事でもあったのすか?」
「気にするな、必ず定時で終わらせる」
ソファで寝転がる長老は、からかうように正人に茶々を入れた。
「お主らが一緒に出掛けるのは、久しぶりだからな。なあ、茜」
「長老は、黙っていてください!」
「そうですよ、大人の付き合いに口を挟まないでください」
そうか、正人さんは、茜さんと出掛けるのだな。だから、定時にこだわっているのか。この二人、そんな関係に見えなかったけど、案外上手くやっているのだな。長老に茶化される正人と茜の二人を見ながら、隼人は笑顔になる。
せっかく正人と茜は朝から良い雰囲気なのに、長老が全てを台無しにする。長老はベラベラと隼人に、正人と茜の関係を丁寧に説明し始めたからだ。
「小僧、よく聞け、茜は、小さいが古くて由緒ある神社の娘で巫女だ。そんな茜と正人は、幼馴染でな。二人とも幼い頃から好き合っているのに、お互い強情で素直にならない。いっその事、赤子でも授かれば良いのじゃ」
普段、ボートしている茜は、顔を真っ赤にして素早く長老の首根っこを掴んだ。
「長老、人をおちょくるのも加減にしてください!」
給湯室でコーヒーを入れた後、自分の机でパソコンを触っていた正人は、気まずそうに頬を指で掻いていた。
終始ご機嫌の正人に連れられて、隼人は皇宮警察本部京都護衛署に来ていた。
皇宮警察本部は、警視庁に置かれる付属機関である。京都御苑にこの京都護衛署があり、業務内容は天皇家や皇族の警護や皇居と御所の警備などなど。
DD事務所からは、歩いて行ける距離である。
「仕事って、警察の中ですか?」
「今日の仕事は、この間の御札のお礼と君と賀茂さんの顔合わせだよ」
「俺との顔合わせですか?」
「そうだよ、念のため、銃器所有許可も貰うから」
「えっ、俺も銃を所持するのですか?」
「餓鬼退治のような仕事も多いからね。自分の身は自分で守れるようにならないと」
「はあ、訓練も必要ですね」
「会社に射撃訓練場があるから、俺が教えて上げるよ」
そう、あのビルの中には射撃訓練場があるだ。射撃訓練場だけでなく、あのビルには、まだ隼人の知らない事が沢山あった。
「着いたよ、ここがお世話になる部署だ」
上を見ると、陰陽師と書かれた表札がぶら下がっている。隼人は、警察内にある秘密の部署に不思議な感じを覚える。
部屋に入ると、古文書や怪しい文献などが所狭しと積み上げられる。
ソファに座り、テーブルに足を乗せる一人の男性。
見た目は、30代前半、黒髪ストレートの・・・長い髪。
切れ長の瞳、中性的な顔立ちをしている。
紺色のスーツを身にまとい、手には甲に模様の入った白い手袋をしている。
彼の肩に乗る白い鳥、山の中で見た鳥と似ていた。
「やあ、鬼塚君。私の御札は効いたかな?」
「有り難うございました。無事、再封印出来ましたが、あなたも見ていましたよね」
「気が付いていたのか」
「その鳥、山の中に居ました。あなたの式神ですよね」
「バレていましたか」、男性は薄笑みを浮かべ白い鳥を握ると、鳥の形をした紙になった。
隼人を賀茂に差し出すかの様に正人は、彼の背中を押した。
「彼が、新しく加入した小坂隼人君です」
「ほお、彼が新入りか。なかなか凄い逸材を見つけてきたね」
「初めまして、小坂です。“何が凄いのだろう?”」、隼人は軽く会釈する。
「初めまして、私は、陰陽師の賀茂貞行です」
「賀茂さんも何か感じますか、俺にはさっぱり」、首を傾げる正人。
「君もまだまだ、未熟だね。一度、修練の為に私に降らないか?」
「それは、絶対に嫌です。お断りします」、正人は、表情をこわばらせながらも迷うことなく返答した。
「おかしいな、私に降れば、君は格段に強くなれるのに」
「それはそうと、彼の銃器所持の許可をお願いします」
「彼に銃器許可は必要か? いらないと思うけど」
「ご冗談を。忘れずに許可しておいてくださいね」
賀茂と正人の会話を横で聞いていた隼人は、未熟だとか、降れとか、そもそも何に降るんだ、陰陽師である賀茂さんに鬼神化する正人さんが使役すると言う事なのか? この仕事の関係者は、みんな普通じゃない人達だから会話の内容を理解出来ないのは、当たり前だなと決めつける。
賀茂との話が終わると、正人は隼人の腕を掴み、失礼しますと足早に部屋を出た。
「苦手なんだ、あの人」
「正人さんでも苦手な人は、居るのですね」
「そうだよ、あの人、俺達以上に化け物だから」
「30代の綺麗な男性、化け物には見えませんでしたよ」
「見た目に騙されるなよ、あの人、詳しい年齢は知らないが、50歳以上だからな」
「え、えええ、そんなに年取っているのですか? それはある意味、化け物ですね」
「今日は、夕方から約束があるので早く終われますか?」
「大丈夫だよ、隼人君、今日は定時前に必ず終わるから」
「正人さん、何か良い事でもあったのすか?」
「気にするな、必ず定時で終わらせる」
ソファで寝転がる長老は、からかうように正人に茶々を入れた。
「お主らが一緒に出掛けるのは、久しぶりだからな。なあ、茜」
「長老は、黙っていてください!」
「そうですよ、大人の付き合いに口を挟まないでください」
そうか、正人さんは、茜さんと出掛けるのだな。だから、定時にこだわっているのか。この二人、そんな関係に見えなかったけど、案外上手くやっているのだな。長老に茶化される正人と茜の二人を見ながら、隼人は笑顔になる。
せっかく正人と茜は朝から良い雰囲気なのに、長老が全てを台無しにする。長老はベラベラと隼人に、正人と茜の関係を丁寧に説明し始めたからだ。
「小僧、よく聞け、茜は、小さいが古くて由緒ある神社の娘で巫女だ。そんな茜と正人は、幼馴染でな。二人とも幼い頃から好き合っているのに、お互い強情で素直にならない。いっその事、赤子でも授かれば良いのじゃ」
普段、ボートしている茜は、顔を真っ赤にして素早く長老の首根っこを掴んだ。
「長老、人をおちょくるのも加減にしてください!」
給湯室でコーヒーを入れた後、自分の机でパソコンを触っていた正人は、気まずそうに頬を指で掻いていた。
終始ご機嫌の正人に連れられて、隼人は皇宮警察本部京都護衛署に来ていた。
皇宮警察本部は、警視庁に置かれる付属機関である。京都御苑にこの京都護衛署があり、業務内容は天皇家や皇族の警護や皇居と御所の警備などなど。
DD事務所からは、歩いて行ける距離である。
「仕事って、警察の中ですか?」
「今日の仕事は、この間の御札のお礼と君と賀茂さんの顔合わせだよ」
「俺との顔合わせですか?」
「そうだよ、念のため、銃器所有許可も貰うから」
「えっ、俺も銃を所持するのですか?」
「餓鬼退治のような仕事も多いからね。自分の身は自分で守れるようにならないと」
「はあ、訓練も必要ですね」
「会社に射撃訓練場があるから、俺が教えて上げるよ」
そう、あのビルの中には射撃訓練場があるだ。射撃訓練場だけでなく、あのビルには、まだ隼人の知らない事が沢山あった。
「着いたよ、ここがお世話になる部署だ」
上を見ると、陰陽師と書かれた表札がぶら下がっている。隼人は、警察内にある秘密の部署に不思議な感じを覚える。
部屋に入ると、古文書や怪しい文献などが所狭しと積み上げられる。
ソファに座り、テーブルに足を乗せる一人の男性。
見た目は、30代前半、黒髪ストレートの・・・長い髪。
切れ長の瞳、中性的な顔立ちをしている。
紺色のスーツを身にまとい、手には甲に模様の入った白い手袋をしている。
彼の肩に乗る白い鳥、山の中で見た鳥と似ていた。
「やあ、鬼塚君。私の御札は効いたかな?」
「有り難うございました。無事、再封印出来ましたが、あなたも見ていましたよね」
「気が付いていたのか」
「その鳥、山の中に居ました。あなたの式神ですよね」
「バレていましたか」、男性は薄笑みを浮かべ白い鳥を握ると、鳥の形をした紙になった。
隼人を賀茂に差し出すかの様に正人は、彼の背中を押した。
「彼が、新しく加入した小坂隼人君です」
「ほお、彼が新入りか。なかなか凄い逸材を見つけてきたね」
「初めまして、小坂です。“何が凄いのだろう?”」、隼人は軽く会釈する。
「初めまして、私は、陰陽師の賀茂貞行です」
「賀茂さんも何か感じますか、俺にはさっぱり」、首を傾げる正人。
「君もまだまだ、未熟だね。一度、修練の為に私に降らないか?」
「それは、絶対に嫌です。お断りします」、正人は、表情をこわばらせながらも迷うことなく返答した。
「おかしいな、私に降れば、君は格段に強くなれるのに」
「それはそうと、彼の銃器所持の許可をお願いします」
「彼に銃器許可は必要か? いらないと思うけど」
「ご冗談を。忘れずに許可しておいてくださいね」
賀茂と正人の会話を横で聞いていた隼人は、未熟だとか、降れとか、そもそも何に降るんだ、陰陽師である賀茂さんに鬼神化する正人さんが使役すると言う事なのか? この仕事の関係者は、みんな普通じゃない人達だから会話の内容を理解出来ないのは、当たり前だなと決めつける。
賀茂との話が終わると、正人は隼人の腕を掴み、失礼しますと足早に部屋を出た。
「苦手なんだ、あの人」
「正人さんでも苦手な人は、居るのですね」
「そうだよ、あの人、俺達以上に化け物だから」
「30代の綺麗な男性、化け物には見えませんでしたよ」
「見た目に騙されるなよ、あの人、詳しい年齢は知らないが、50歳以上だからな」
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