有限会社DIUD 物の怪退治をする会社でアルバイトをする事になりました!

川村直樹

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祠の封印 ①

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「次は西院、西院」
 電車のアナウンスで目が覚めると、スマートフォンの振動に気が付いた。着信履歴には、DIUD事務所と表示されている。このままアパートに戻らず、直接事務所に行くかと、隼人はスマホをワンショルダーに入れた。
 仕事を始めてから暫く何をすれば良いのか分からず、失敗する事も多かったのでかなり続けられるか不安だった。しかし、悪霊退治など比較的簡単な仕事をこなして行く内に、サポートの役割を徐々に理解し仕事に慣れて来た。

 隼人が事務所のドアを開けると、何やら長老と正人が言い争いをしている。
「ちわー、お疲れ様です」
「隼人君、仕事が入ったのだが、長老も行くと言い出して」
「行くのじゃよ、儂も行くの」と、長老が仰向けで駄々をこねている。
「長老が一緒だと、何か問題でもあるのですか?」
「あるんだよ、問題が」、正人は長老を叱りつけるような目で見た。
「何を正人!儂はいつでもキチンと仕事をしているぞ」
「長老は、弱い妖怪だと、直ぐに苛めるでしょう!」
「何でじゃ? 弱い妖怪を苛めても問題なかろうに」
「そこですよ。今回の仕事は、再封印ですよ。長老が妖怪を苛めて追い掛け回すと封印出来なくなるじゃないですか」
「ちゃんと、自重するから連れていけ」
「はいはい、じゃあどうするのですか? 一緒に行かれるのですか?」、茜が呆れ顔で口を挟む。
「仕方がないですね、約束ですよ長老。それと茜、皇宮警察本部に行って今回使う封印札を貰ってきてくれ」
正人は、茜が定時で仕事を終えられるのか、気になる様子で壁の時計に目をやったのに気が付いていた。
「着替えて、単車を使っても良いですよ」
「それなら、OKです」

 隼人は、茜が戻るまでの間に正人から仕事の説明を受ける。
 正人は自分の机に着席すると、目の前のパソコンを操作し始めた。目的の場所までのルートを検索する。
「今回の仕事は、兵庫県と岡山県の県境にある町に行くのだが」
「場所的に山の中ですよね、田舎町ですか?」
「人口の少ない町らしいが、道の駅の建設中に祠を壊したらしい。かつて妖怪を封印した祠で、住民はすっかり忘れてしまった過去の遺産だな」
「長老が、言うように封印が解けても弱い妖怪なら問題は無いのでは?」
「弱くても、人を怖がらせるのが趣味みたいな妖怪だから。町の人達が気味悪がって、排除を希望している」
「町の活性化を望んでいるなら、いっそのこと、その妖怪を活用したら良いのに」
「人の恐れは、そんな簡単なものでは無いよ」
 人は、受け入れるより先に恐れるか・・・と、ソファの背にもたれながら隼人は自分の考えの甘さを知った。しかし、恐れが勝ると、商売人根性を出すことも可能だと言う考えを改めるつもりは無い。
「今晩出発するけど、泊まれる宿が無いから車中泊になるけど問題無いか?」
「僕は、屋根があるならどこでも構いませんよ」
「儂も、問題ないぞ」
 茜の机の上で毛づくろいをしていた長老を見て隼人は、その体のサイズならボックスカーは、俺たちと違って広くて快適だろと、思わず突っ込みたくなった。
「正人さん、何故、皇宮警察本部で御札を貰うのですか?」
「あそこには、陰陽師がいる。彼に再封印のための御札を頼んでいたのだよ」
「陰陽師は、今も実在するのですか・・・」
「意外かな?」
「いえ、餓鬼や妖怪、悪霊など僕も見たので、陰陽師も実在しますよね。僕らが勝手に、過去の存在にしてしまっていたのですね」
「そうだな、餓鬼を退治したと夕方のニュースで流れたら、大変なことになる。俺達や陰陽師の活動を公にされると、こちらが困るからな。暗躍なら、良い意味で人々は知らずにいてくれる」

 皇宮警察から茜が戻ると、正人は封印札を受け取り、二人と1匹の旅が始まった。
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