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祠の封印 ②
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建設中の道の駅、隼人は駐車場に立ち大きく深呼吸をする。山の中、春麗らの朝、空気は冷たいけど気持ちいい。朝露で湿った木々は新緑の香りを発していた、自然豊かな場所、此処は彼らにカタルシスを感じさせる。
軽い体操をしていた隼人は、木に留まる見たこともない鳥に気が付いた。
白い鳥、珍しい鳥が生息しているのだろうか?
「眠れたか?」と、正人は大きな欠伸をしながら車から降りて来ると、手に持っていた缶コーヒーを隼人にパスした。
「お早うございます、こんな所で道の駅を建設しているのですね」
「観光客を集めるには、何か目的が必要だしな」
「客寄せパンダ、お店なら目玉品みたいな物ですか」
「そうだな、でも、山の中に立派な桜の木があって、綺麗なのにな・・・」
「もったいない、今、桜の季節でしょ。宣伝すれば観光客が来そうなのに」
「地元の人は、毎年当たり前に見ているから都会の人が喜ぶ風景に、気が付けないのだろう」
正人が言わんとしている事は、隼人にも理解できる。
インスタ映えする風景、珍しい食べ物、可愛い動物など。
SNSやテレビで紹介されると、人が押し寄せてくる時代。
わざわざお金をかけなくても、観光客が興味を持ちそうな材料はあるのに。
車から長老が出て来て、彼の定位置としている正人の肩に飛び乗った。
「おはよう、そろそろ仕事するか?」
ちょこんと肩に乗り顔を毛づくろいする長老は、可愛い猫そのものだ。
「そうですね、長老、間違っても食わないでくださいよ」
「食わないよ、儂はそんなに意地汚くない!」
「では、祠を確認してから探索しましょう」
破壊されたと聞いていたのに、祠は無事だった。
扉に貼られた封印を誰かが破いていた。どうせ金目の物でも無いかと思って、扉の中を覗こうとしたのだろう。正人達は、工事現場周辺、林の中、近くを流れる小川と建物の周辺をブラブラ歩いた。
「こいつらは、妖怪?」
隼人の目の前に怪しい生き物が現れた。飯碗、湯呑、お箸?手と足が生えてピョンピョン跳ねるように動いている。隼人は、手と足が生えた飯碗を捕まえた。
彼につままれ必死に抵抗する得体の知れない生き物、「何だコレ?」
「それは、付喪神だよ」と、正人は妖怪の説明をする。
「付喪神?何ですか、それ」
「長い年月を経た道具に魂が宿った物だな。人をたぶらかすが、害は無いよ」
「こいつらが、探している妖怪ですか?」
「違うけど、一緒に封印してしまうから捕まえといて」
草陰などに隠れようと逃げ惑う付喪神、だが、簡単に捕まえられる。隼人から見ると、一風変わった妖怪だった。
「1匹、見つけたぞ!」、林の中から長老が呼んでいる声が聞こえる。
正人と隼人が林の中に入ると、今までの姿とは違う長老は、何かを足で押さえていた。着物を着た子供の様にも見える、何かを。
長老の足元の妖怪より、隼人は猫又の姿をした長老に驚いた。
で、デカい猫!
目の前の長老は、体長2メートル以上で立派な尻尾が3本ある。
これが猫又、長老の本当の姿か。
隼人の目には、大きくなった毛並みの良い猫に映る。彼は、あの真っ白なお腹の毛の中に顔を埋めて寝て見たいと強く願う。
「小僧、儂を見て良からぬ想像していないか?」、上から睨みつける。
「へへ、していませんよ」、隼人の顔がにやける。
「しているじゃないか!儂の毛に触るなよ」
長老は忘れていたが、隼人にはお宝写真があった。隼人の歓迎会で油を肴に浴びるように酒を飲んだ長老は、酷く酔っぱらってしまった。気持ちよくなった長老は、隼人と茜にしつこく自分の身体を撫でろと二人に迫り、その長老のあられもない姿を隼人はちゃっかりと写真に収めていたのだ。
軽い体操をしていた隼人は、木に留まる見たこともない鳥に気が付いた。
白い鳥、珍しい鳥が生息しているのだろうか?
「眠れたか?」と、正人は大きな欠伸をしながら車から降りて来ると、手に持っていた缶コーヒーを隼人にパスした。
「お早うございます、こんな所で道の駅を建設しているのですね」
「観光客を集めるには、何か目的が必要だしな」
「客寄せパンダ、お店なら目玉品みたいな物ですか」
「そうだな、でも、山の中に立派な桜の木があって、綺麗なのにな・・・」
「もったいない、今、桜の季節でしょ。宣伝すれば観光客が来そうなのに」
「地元の人は、毎年当たり前に見ているから都会の人が喜ぶ風景に、気が付けないのだろう」
正人が言わんとしている事は、隼人にも理解できる。
インスタ映えする風景、珍しい食べ物、可愛い動物など。
SNSやテレビで紹介されると、人が押し寄せてくる時代。
わざわざお金をかけなくても、観光客が興味を持ちそうな材料はあるのに。
車から長老が出て来て、彼の定位置としている正人の肩に飛び乗った。
「おはよう、そろそろ仕事するか?」
ちょこんと肩に乗り顔を毛づくろいする長老は、可愛い猫そのものだ。
「そうですね、長老、間違っても食わないでくださいよ」
「食わないよ、儂はそんなに意地汚くない!」
「では、祠を確認してから探索しましょう」
破壊されたと聞いていたのに、祠は無事だった。
扉に貼られた封印を誰かが破いていた。どうせ金目の物でも無いかと思って、扉の中を覗こうとしたのだろう。正人達は、工事現場周辺、林の中、近くを流れる小川と建物の周辺をブラブラ歩いた。
「こいつらは、妖怪?」
隼人の目の前に怪しい生き物が現れた。飯碗、湯呑、お箸?手と足が生えてピョンピョン跳ねるように動いている。隼人は、手と足が生えた飯碗を捕まえた。
彼につままれ必死に抵抗する得体の知れない生き物、「何だコレ?」
「それは、付喪神だよ」と、正人は妖怪の説明をする。
「付喪神?何ですか、それ」
「長い年月を経た道具に魂が宿った物だな。人をたぶらかすが、害は無いよ」
「こいつらが、探している妖怪ですか?」
「違うけど、一緒に封印してしまうから捕まえといて」
草陰などに隠れようと逃げ惑う付喪神、だが、簡単に捕まえられる。隼人から見ると、一風変わった妖怪だった。
「1匹、見つけたぞ!」、林の中から長老が呼んでいる声が聞こえる。
正人と隼人が林の中に入ると、今までの姿とは違う長老は、何かを足で押さえていた。着物を着た子供の様にも見える、何かを。
長老の足元の妖怪より、隼人は猫又の姿をした長老に驚いた。
で、デカい猫!
目の前の長老は、体長2メートル以上で立派な尻尾が3本ある。
これが猫又、長老の本当の姿か。
隼人の目には、大きくなった毛並みの良い猫に映る。彼は、あの真っ白なお腹の毛の中に顔を埋めて寝て見たいと強く願う。
「小僧、儂を見て良からぬ想像していないか?」、上から睨みつける。
「へへ、していませんよ」、隼人の顔がにやける。
「しているじゃないか!儂の毛に触るなよ」
長老は忘れていたが、隼人にはお宝写真があった。隼人の歓迎会で油を肴に浴びるように酒を飲んだ長老は、酷く酔っぱらってしまった。気持ちよくなった長老は、隼人と茜にしつこく自分の身体を撫でろと二人に迫り、その長老のあられもない姿を隼人はちゃっかりと写真に収めていたのだ。
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