12 / 86
祠の封印 ③
しおりを挟む
おもむろにポケットから隼人はスマートフォンを取り出し、写真を長老に見せた。
「何故じゃあー!腹を出して大の字で眠る儂の姿、どうやってその箱に収めた?」
「長老、スマホですよ。スマホで酔っぱらう長老を撮影しました」
「それを儂に渡せ!」、長老は俺に顔を近づけた。
隼人は顔を背ける、「駄目ですよ!絶対に消しませんから」
「悔しいー!こんな小僧にバカにされるとは」
「調子に乗って飲むからですよ、長老」
「黙れ、正人。お主も酔っぱらってヘロヘロだったじゃろうが」
「それより、長老、その足元の妖怪は?」
長老の足元では、のっぺらぼうが動けず、手足をバタバタしていた。
のっぺらぼうは、子供ぐらいの身長で目鼻口が無い。
「こいつも殺さず、封印するのですか?」
「ああ、封印するよ。害は無いからな、むやみに殺す必要はないよ」
「殺すなら、儂が食うけどな」、長老がペロッと舌を出す。
「こいつ等、俺達には分からないが、何か意味があってこの世界に存在しているように感じる。妖怪だから妖だからと言って、害のない物まで退治しなくて良いよ」
「そうですね」
たしかに、人に害を及ぼさないなら殺す必要は無い。
それに、この世界に共存する意味とは?
そんなこと、隼人は今まで考えたことも無かった。
「長老、のっぺらぼうを回収しておいてください」
正人からのお願いに長老は、のっぺらぼうを口にくわえ走り去った。
「残るは、一つ目小僧とろくろ首だけだ」
隼人は、子供の頃にアニメで見たこの2匹の妖怪の姿を思い出す。
「どこか、探す当てでもあるのですか?」
「地図を見てね、近くに神社があっただろう」
「ありましたね、ここからだと10分ほどの距離だと思いますが」
「そこに潜んでいる可能性が高い。行こう!」
正人と隼人は並んで、細いあぜ道を歩いて移動する。
長閑な田舎町、危険が無ければ、急ぐ必要もない。
石造りの階段を昇ると、古い神社が見えて来る。
敷地内の雑草は、綺麗に刈られている。きっと地元の人が毎日清掃しているのだろう。境内に入り本殿の扉を開けると、正人の予測通り妖怪は2匹ともそこに潜んでいた。
「俺は、ろくろ首を捕まえるから、隼人君は、その一つ目小僧を捕まえて」
「了解です!」
境内の中を逃げ惑う妖怪に隼人は、翻弄される。
ちょこまかちょこまかと、逃げ回るので鬱陶しく感じる。
壁際に追い詰めたがフェイントを付け、隼人の横から上手くすり抜けた。
すばしっこい子供と鬼ごっこをしている様に見える。
隼人は、四苦八苦しながらやっとの思いで一つ目小僧を捕まえた。
ろくろ首の首を掴む正人は、回収した妖怪を祠の前まで連れ来るよう外を指さす。
「全部、祠に入れますよ」と、正人は妖怪を無理矢理、押し込む。
「こんな小さな祠、入るんですか?」
「入り口は狭いけど、中は広い部屋のような空間だよ」
にゅるにゅると柔らかいゴム人形の様にに入り口から中へ吸い込まれた。
正人は祠の扉を閉め、持って来た封印札を貼り付けた。突然ドサッと音がしたので、振り返ると隼人は気を失い地面に倒れていた。
気を失った隼人は、夢で自分の過去の記憶を見る。
急にどうした?・・・俺の頭の中で子供の頃の記憶が蘇ってくる。
祠、そうだ、古い小さな祠、俺の祖父母が暮らす田舎町にもあった。
あぜ道を走る足、小学生の足が見えるが、どこに向かっている?
池、そうそう、池のほとりに祠はあったな。
あれ、小さな手が御札の貼られた扉を開けようとしている。
俺の手だよな、お札を破いて扉を開けた?
それは、何かの封印を解いた事になるのか?
忘れていた、小学2年生だった俺は、中を見たくて祠の扉を開けたのを。
断片的な記憶の光景、スライドショー見たいにグルグルと頭の中で回りだした。
目が回る、気持ち悪い、・・・意識が遠ざかる。
“お前が、俺を解放したんだよ”
あの声、いつも聞こえる声だ。
気が付いたかと、正人の声が聞こえる。あれ車の中に居る、背もたれを倒した助手席に座る隼人は、何が起こったのか直ぐには理解出来ず困惑する。
「ええ、気を失っていましたか?」
「祠を封印したら、フラフラと倒れるから、熱中症かと思ったよ」
「小僧の中に居るアイツが、目覚めかけたのだよ」
後部座席で気持ち良く横たわり毛づくろいする長老が、意味深な言葉を口にする。
俺の中に居るアイツとは誰なのだろうと、隼人は長老の言葉が耳から離れなくな
「何故じゃあー!腹を出して大の字で眠る儂の姿、どうやってその箱に収めた?」
「長老、スマホですよ。スマホで酔っぱらう長老を撮影しました」
「それを儂に渡せ!」、長老は俺に顔を近づけた。
隼人は顔を背ける、「駄目ですよ!絶対に消しませんから」
「悔しいー!こんな小僧にバカにされるとは」
「調子に乗って飲むからですよ、長老」
「黙れ、正人。お主も酔っぱらってヘロヘロだったじゃろうが」
「それより、長老、その足元の妖怪は?」
長老の足元では、のっぺらぼうが動けず、手足をバタバタしていた。
のっぺらぼうは、子供ぐらいの身長で目鼻口が無い。
「こいつも殺さず、封印するのですか?」
「ああ、封印するよ。害は無いからな、むやみに殺す必要はないよ」
「殺すなら、儂が食うけどな」、長老がペロッと舌を出す。
「こいつ等、俺達には分からないが、何か意味があってこの世界に存在しているように感じる。妖怪だから妖だからと言って、害のない物まで退治しなくて良いよ」
「そうですね」
たしかに、人に害を及ぼさないなら殺す必要は無い。
それに、この世界に共存する意味とは?
そんなこと、隼人は今まで考えたことも無かった。
「長老、のっぺらぼうを回収しておいてください」
正人からのお願いに長老は、のっぺらぼうを口にくわえ走り去った。
「残るは、一つ目小僧とろくろ首だけだ」
隼人は、子供の頃にアニメで見たこの2匹の妖怪の姿を思い出す。
「どこか、探す当てでもあるのですか?」
「地図を見てね、近くに神社があっただろう」
「ありましたね、ここからだと10分ほどの距離だと思いますが」
「そこに潜んでいる可能性が高い。行こう!」
正人と隼人は並んで、細いあぜ道を歩いて移動する。
長閑な田舎町、危険が無ければ、急ぐ必要もない。
石造りの階段を昇ると、古い神社が見えて来る。
敷地内の雑草は、綺麗に刈られている。きっと地元の人が毎日清掃しているのだろう。境内に入り本殿の扉を開けると、正人の予測通り妖怪は2匹ともそこに潜んでいた。
「俺は、ろくろ首を捕まえるから、隼人君は、その一つ目小僧を捕まえて」
「了解です!」
境内の中を逃げ惑う妖怪に隼人は、翻弄される。
ちょこまかちょこまかと、逃げ回るので鬱陶しく感じる。
壁際に追い詰めたがフェイントを付け、隼人の横から上手くすり抜けた。
すばしっこい子供と鬼ごっこをしている様に見える。
隼人は、四苦八苦しながらやっとの思いで一つ目小僧を捕まえた。
ろくろ首の首を掴む正人は、回収した妖怪を祠の前まで連れ来るよう外を指さす。
「全部、祠に入れますよ」と、正人は妖怪を無理矢理、押し込む。
「こんな小さな祠、入るんですか?」
「入り口は狭いけど、中は広い部屋のような空間だよ」
にゅるにゅると柔らかいゴム人形の様にに入り口から中へ吸い込まれた。
正人は祠の扉を閉め、持って来た封印札を貼り付けた。突然ドサッと音がしたので、振り返ると隼人は気を失い地面に倒れていた。
気を失った隼人は、夢で自分の過去の記憶を見る。
急にどうした?・・・俺の頭の中で子供の頃の記憶が蘇ってくる。
祠、そうだ、古い小さな祠、俺の祖父母が暮らす田舎町にもあった。
あぜ道を走る足、小学生の足が見えるが、どこに向かっている?
池、そうそう、池のほとりに祠はあったな。
あれ、小さな手が御札の貼られた扉を開けようとしている。
俺の手だよな、お札を破いて扉を開けた?
それは、何かの封印を解いた事になるのか?
忘れていた、小学2年生だった俺は、中を見たくて祠の扉を開けたのを。
断片的な記憶の光景、スライドショー見たいにグルグルと頭の中で回りだした。
目が回る、気持ち悪い、・・・意識が遠ざかる。
“お前が、俺を解放したんだよ”
あの声、いつも聞こえる声だ。
気が付いたかと、正人の声が聞こえる。あれ車の中に居る、背もたれを倒した助手席に座る隼人は、何が起こったのか直ぐには理解出来ず困惑する。
「ええ、気を失っていましたか?」
「祠を封印したら、フラフラと倒れるから、熱中症かと思ったよ」
「小僧の中に居るアイツが、目覚めかけたのだよ」
後部座席で気持ち良く横たわり毛づくろいする長老が、意味深な言葉を口にする。
俺の中に居るアイツとは誰なのだろうと、隼人は長老の言葉が耳から離れなくな
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる